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3: 打ち解けるの早くないですか?

「なにわろてんの?」

(全裸で高笑いして…なんやこいつ)

 ランドブレイクはバスタブの中で固まった。

カインズも口を開けたまま様子を見守る。


「…ひとまず服を貸してもらえないだろうか」

「ええで。父ちゃんのやつでもいい?」


 部屋のタンスに服があることを伝えると、ランドブレイクは足早に入ってふすまを閉めた。

「カインズ、あんためちゃくちゃあの人のこと怖がってたやん? ホンマに怖いんか?」

「魔法が使えるとマジで強いんだ。凶悪な部下を何人も従えてて…」

「…魔王ねぇ。実はそんなに怖くなかったりして…」

「バカめ。怖いに決まって…」


[スーッ]

「下着はどこだ?」

「カゴん中に入ってない? 父ちゃんのやつやけど」

「父親のものなのか…うう…」

[スーッ]


 ふすまから顔を覗かせたランドブレイクは、他人の下着への嫌悪感をむき出しにしたまま部屋に消えた。

「あれでも怖いんか?」

「…ひとまず日付が変わってから考える。その頃には転移できるかもしれんからな」


◆ ◆ ◆


なみ、美波、美〜波、美波、ミ〜ミ〜ミ〜ミ〜美〜波〜」

「美波、その変な歌やめろ」

「…本題に入らないのか?」


 美波たちはリビングに集まった。

L字のソファの壁側にはランドブレイクとカインズが、美波はテレビを陣取っている。

「なぁ美波…なんで俺がこいつの隣なんだよ!」

 カインズは前のめりになって美波に耳打ちをする。

「仕方ないやろ。あたしが『美波の部屋』の司会者なんやから」

 美波はやる気まんまんで小さなクッションを頭に乗せた。

「意味がわからん…」

「冗談はこのくらいにして…とりあえず2人は、今日のところは元の世界に戻れんのやろ?」

 頭のクッションを膝に乗せ、うってかわって真剣な眼差しで質問した美波。


「ああ…とは言っても、明日になったら戻れるって保証もないんだがな…」

「情けない男よのぉ…」

「全裸のまんま絶望したのは誰やっけ?」


 3人の間に沈黙が訪れる。


「とにかく! 2人がここに来るきっかけになったんは、まず間違いなく『ワールドクリスタル』の存在やんな?」

「うむ。この男はあろうことか、私が盗んだコレを盗んだのだ!」

「ほらな! 結局こいつ盗んでんだよ!」

 ランドブレイクはグレーのスウェットから例のブツを取り出す。空色のそれは菱形ひしがたで長さは5センチほどだ。


「王国のもんやって言うとったな。そもそもワールドクリスタルってなんなん?」

「ワールドクリスタルは…」

 カインズはランドブレイクを見やり、この男の前で話していいものかと迷っていた。


「ワールドクリスタルは唯一にして至高の神器だ。これさえあれば、魔力はもちろん攻撃力や防御力など、使用した者の能力を格段に上げることができる」

 カインズの心配をものともせず、ランドブレイクは代わりに答えた。

「…というわけだ。この世に二つとない貴重品だから、悪用されないよう王国が保管しているというだ…」


 カインズのこの言葉に、美波とランドブレイクは引っかかった。


「ウワサ? え…あんたオーサマに雇われて取り返したんやないの?」

「私もそうだとばかりに思っていたのだが…貴様はいったい何者だ?」

 魔王のランドブレイクと、ワンパンママの娘である美波。左右どちらを見ても脅威がいる。

カインズはその正体を白状した。


・ ・ ・


「マジで!? あんた盗賊なん!?」

「…怒りを通り越して呆れたよ。盗賊の分際でワールドクリスタルを語っていたのか?」


 話によると、カインズは王族の護衛兵として生活していたらしいが、遅刻や居眠り等の怠慢により2ヶ月ほど前に首を切られてしまい…


「アホやなぁ…」

「何をやっておるのだ貴様は…もう立派な大人であろう?」

 2人は思わず溜め息をつき、カインズをとがめた。

「俺はまだ23だ! 王城あそこで働き始めて1年そこらでクビになったんだぜ? 見る目がないんだよあいつらには…!」

 2人は、二度目の溜め息をつき、ついにはとがめる言葉すらも出なくなった。


「盗賊つったって貧乏人から盗むような真似はしねぇよ。いけ好かねぇボンボンだけを狙った」

「カインズ…まだ3話目やで? 飛ばしすぎや…」


 カインズの性根が見えてきて、3人の間に気まずい雰囲気が生まれた。美波が気分転換にテレビをつけようとリモコンに手を伸ばしたそのとき…鍵を開ける音が聞こえてきた。


「ただいま〜」

「父ちゃん帰ってきた…2人ともどうす…ちょっと?」


 玄関を気にかけていた美波が視線を移すと、魔王や盗賊の面影を完全に捨てた2人の姿があった。

「アイス買ってきたで…って、あれ? お友達かな?」


 リビングの扉がスライドされ、スーツ姿の父親が入ってきた。彼が目にしたのは若い男が2人…

リモコンを手に持つジーパン赤髪男と、横向きに寝転がる灰色スウェット男。

父親を目にした2人は白々しい反応を見せた。


「うおおお!? お父さん帰ってきたぁ!!」

「なんてことだ! はしたない姿を見せてしまった…」


(なんやこいつら…下手な芝居やなぁ)

「はっはっは! いやいや、全然くつろいでもろうて構いませんよ?」

 父親は朗らかに笑いながら、買ってきたアイスを冷やしに冷蔵庫まで歩いていく。


「カイちゃん! ランちゃん! もうすぐ7時やけどまだ帰らんの?」

(カイちゃん?)

(ランちゃん?)

 一人は恐怖を、もう一人は軽蔑をしていたはずなのが、お互いに顔を見合わせる程度には打ち解けたらしい。


「明日は土曜やし、ちょっとくらいやったら長居しても父ちゃんはかまへんで!」


[カシュッ…]


(ビール飲み始めたわ…マイペースやなぁ…)

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