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5: ご両親の人となりはどうですか?

 ガスコンロや冷蔵庫の中身、食材などをランドブレイクに説明しながら、調理は着々と進んでいった。

「そういや美波、お風呂ためたか? 母ちゃんもうすぐ帰ってくるみたいやけど」

 時刻は19時30分。美波みなみはバスタブに現れた2人の変態により、浴槽の掃除やお湯張りなど到底できなかった。

「しもうた…洗うの忘れとったわ」

「母ちゃん、帰ってきたらすぐ入りたがる思うで」


 美波は、分かった分かったと雑に答えて風呂場に向かった。ちょうどその頃、母親が帰ってきた。

「あれぇ、なんかええ匂いが…ってあの変態やん!」

 喋りながらリビングの扉を開けた母親は、ママさんバレーに行く前に出くわしたランドブレイクを再び目の当たりにした。


「変態? なんや母ちゃん、この人のこと知っとるんか?」

「うん…あの人な? 全裸で出てきたから思わず殴ってもうたんや」

「ええ!? …ぜ、全裸やったん?」


 父親は声のボリュームが自然と大きくなり、小声で「全裸確認」をした。

「そうなんよ…風呂場におったらしいねんけど、私が帰ってきたときにちょうど鉢合わせたんや」


 カインズは話し合う2人を気にしながらも、キッチンの様子を見守っている。

「父ちゃ〜ん、ためる〜? …あれ、母ちゃん帰っとるやん」

 両親がランドブレイクのことを気がかりに思っているとはつゆ知らず、美波は顔を出した。

「できたぞ皆の衆。…母君ははぎみもいるのか」

 かつて自身をワンパンチで倒した母親。ランドブレイクの表情は分かりやすく曇った。

「…とりあえずあの人がご飯作ってくれることになったから。美波、お風呂ためてええで」

 父親はランドブレイクに関しては、記憶をなくしたまま道端をさまよっていた…という風に考えていた。しかしだんだんと事情を把握してきたらしい。


「…まさか美波のやつ…ランドブレイク(あのこ)と付き合っとったりして…」


 撤回しよう。把握はできていないようだ。

「あの子と!? …いや、それはおかしいわ。仮に付き合っとるにしたって、カインズくんはなんで今日うちにおるんよ?」

「確かに。男が2人おって、片方は全裸やろ? …もしかしていわゆる3ピ…」


 子を持つ親にしては不健全な話題がのぼる中、食卓に料理を並べ終えた「時の人」が声をかけてきた。

「私はどこに座ればいいだろうか?」

 両親は驚き、取り繕った。ランドブレイクが言うように、テーブルには椅子が4つしかない。

「あ、ああ…そうやな! 椅子持ってくるから、父ちゃんはそれに座ろうかな!」

父親は愛想笑いをすると2階へ向かった。


「にしてもランドブレイク、さっき…『私はどこに座ろうか』的なこと言うたやん? アタシそういうの嫌いやないで。自分が真っ先に犠牲になる感じ」

 美波はランドブレイクのさり気ない気遣いにサムズアップしている。

「犠牲というのは大袈裟だ。私はただ、家族の団欒を崩さぬよう注意しているだけだ」

美波はさらに感心した。


「気遣いもそうやけど…ホンマに料理得意なんやな! すごいやん!」

 テーブルに並んだのは、肉や野菜を炒めた回鍋肉ホイコーローのようなものとサラダ、そしてコンソメのスープであった。

「この家にあるもので作ったから大した出来栄えではないが…そう言ってもらえて光栄だ」

「ちょっと引っかかる言い方やな…」


 テーブルはキッチンの前にある。キッチン側に母親と美波が、反対側にはランドブレイクとカインズが、真ん中は父親が陣取った。

「いただきます…」

 家族はそう口にし、一口食べてみる。

「んん! おいしい!」

「ランドブレイクさん料理うまいんやなぁ!」

「うまいな…やっぱり料理人やないか?」

 その様子を見て、カインズは3人の安否を気にしている。

「…食べないのか? 私が手間暇をかけて作ったのだぞ?」

 ランドブレイクは頬杖をついて皮肉めいた笑みを見せた。カインズは覚悟を決めて回鍋肉的料理を口に運んだ。


「どうだ?」

「…うまい」

「そうかそうか…」


 それからしばらくして、父親は核心をついた質問を美波に向けた。

「美波、父ちゃんずっと気になっとったんやけどな? …お2人さんとはどうやって知り合ったんや?」

 聞くべくして聞かれたことだ。美波は箸を置いて考えた。


(なんて言うたらええんやろ…正直に言うたってどうせ信じてもらえんし…)


 美波が迷ってふと前を見ると、ランドブレイクが美波の瞳をじっと見つめているのが分かった。やがて彼は、小さく頷いた。カインズはそんな2人には目もくれずに食べ続けている。


「実はな? ランドブレイクとは今日知り合ったばっかりなんや」

 美波が話し始めると、ランドブレイクは椅子に深く座り直した。

「今日知りうたん? いつぅ?」

「学校終わって帰ろう思うたときや」

 美波が少しだけ嘘を織り交ぜると、ランドブレイクは目をパチパチとさせ始めた。


「学校終わってって…ホンマに知り合うたばっかりやな!?」

父親は驚いた。実際のところはほんの2時間ほど前なのだが、もしそれを知ればさらに驚いたことだろう。


「うん…ランドブレイクが路上をフラフラ歩いとるところを見かけた。服も体も汚れとったから、せめてお風呂に入れたげよう思て脱いでもろうたんや」

 美波がそう説明すると、両親は納得したようだったがランドブレイクは首をひねっていた。カインズはようやく我に返り、なにが「あ〜」なのかと両親と2人を観察している。

 父親は安心したような顔から、真剣な面持ちへと変わった。

「けどな美波、今回はランドブレイクさんが良識のある人やからよかったけど、フラフラしとる知らん人を家に連れこむのは不用心やと思うで?」

 それに対し母親は、賛同するように頷いている。

「せやで美波。次からは気ぃつけなあかんで?」


 その場しのぎの嘘をついた美波は、両親から大いに心配されてしまった。

「うん。せやな…もうこんなことはせんよ」

「よし…ランドブレイクさん! ごちそうさまでした!」

 真顔だった父親はいつものように笑顔に戻り、食事を終えた。


「ランドブレイクさんにどんな事情があるんか私には分からんけど…つらいこととか分からんこととかあったら言うてな? ホンマもんの母ちゃんやと思うて頼ってくれてええから!」

「あ、ああ…ありがとう、ございます?」


 魔王のランドブレイクは、なぜか母親に対して敬語を使った。

(我ながら、ええ親やで…)

 美波はしみじみとそう感じながら、食事を再開したのだった。

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