第百十七話 グレナの少年領主2
ノーマンとトイットは、互いに抱いていた事件に対する疑惑を共有すると、まず始めに前領主に関する情報が外部にどの程度漏れていたのかについて調べた。
グエンがルセド病を患い屋敷に篭りがちになっていた事は、グレナの領民であれば誰もが知っていたが、その詳しい症状については医師にも使用人にも箝口令が敷かれており、グエンの状態が屋敷外に漏れる事は無いはずだった。
しかし、二人が抱く事件に対する疑惑の一つとして、グエンの病状が外部に漏れていた可能性を排除出来なかった。
そのため二人はグレイベラを中心に人を放ち、事件前にグエンの病状を知る者が街中にどれ程居たのかを調べさせた。
すると、数はそれ程多くは無かったが、グエンが事件前には既に車椅子生活となっていた事を知る者達がいた。
それは使用人の家族や親しい友人、若しくは、それらの人々から口伝てで話を聞いた者達が殆どだった。
しかし、どうしても情報源が特定出来ない者達もいた。
緘口令を敷いていたにもかかわらず、使用人の一部が前領主についての情報を漏らしていた事も、漏れ出た情報を知る者達の中に使用人の関係者では無い者達が含まれていた事も、トイットとノーマンにとっては頭の痛い問題となった。
二人は情報を漏らしていた使用人達を尋問にかけ、前領主についての情報をどの程度漏らしていたのかを調べ上げると共に、前領主についての情報をどの様にして得たのか不明な者達についても調べを進めた。
情報を漏らしていた事が確定的な使用人達は、その後国軍へと引き渡され、法による処罰を受けた。
漏らした情報の内容や範囲により、罪の軽い者は領地外へ永久追放、重い者は四肢のいずれか一つを切除の上、領地外へ永久追放となった。
残された使用人達についても監視が行なわれた。
その最中、一人の使用人とその家族が姿を消した。
その使用人は、それこそグエンとウォーレンが幼い時よりハーウェイ家に仕えていた使用人だった。
数ヶ月の後、その使用人一家は王都のリシュラスにて死亡が確認された。
死亡原因は火事による焼死とされたが、ノーマンとトイットは、この使用人こそがグエンを殺した犯人、若しくはグエンを殺すよう指示した真の犯人にグエンの情報を流していた人物であり、結局は口封じの為に殺されたのだろうと推察した。
その頃ノーマンとトイットのもとに、グエンの情報をどこから手に入れたのか分からない者達についての追跡調査の結果がもたらされた。
ゼピス家の助力を仰いでまで行なわれたこの調査の結果に、ノーマンとトイットはある程度の納得と悔しさを滲ませた。
調査結果には、何者かがグレナ湖畔に住む家族の殺害を『日時まで指定して』裏社会に依頼していた事、その依頼を受けたのがグエン達を殺害した一味であった事、そして、依頼を受けた彼らが、事件前に自分達が受けた依頼が実はグレナ伯爵一家の殺害であると周囲の者達に語っていた事が記されていた。
六侯家であるゼピス家の力を以ってしても、グエン殺害の依頼者が誰なのかを特定出来ないのならば、伯爵家のハーウェイ家では到底真犯人を突き止めるのは難しいだろう。
ローシャルム子爵家が一番怪しい事は誰の目にも明らかだが、この事件に関与した絶対的な証拠が無い。
証拠が無い以上、ローシャルム子爵家にも、ウォーレンにも、グエンが殺害された事件についての責任は問えない。
こうしてノーマンとトイットが出来る事は、生き残ったウィリスを守る事のみとなった。
ウィリスがリシュラスにいる間はゼピス家がウィリスを守っているが、年に数回領主の勤めを果たすためにウィリスがグレナへと戻る時には、ノーマンとトイットが中心となってウィリスを守らなければならない。
二人はその使命を果たすため、雇用中の使用人達を徹底的に調べ上げた。
交友関係、家族関係、家族の交友関係、使用人本人が抱えている問題、家族が抱えている問題等、調べられる範囲のものは全て調べさせた。
この調査にはかなりの金と時間が掛かったが、領主たるウィリスを守るためには必要不可欠だと割り切り、使用人全員について調べ上げた。
その結果、グエンに関する情報漏洩の件で数を減らした使用人が、この調査により更にその数を減らし、グレナ伯爵邸の使用人は、少数精鋭となった。




