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女神の雫〜ルタルニア編〜  作者: 山本 美優
その剣を手にする覚悟
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第七十三話 兄と妹1

 レイラの部屋から自分にてがわれた部屋へと移動したレイリアは、いそいで二通の手紙をしたためた。


 一通は父へ、もう一通はウィリスへだ。


 内容は二通ともほぼ同じで、レイラの命令によりアトスと魔法勝負をしなければならなくなった事をしるしたのだが、ウィリスへの手紙にはレイラへの文句が大量に付け加えられていた。


 レイリアは早速さっそく父へと手紙を送るため、エイミーと共にデイエルの部屋へ向かうと、小型の転送石とリシュラスのゼピス邸への転送用魔法陣が描かれたハンカチほどの大きさの布を用意させた。


 物を特定の場所へと送る事が出来る転送石は、やはり古代遺跡から見つかる遺物の一つなのだが、小型のものは石板に封印されているわけではなく、遺跡内部のあちこちに転がっている。


 転送の方法は、まずは全く同じ図柄の転送用の魔法陣を二つ用意し、物を送り合いたい二箇所に設置する。


 次にそれぞれの魔法陣の端にある指定設置場所に転送石を置く。


 最後に魔法陣の真ん中に転送したい物を置いて、送る側の魔法陣の転送石へと魔力を流す。


 すると、もう片方の魔法陣の上に物を転送させることが出来る。


 当然転送石が大きければ大きいほど、大きく重い物を送れるのだが、現在人を転送できるほどの大きさで起動可能な転送石は、トランセアと大陸中央部のセンティアナにしか存在していない。


 ちなみにデイエルが用意した転送石では、卵一個分ほどの重さしか転送出来無いため、ほぼ手紙のやり取り用である。


 その転送石を、レイリアはリシュラスのゼピス邸にある魔法陣と対になっている魔法陣が描かれた布の上に設置した。


 そして魔法陣の中央に手紙を置き、転送石へと魔力を送る。


 体の中からすーっと何かが抜ける様な感覚と共に、転送石が淡く白い輝きを放つ。


 やがて転送石の輝きが収まると、今度は手紙が淡く白い光に包まれ、あっという間にその姿を消した。


 転送完了だ。


「よしっ」

と小さく声を上げて転送成功を喜んだレイリアは、デイエルの部屋を退出すると、エイミーにウィリスへの手紙を手渡した。


「それじゃあエイミー、この手紙をウィルのところへ届けてくれる?」


かしこまりました」


 グレナ伯爵邸とこの別邸の間には転送用魔法陣が無いため、ウィリスのもとへは人を介して手紙を届けるしか無い。


 とは言え、別邸からグレナ伯爵邸までは、魔導車であればそれほど時間はかからない距離にある。


 そこでふとある事に気が付いたレイリアは、歩き始めたエイミーを呼び止めた。


「ちょっと待って、エイミー。思ったのだけれど、ウィルの所へならば私が直接行って話した方が早く無い?」


先触さきぶれもなしに伯爵邸へいらっしゃろうだなんて、いくらウィリス様のお屋敷だとしてもマナー違反過ぎます。おやめ下さい」


「分かったわよ…」


 不貞腐ふてくされた様子のレイリアへ、エイミーのお説教が始まった。


「だいたい、もうすぐ日が暮れるんですよ?火急の要件であるならばまだしも、どうせレイラ様への愚痴を言いに行かれるだけですよね?それをこんな時間から招かれてもいないのにうかがおうだなんて、非常識極まります」


「でも、ウィルの家だし…」


「今のウィリス様は領主としてご自分の領地にお戻りになられていらっしゃるのです。いくらリシュラスのお屋敷ではご一緒だからとはいえ、ここではきちんと他家の主としてウィリス様に接して下さい。良いですね!?」


「はい、わかりました!」


 ムスッとしながらも返事をしたレイリアに、エイミーは一つ頷くと、

「それでは私はウィリス様に手紙を届けて参ります」

と言ってレイリアのもとを離れていった。


 部屋へと戻り一人になったレリイアは、今後について考えた。


 とりあえずアトスとの魔法勝負に勝つためにはどうするべきか?


 今のレイリアが使える魔法は風を操る『ファーナ』と、一筋ひとすじ疾風しっぷうやいばを放つ攻撃魔法の『ファーネス』、そして水属性の単体回復魔法の『ウィア』だけだ。


 これだけで訓練を積んだ魔術士に勝てるとは到底とうてい思えない。


 実際、先日の戦闘でレイリアは敵の魔術士に勝てなかったのだから…。


 付け加えるならば、アトスにあそこまでの強さが無いとしても、アトスがもし魔法防御壁を扱えるのならば、レイリアの魔法は防がれるなり威力をけずられる可能性がある。


(やっぱり使える魔法の数が少ないのと、フォルグ・クレスティナを使えないのが痛いわね…)


 魔法防御壁を作り出すフォルグ・クレスティナの魔法は、光属性の中級魔法だ。


 その効果範囲は一人のみで、対象となった人物の周囲に魔法を打ち消す光の壁を作る。


 光の壁の性能は魔術士の魔力に依存するため、魔力が高い魔術士ほど魔法防御壁は厚みを増し、魔法防御力は高くなる。


 この理論からいけば、魔力自体は高いレイリアがフォルグ・クレスティナを使えれば、かなり効力のある魔法防御壁を作り出せるはずだ。


 だがそもそも光属性の魔法は、火、水、土、風の四属性の魔力が合わさる事で発現する事から、四属性を思い通りに使いこなせる程の高い魔法制御能力を必要とする。


 魔法制御能力にかなりとぼしいレイリアでは、フォルグ・クレスティナどころか、光の下級魔法で有名な暗闇を明るくする『ルエーナ』でさえ上手うまく扱えない。


 では、どう練習すれば光属性の魔法が使えるようになるのか?


(ずは苦手な地属性の魔力をなんとかしないといけないわよね…)


 そんな事をぐるぐる考えていると、扉からノック音が聞こえてきた。

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