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女神の雫〜ルタルニア編〜  作者: 山本 美優
その剣を手にする覚悟
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第百二十八話 少女の異端な魔法戦7

 練習場内に拍手が鳴り響く中、いよいよ王族の三人が登場した。

 

 護衛ごえい近衛このえ兵のすぐ後ろにいるエルディオは、まっすぐに前を向いて堂々と、エルディオの左隣りにいるルルーリアは、時折り周囲に微笑みながらたおやかに、二人の後ろにいるミリアンナは、人目が気になるのかうつむき加減で人々の前を通り過ぎていった。


 王族の三人は、練習場脇に設けられた少し高い位置の観覧席へ案内されると、用意された椅子に着席した。


 それから観覧客にも席に座るよう指示が出され、観覧客が着席した。


「ファルムス侯爵家アトス=ファルムエイド、ゼピス侯爵家レイリア=ゼピス、両者前へ!」


 拡声の魔道具の声に従い、レイリアは練習場内へと向かうべく着ていた上着を脱いだ。


「それでは兄様、行って参ります!」


 上着をカイに預けながら出陣の挨拶あいさつをするレイリアへ、カイが真剣な面持おももちではげましの言葉を掛けてきた。


「あぁ。頑張ってこい」


 すると、カイに続いて、ここまで先導せんどうしてきてくれたエレック達も、レイリアへと激励げきれいの言葉を投げ掛けてきた。


「ゼピス嬢、ご武運を!」


「「ご武運を!」」


「ありがとうございます、皆さん!」


 笑顔で礼を述べたレイリアが、練習場へと振り返り、一歩を踏み出した時だった。


「レイリア!!」


 左横から聞こえてきたかすかな少年の声にレイリアが思わず振り向くと、そこには座席から立ち上がってこちらを見ているウィリスがいた。


「頑張れ!!」


 周囲のざわめきにその声はほとんどかき消されていたが、それでもレイリアにはウィリスが何を言っているのかが分かった。


 レイリアはウィリスへ向かって大きくうなずくと、前を向いて歩き始めた。


 第四練習場内には、レイリアに近い位置とアトスに近い位置に、白いローブを羽織った王国魔道士が一人ずつ配置されていた。


「ゼピス嬢、こちらへ」


 声を掛けてきた二十代後半の女性魔導士のもとへレイリアが行くと、女性魔導士は腕輪を一つ見せてきた。


「こちらは魔法防御フォルグ・クレスティナの呪文がほどこされている腕輪になります。こちらを腕にはめて頂いてからこの白い石に魔力を込めますと、お体に魔法防御フォルグ・クレスティナが掛かります。ですが、攻撃魔法を受け続けて魔法防御フォルグ・クレスティナが破られますと、腕輪自体が壊れます。今回の決闘では、この腕輪が壊れるか、武力での攻撃を行うか、又は、審判を務める私と今ファルムエイドのご子息のそばにいる魔導士が揃って戦闘不能と判断した場合に負けとなります。以上が今回の決闘における説明となりますが、何かご不明な点はございますか?」


 女性魔導士からそう尋ねられたレイリアは、自らの勝利条件の確認のため真っ先にこう尋ねた。


「戦闘不能には、魔法を使えない状態になった場合も含まれるのですよね?」


「はい、そうです。今回は魔法による決闘ですので、魔力切れなどで魔法を使えなくなった場合も負けとなります」


 女性魔導士の答えに、レイリアは内心ほっとした。


「分かりました」


「他にも何かご質問はございませんか?」


「いいえ、ありません。大丈夫です」


「では、腕輪をはめさせて頂きますね」

 

 女性魔導士は腕輪をレイリアの左腕にはめると、白い石に光の魔力を流し込んだ。


 白い石は光の魔力が込められると金色に淡く輝き始め、そして、その淡い光はレイリアの左腕から体全体を包む様におおっていった。


「今お体に掛けられている魔法防御フォルグ・クレスティナは腕輪によるものですので、決闘開始後、ご自身で重ねて魔法防御フォルグ・クレスティナを掛けて頂く事も可能です」


「分かりました」


「それでは準備が整い次第、開始とさせて頂きます。そちらの白線で描かれた円内からの開始となりますので、そちらでお待ち下さい。では、どうぞご武運を」


 女性魔導士は説明を終えると、社交辞令を言い残して去っていき、レイリアは指定された円内へと移動した。


 正面を見れば、レイリアより先に説明を聞き終えたらしいアトスが、こちらをじっと見据えていた。


 そして、目が合った瞬間、レイリアにはアトスがニヤリと笑んだのが分かった。


 レイリアの魔法の実力を知るアトスからすれば、この決闘は負けるはずの無い戦いだからだろう。


 だが、この約二週間でレイリアは大抵の魔術士に勝てる必殺技を身に付けたのだ!


(余裕ぶっていられるのも、今のうちなんだから!)


 レイリアは嫌な笑みを向け続けるアトスを、キッとにらみ付けた。

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