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女神の雫〜ルタルニア編〜  作者: 山本 美優
その剣を手にする覚悟
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第百六話  魔法だから出来ること9

「止まって下さーい!これ以上は危険です」


 その声に合わせて列が止まると、列の前方から村人と村長がやってきた。


「領主様。ここらより先が燃えてるんで、ここらあたりから魔術士様に山の火消しをお願い出来ないでしょうか?」


 腰を低くして願い出る村長に、ウィリスが頷いた。


「分かった。ただこちらのゼピス家の御令嬢は、レイラ様や御子息程の力は無い。あまり期待はしないで欲しい」


 ウィリスの紹介の仕方が気に入らなかったレイリアは、心の中で毒を吐いた。


(悪かったわね!ゼピスの出来損ないで!)


 だが顔にはそんな思いを一切出さず、レイリアは村長である壮年の男性と年若い村人の男性へ、にこりと微笑んだ。


「祖母や兄ほどお役に立てるかは分かりませんが、精一杯力を尽くさせて頂きますね」


「ありがとうございます。よろしくお願い致します」


 村長から感謝の言葉を述べられたレイリアは、村長と村人に向けて一つ頷くと、緊張した面持おももちで人々の前へと進み出た。


 目の前には炎に包まれる樹々や下草が広がっており、灰色と黒の煙が入り混じりながら空へと昇る。


 バチバチと物が燃える音が至る所で起こり、小さなすすがふわふわとあちこちに舞い上がる。


 更には時折り吹く強い風が、炎を狂い踊らせてその勢力範囲を一気に広げていく。


 だいだい色を中心に黄色や朱色が溶け合うこの世界は、あまりにもまぶしすぎて、レイリアは目を細めたくなった。


 だがそんな状況にひるむわけにはいかない。


 レイリアは熱風に近い風を浴びる位置で歩みを止めると、両手を突き出して青色の魔力玉を作り出した。


 村から山へ向かう道すがら、レイリアはノーマンから魔法による火の消し方を習っていた。


 氷で火を消すならば、雪のように辺り一面氷を降らせたり、周囲を氷漬けにでもするのかと思っていたレイリアに、ノーマンは苦笑しながら

「それではすぐに魔力が尽きてしまいます」

と言ってきた。


 ノーマンから教わった正しい火の消し方は、燃えているものの表面を氷で覆うという方法だった。


 木が燃えているのであれば木の表面を、地面の枯れ草や落ち葉が燃えているのであればその上を、氷で膜を張るように覆っていくらしい。


「果物のチョコレート包みみたいな感じかしら?」


 レイリアがそう例えた途端、並んで歩みを進める馬上から誰かの吹き出した音がした。


「何よ、一体?」


「いや、まさかこの状況でお菓子を例え話に出してくるとは思わなくて…。くくくっ…」


 声を忍ばせ肩を震わせながら笑い続けるウィリスに、レイリアはもちろん苛ついたのだが、ノーマンから

「その認識で良いかと思います」

と褒められたため、その時のレイリアはウィリスを軽く睨みつける程度で許していた。


(ウィルが笑おうが、この場合は果物のチョコレート包みが一番分かりやすいのよ!)


 果物を燃える木に、それを覆うチョコレートを氷に置き換え、頭の中で樹木の氷包みを作り上げたレイリアが呪文を唱える。


「イクロス!」


 両の掌から放たれた青い魔力玉が炎で燃え盛る木に命中すると、木が一瞬にして超巨大氷に閉じ込められた。


「あれ?」


 想像していたのは木の周りを氷が膜を張るよう包み込む光景だったが、実際出来上がったのは、超巨大氷の中の木という光景だ。


 予想と現実の違いに思わずレイリアが疑問の声を漏らすと、横からウィリスがクスクスと笑いながら茶々を入れてきた。


「レイリアが望む果物のチョコレート包みは、随分チョコの量が多いんだね」


「悪かったわね!どうせ私は食いしん坊よ!」


 ムッとなって言い返したレイリアは、すぐに魔法が失敗した原因を考えた。


 氷で木を包み込むという『想像』は成功したと思う。


 ならば、魔法を作り出す『創造』の部分で失敗したという事だろう。


 そこまで考えたレイリアは、今しがたウィリスが言った言葉をふと思い出した。


『チョコの量が多かった』


 沢山のチョコレートを例えば苺に纏わせれば、それはきっと苺のチョコレート包みではなく、チョコの塊の中に苺が入っている状態になるだろう。


 まるで今目の前にある超巨大氷の中の木の様に…。


(だったらチョコレートの量を減らして苺に纏わせれば良いのよね?それってつまり、使った魔力の量が多すぎたって事かも?)


 そう仮説を立てたレイリアは、魔力の量を減らした青い魔力玉を掌に作り出し、再び呪文を唱えた。


「イクロス!」


 右手から放たれた青い魔力の玉が、燃える木を目指す。


 そして青い魔力玉が木に触れると、出来上がったのは先程よりは小さくなった、木を閉じ込めた巨大氷の塊だった。


(これでもまだ魔力が多いのかぁ…)


 更に半減以下の魔力で呪文を唱えても、結果として出来上がったのは木を内包する大きな氷の塊だ。


(う〜ん…。どこまで魔力を減らせば丁度良くなるんだろう?)


 内心途方に暮れながら四度目となるイクロスを唱えようと青い魔力玉を作っていると、ノーマンから

「レイリア様」

と、声を掛けられた。


 魔力を散らして振り向いたレイリアに、ノーマンが

「恐れながら…」

と話し出した。


「ゼピス家の皆様は魔力量が一般の魔術士よりかなり多うございます。一本一本の木を氷に閉じ込めるのではなく、広い範囲に少ない量の魔力で魔法を掛けるのはいかがでしょう?」

 

 ノーマンはレイリアが魔力量を調整しながら魔法を唱えていた事に気が付いたのだろう。


レイリアは

「そうね。そうしてみるわ」

と答えると、ノーマンの助言に従い、見える範囲全体に向けて魔法を放ってみることにした。

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