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女神の雫〜ルタルニア編〜  作者: 山本 美優
その剣を手にする覚悟
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第九十八話 魔法だから出来ること1

 二日間に渡るグレナ湖の湖底神殿調査が無事終了した次の日の夜、関係者を交えての慰労いろうパーティがグレナ伯爵邸で開かれていた。


 招待客は神殿の調査にあたったエルマーを始めとするフロディア教団関係者だけでは無く、グレナ領に携わる主要な人々や、現在グレイベラに滞在している貴族、つまりゼピス家の面々であった。


 夜のパーティーではあったが、主催者がウィリスである事や、かしこまらない立食パーティーであった事から、レイラとカイに連れられレイリアも参加した。


 パーティーの前半は令嬢らしい立ち居振る舞いで他の招待客からの挨拶を受けていたレイリアだったが、やはり後半になると気力の面で疲れてしまい、今はウィリスと共に部屋の隅に用意された椅子に座っていた。


「もう、いやになっちゃう!私、神殿が湖に浮かび上がる所も沈む所も、お祖母様のせいで見せてもらえなかったんだから!」


 グレナ湖の湖底にある古代神殿は、湖面へと浮上してから約二日経つと、再び湖底へと沈んでしまう。そして古代神殿を一度湖面へ浮上さてしまうと、そこから約一年は浮上装置が作動しない。


 調査初日にあった神殿を湖面へ浮上させるという一大行事(イべント)どころか、今日の午前中にあったはずの神殿の湖底への沈下さえ見られなかったレイリアが、当然領主として神殿が浮上する場にいたウィリスへ盛大に愚痴った。


「兄様が神殿の調査でいない代わりに、ずーっとお祖母様が付きっきりで魔法の特訓よ!今日だって午前中は特訓させられていたし…。だいたい昨日一昨日の二日間、魔力の使い過ぎで気を失って一日が終りだなんて、ほんっと、あり得ないと思わない!?」


「それは大変だったね」


 苦笑いを浮かべながら労いの言葉を掛けてきたウィリスに、レイリアがその大きな水色の目をスッと細めてウィリスを軽く睨みつけて来た。


「ウィル、本当は私のこと全然大変そうなんて思っていないでしょ?」


「いや、少しは思ってるよ?」 


「少しぃ?」


 ムッした表情のレイリアに、ウィリスが困惑顔で答えた。


「だって僕、魔法の練習なんてした事無いからどんな風に大変なのか分からないし」


「まぁ、そうだけれど…」


「でもレイリアが大変だって言ってる以上、大変だったんだろうなぁとしか言いようがないしさ」


「それなら聞くけれど、剣の稽古で気絶したりってする?」


 ウィリスは過去、剣の稽古中に何度も当たりどころが悪くて気絶した事もあれば、稽古が厳しすぎて気を失った事もあった。


 たが、ウィリスは自分がこなしてきたトランセア式の剣術鍛錬法が、ルタルニアでは一般的ではない事も知っていた。


「しないと思うよ」


 心の中で、『ルタルニアでは』、という言葉を付け足しながらウィリスが言うと、レイリアは更に身を乗り出してきた。


「でしょ?」


 近づいたレイリアとの距離に、ウィリスは焦りながら頷いた。


「うん」


 正直、今のレイリアはウィリスにとってかなり危険な代物しろものだ。


 化粧を施されたレイリアは、可愛らしさの中にも若々しい美しさが垣間見え、正直目を合わせて話すだけでも気恥ずかしい。


 しかも、紺色のホルターネックのドレスから伸びる健康的な両腕はもちろん素肌のままだし、透明感のある水色の髪は結い上げられいるせいでうなじが丸見えだ。


 いつものポニーテールの時も確かに見えるのだが、今日は段違いに色っぽい。


 そして何より問題なのが、このドレスは上半身の体の線がはっきりと出ているので、レイリアを見れば必ずそのほんのりと膨らんだ胸もとが視界に入ってくる事だ。


 このパーティーに合わせて隣のゼピス領のラバルーズ城から運び込まれたドレスらしいが、ウィリスはラバルーズ城の使用人に何故このドレスを選んだのかと問い詰めたい気分だった。


 ウィリスが懸命に脳内の雑念を振り払いながらレイリアの相手をしている一方で、レイリアのレイラに対するぼやきは続いていた。


「やっぱり気絶するまで練習させるなんて、お祖母様はおかしいのよ!だからお祖母様との練習は嫌だったのに…」


 口をとがらせ不満をあらわにするレイリアに、ウィリスが何と言ってなぐさめるべきかと思案していると、二人のそばに一組の男女が近づいてきた。

二人はまだレベルが低いので神殿には行けません

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