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女神の雫〜ルタルニア編〜  作者: 山本 美優
その剣を手にする覚悟
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第百二十六話 少女の異端な魔法戦5

 決闘開始の予定時間が近づいた頃、レイリアの控室には、王城警護隊の紺色の制服に身を包んだ三名の兵士が入ってきた。


 三名は控室へ入ると、カイとレイリアの前で王国軍式の立礼を執ってきた。


「ゼピス侯爵家御令息様、並びに御令嬢様にご挨拶申し上げます。我らは王城西棟を中心に警護を担当しております、第三警護隊であります。本日は、我ら三名がお二人の案内役を務めさせて頂きます」


 代表者の挨拶の口上が終わると、立礼が解かれた。


「レイリア、紹介するよ。こちらは第三警護隊の副隊長を務められている、アンギス卿だ」


 カイの紹介を受けて、口上を述べた三十代前半と思われる男性が一歩前に進み出た。


「ゼピス嬢におかれましては、お初にお目に掛かります。わたしは第三警護隊副隊長、エレック=アンギスと申します」


 今度は貴族男性の礼で自己紹介をしてきたエレックに、レイリアはぱっと顔を輝かせた。


「アンギスきょうの事は存じております!ヨセト伯爵の弟君おとうとぎみでいらっしゃる王国騎士様ですよね!」


 レイリアの発言に、エレックは僅かに驚きの表情を浮かべた。


「私の様な者の事まで、良くご存知ですね」


「王国騎士様のお名前は、全て覚えておりますから!」


「なるほど。確か、王国騎士を目指されていらっしゃるのですよね?」


「はい!あ、でも今日だけは事情があって魔術士でして…」


 困ったような顔をするレイリアに、エレックが微笑んだ。


「我々もご事情に関しましては多少存じ上げております。ですので、私個人と致しましては、御令嬢の御健闘をお祈り申し上げます」


 この現役王国騎士からの応援に、レイリアは一気にやる気が出てきた。


「ありがとうございます、アンギス卿!」


「では、お二人のご準備が整い次第、会場となります第四魔術士訓練場へのご案内役となりますので、ご準備が整いましたらお声をお掛け下さい」


 カイとレイリアは、既にまとめておいた荷物を手にすると、エレックへと声を掛けた。


「それでは、ご案内致します」


 エレックの声を合図に、二人は前後を警護隊の兵士に挟まれると、控室を後にした。


 リシェラニエ王城内は、政務関係の部署が集められている東棟、軍務関係の部署が構えられている西棟、謁見の間を始めとした各種行事のための部屋や客室等が備えられている中央棟、そして、王族の住まいである北棟に分かれていた。


 レイリアの控室となっていたのは中央棟の一室だったので、そこから西棟を抜けた屋外にある王国軍の訓練場へ向かわなければならなかった。


 王城内の廊下を西棟へ向けてレイリア達が進むと、これから何が行われるのかを知る人々が好奇の目を向けてきた。


 だがレイリアは、幼い頃からゼピスと言うだけで注目を浴び続けてきたのだ。


 気疲れはするものの、今更これくらいで萎縮いしゅくするはずもなく、レイリアは堂々と前を向いて歩いた。


 中央棟を抜けて西棟へ入ると、廊下には装飾品がほぼ飾られておらず、殺風景な棟内は、いかにも軍務関係の部署が集う区画らしかった。


 当然廊下を行き交う人々も王城警護隊の制服姿の者が多くなり、侍女や下働きの者でさえもあまり見かけなかった。


 西棟を横切り、王国軍の訓練場へと出ると、右手に剣士訓練場、左手に魔導銃射撃場、そして正面には三階建ての建物があるが、肝心の魔術士訓練場が見当たらない。


(魔術士訓練場は一体どこなの?)


 そんな思いでレイリアがエレックの後ろを歩いていると、妹の気持ちを察したらしい兄が、

「魔術士訓練場はあの建物の奥にあるんだ」

と、教えてくれた。


「魔術士訓練場は、城から結構離れた所にあるのね」


「城の近くで上級攻撃魔法なんて使ったら迷惑だろ?」


「それもそうね」


 レイリアがそう納得したところで、カイが魔術士訓練場の説明をし始めた。


「魔術士訓練場は、第一から第四まであるんだ。第一と第二は、大規模魔法の練習や、集団魔法戦闘訓練で使うからかなり広いけれど、第三と第四は、少数での魔法戦を想定した訓練場だから、第一と第二に比べて小さめなんだ。特にこれから行く第四は、一対一での魔法戦や、補助魔法の練習によく使われる所だから、一番小さい訓練場なんだ」


 この話を聞いたレイリアは、やっと先程のルルーリアの言葉の意味が理解出来た。


 ルルーリアは先程、祖母の指示通り魔術士訓練場の中で一番小さい所を決闘場に指定した、と言っていた。


 レイリアがアトスとの戦いで使う魔法は、アトスに触れる程の距離まで近づかなければ発動出来ない魔法だ。


 もし、かなり広いと説明された第一や第二訓練場が決闘の場として指定されていたら、レイリアはアトスに近づくのが難しくなり、勝てる見込みが小さくなるだろう。


 だからこそ、祖母はルルーリアに命じてまで、レイリアに有利な戦いの場所を用意させたのだ。

 

 その事にやっと気が付いたレイリアは、

(ルル姉様にもここまでしてもらったからには、絶対に勝たないと!)

と、決意を新たにした。


 そうしてやっと魔術士訓練場の近くまでやってくると、人のざわめきが聞こえてきた。


 しかも、第四訓練場に近付けば近づくほど、その音は大きくなっていく。


 アトスとレイリアの魔法による決闘を見たいと希望する者は多く、そのため第四訓練場の周囲には観覧席まで作られたという話は聞いていた。


 だが、レイリアにはどれだけの人が観戦を希望しているのかまでは、知らされていなかった。

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