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女神の雫〜ルタルニア編〜  作者: 山本 美優
その剣を手にする覚悟
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第六十五話 救国の英雄と殲滅の魔女4

 自室にいたウィリスの耳に、扉の向こうから興奮した様子のレイリアと、レイリアの侍女のエイミーの声が聞こえてきた。


 レイリアの声が聞こえてくる事は時折あるが、エイミーの声までとなると珍しい。


 乱暴に部屋の扉を閉める音がした後、再び廊下には静けさが戻った。


 これはアトスとの面会で何かあったな、と感じたウィリスは、グレナ領にいる知り合いへの手紙の執筆を一旦止めると、自室を出てレイリアの部屋へ向かった。


 ウィリスが自室の斜め前にあるレイリアの部屋へと近づくと、中からはレイリアとエイミーの声以外にも、物をひっくり返すような騒々しい音が漏れてくる。


 レイリアの様子が気になるどころか心配になったウィリスは、扉を叩いて入室を求める声を掛けたものの、どうやら二人には聞こえていないらしく、部屋の中からは反応が返ってこない。


 仕方が無いので今度は扉を強く叩いて大声で呼びかけると、やっと扉が開いた。


 だがその瞬間、目の前に広がる光景にウィリスは唖然あぜんとした。


「何やってるんだよ!まさか今度は家出でもするつもりか!?」


 大きな旅行鞄を二つも持ち出して、服を中心に何やらせっせと荷物を詰め込んでいるレイリアとエイミーに、ウィリスは思わず叫んでいた。


「失礼ね!そんな事しないわよ!」


「じゃあ、何やってるんだよ?」


「お祖母ばあ様のところへ行くのよ!」


「お祖母様って、まさかレイラ様のところ?」


「そうよ!」


「何で?」


「アトスがお祖母様を味方に付けたのよ!?」


「アトスがレイラ様を味方に?」


「そうよ!」


 アトスはレイリアを今回の事件に巻き込んだ元凶だ。


 そんなアトスに何故あのレイラが味方になるのか、ウィリスにはさっぱり解らない。


「ごめん、ちょっと意味が解らない…」


 片手で額を押さえるウィリスに、レイリアがイライラしながら答えた。


「だから!アトスが私を怪我させた責任を取って私と結婚したいってお祖母様に言ったら、お祖母様が賛成したらしいのよ!」


 思いもよらないレイリアの台詞せりふに、ウィリスはここ数年発したことのない頓狂とんきょうな声を上げた。


「はぁぁぁぁっ!?」


「ウィルだって知ってるでしょ?うちは今でもお祖母様の力が強いって。だから、お父様がいくら私とアトスの結婚に反対して下さっても、お祖母様が出てきたらお父様も私をかばい切れないかもしれないわ!そうなる前にお祖母様のところへ行って話し合ってくるのよ!」


 もう、何が何だか分からないウィリスが呆然ぼうぜんと見守る中、レイリアはどんどん旅立つ準備を進めて行く。


「エイミー!」


「はい!」


「明日の朝一番のラバルーズ行きの列車の切符を取ってきて!」


「はい!」


 レイリアの荷物の詰め込んでいたエイミーが立ち上がるのを見て、ウィリスがハッとなった。


「エイミー、ちょっと待った!」


「何でしょう、ウィリス様?」


「レイラ様は今、グレイベラにいらっしゃるんだ」


「お祖母様、また温泉入りに行ってるの?」


 呆れた様子でウィリスへと顔を向けたレイリアへ、ウィリスがかぶりを振った。


「いいや。グレナ湖の湖底神殿の調査に来る教団関係者がレイラ様の知り合いらしくて、その方に会うためにレイラ様は今グレイベラの別邸にいらっしゃっているんだ。僕もその調査に合わせて明後日にはグレナへ戻ろうと思っていたんだけどね」


「そう…。明後日なら一緒には行けないわね」


 少し残念そうなレイリアの声音こわねに、思わずウィリスはこう言っていた。


「いや、別に一日くらい早く戻っても問題無いから、ついでに僕も明日一緒に行くよ」


「え?いいの?」


「僕の場合は自分の家に帰るだけだしね」


「それもそうね」


 そう言って小さく笑うレイリアを見たウィリスは、気の重かったグレナ行きが少しだけ楽しみになっていた。

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