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女神の雫〜ルタルニア編〜  作者: 山本 美優
少年、少女 それぞれの理由
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第十一話 少年と少女11

 目の前で繰り広げられる剣と剣のせめぎ合いをウィリスが難しい顔で眺めていると、

「へぇー」

という、聴き慣れた若い男の声がした。


「今日はまた、随分 剣筋けんすじに張りがあるなぁ。何かあったのか?」


 ウィリスが声の方へ振り向くと、そこにはレイリアと同じ、澄んだ青空を切り取った様な見事な水色の髪と瞳を持った、優しげな面立ちの若者がいた。


 レイリアの兄であるカイである。


 カイはゆっくりとこちらへ向かって歩いてくると、ウィリスの隣に立ち並んだ。


「代表に選ばれて喜んでいるだけなら良かったんだけど、浮かれ過ぎててこのままだと怪我しそうだっから、ちょっと喝を入れたんだ」


「ふーん」


 ウィリスより頭一つ分以上背の高い青年は、面白くなさそうに返事を一つすると、視線をレイリア達へとやった。


「なぁ、ウィリス」


 向ける視線はそのままに、カイがウィリスへと話掛けてきた。


「何?」


 身長差がかなりあるため、ウィリスは仰ぎ見る形でカイを見る。


「あいつ、いつまでこんな事を続ける気だと思う?」


 ウィリスと似たような理由から妹を剣士にさせたくないカイが問うと、ウィリスは困った様子でカイへと告げた。


「ファウス様が、レイリアにはもう暫く好きにさせるって言ってた」


 その答えに、カイは、

「はぁーっ」

とため息を一つ吐いた。


「お祖母様の方はそろそろ限界だっていうのに、父上は何を考えているんだろうなぁ…」


 突然出て来たレイリア達の祖母、レイラの話に、ウィリスがピクリと反応した。


「レイラ様がどうかしたの?」


 心配そう聞くウィリスへ、カイが困った様な顔を向けた。


「お祖母様はこのままレイリアが剣士になるって言うならば、魔力を封じる気らしい」


「魔力を封じるって…。それってつまり、魔法を使えなくするって事?」


「そういう事」


「何のために?」


「魔力制御が出来ないレイリアを、このまま野放しには出来ないからだよ」


 魔力を持たないウィリスには、今のカイの説明では納得が出来ない。


「ごめん、カイ。僕は魔力が無いから、どうして魔力の制御が出来ないと魔力を封じられるのか良く分からないんだけど?」


 瞳の中に疑問符を浮かべるウィリスへ、カイは苦笑いを浮かべた。


「あぁ、悪い。これだけじゃ普通は分からないよな。魔力持ちってさ、実は気付かない内に魔力を体の外に垂れ流してるんだ。

魔力が少ない奴の場合は外に出て行く量も少ないから問題無いんだけどさ、うちの家系みたいに魔力が多過ぎる魔術士だと、外に漏れ出る魔力の量も多くなる。

そうなると、漏れ出た魔力が周囲に影響を与える場合があるんだ。

例えば、貴秘石を使った魔道具が誤作動を起こしたり壊れたり、最悪、無意識の内に魔法を発動させて、人に危害を及ぼす事もある。

だから僕らは幼い頃から魔力を制御する訓練を受けて、魔力が体の外に漏れ出ないようにするんだ。でもレイリアは、魔力の制御を学んでいた途中でその訓練を辞めてしまったから、魔力の制御が出来ないんだよ。

このままだとレイリアから漏れ出る魔力のせいで、あちこち被害が出かねない。というか、既に小さな被害は出始めているから、お祖母様は被害が大きくならない内に、レイリアの魔力を封じようとしている訳さ」


 カイの話を聞いたウィリスの脳裏に、最近起こった一つの出来事が思い出された。


 それは、虫嫌いのレイリアの目の前に小さな羽虫が現れた事でレイリアが驚いてしまい、その瞬間、レイリアの周囲にフワリと風が舞起こったのだ。


 その時は近くにいたレイリア付きの侍女のエイミーが素早くレイリアをなだめたため、それ以上の事は起きなかった。


 だが、同じ様な事がこれからも起こるどころか、それ以上の事が起こると予想されるのならば、危険を避けるためにとレイリアの魔力が封じられてしまうのは仕方が無い事なのかもしれない。


 理屈としては理解出来たのだが、それでもウィリスはレイリアから魔法を奪いたいとは思えない。


 そんな事を考えながらレイリアをじっと眺めていると、カイがポツリと尋ねてきた。


「なぁ。あいつは、それでも騎士になれると思うか?」


 その質問の答えは決まっている。


「だから無理だって前も言ったじゃないか。レイリアは剣を持つには優し過ぎるって。今は練習だから良いけれど、実戦でその優しさは命取りになる。騎士どころか、剣士自体に向かないよ」


「だよな…」


 短い返事をしたカイが、再び妹であるレイリアへと顔を向けた。

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