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女神の雫〜ルタルニア編〜  作者: 山本 美優
その剣を手にする覚悟
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第八十一話 兄と妹9

(お願い!ここから出たいの!ここから出して!)


 その途端とたん、レイリアが埋まっている周りの土がうごめき出した。


(土が動いてる!)


 レイリアを囲む地面のあちこちが、せわしなくデコボコと動く。


 その様子にレイリアが驚いていると、いつの間にか、カイがレイリアのそばへと戻ってきていた。


「レイリア、目を閉じてみろ」


 兄の声に従い、レイリアはそっと目を閉じた。


 すると不思議な事に、真っ暗なはずの視界が、淡く茶色い光に包まれている様に見えた。


 それはまるで、薄茶色に染まった朝靄あさもやの中に居るようだった。


(これが地の魔力…)


 レイリアには淡く光る茶色のもやのようなものが、自然と地の魔力だと分かった。


 そしてその地の魔力は今、力強くも優しくレイリアを守る様に包み込んでいる。


(大地の力が私に味方して守ってくれているみたいで、とっても安心出来る…)


 地の魔力から感じる居心地の良さに、ついうっとりと目をつぶり続けていたレイリアの耳に、カイの声が聞こえてきた。


「レイリア、地の魔力をどんな風に感じる?」


 そっと目を開けたレイリアが、カイを見上げた。


「何かね、守ってもらっているみたいで安心感があるかも」


「へぇー。レイリアはそんな風に地の魔力を感じたのか」


「兄様は違うの?」


「魔力の感じ方は人それぞれ違うって言うけれど、僕も地の魔力に対してはレイリアと似たような感じを持っているかな」


「兄妹だから同じ様に感じたのかしら?」


「そうかもしれないな」


 二人はそう言うと、目を合わせて小さく笑った。


「これでレイリアも地の魔力がどういうものなのかを感じ取れたし、これから地の魔力を使う時には今の感じを思い出せばやり易いはずだ。というわけで、早速やってみろ」


「うん!」


 レイリアは再び目を閉じると、レイリアを包み込み、守る様な力を思い起こしながら、体の中から湧き出る自らの魔力を地の魔力へと変えていった。


「地の魔力を作れたら、どう土を動かせば自分がそこから出られるのかを考えろ」


 レイリアは目を閉じたまま、どうすれば土の中から出られるのかを想像した。


(とりあえず、周りの土をどかさないと出られないわよね。でも土をどかしただけだと、出る時に穴から這い上がらないといけないから大変そうだし…。そうなると、土で階段を作って上れば楽かな?)


「それが出来たら、エーファを唱えてみろ」


 レイリアの中で、ここからの脱出方法は先程定まった。


 後は実行に移すのみだ。


「エーファ!」


 レイリアの口から土を操る地の魔法の呪文がつむがれると、レイリアの周囲を取り囲んでいた土が外側へと押し出されるようにして無くなり、レイリアは円柱型に掘り下げられた穴の中心にいる様な状態となった。


 それと同時に、レイリアの目の前には地上へと続く土の階段も現れた。



 自分が思い描いていた通りに土が動いて、造形ぞうけいす。


 その事にレイリアは驚いた。


「すごーい!見て、兄様!」


 自分が起こした大地の変貌へんぼうを兄にめてもらいたいレイリアは、穴の中からキラキラと光る瞳をカイへと向けた。


 すると、そこには唖然あぜんとするカイがいた。 


「兄様?」


 レイリアの呼び掛けにハッとなったカイが、レイリアへと視線を向けた。


「いや、ちょっと、想定外というか、まさか階段まで作るとは思わなくて。まぁ、元々魔力は高いし、やれば出来るのは分かっていたけれど…」


 呟くように言葉を発するカイを横目に、レイリアは自分が作り出した階段を一歩ずつゆっくりと上った。


「やっと出られたー!」


 レイリアは地面の上へと辿たどり着くと、大地の拘束から逃れられた開放感から両手を上げて喜びを表した。

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