表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
T  作者: 水面
4/22

Tのために涙した。

その日、俺はTを抱かなかった。

俺たちの関係を身体だけの関係だと思っているTは、不安そうな顔を隠さない。

こんな表情もするんだな。いつも淡々と俺に抱かれていたのに。

本当は、俺だって抱きたかった。でも、それだけじゃ無い。俺の気持ちを分かって欲しかった。

しかし、何の説明もなしに分かれと言う方が無理か?

Tは誤解したようだ。


もう、お別れなのね。

もう、新しい人がいるの?

それなら、今日でお別れね。


静かに微笑んで、部屋を出て行こうとするT。


あほう、俺の気持ちが分からないのか?

気持ちが通じたって思っていたのに!


俺の怒鳴り声に怯え、はらはらと涙を流しながら、


もしかしたら、あなたから愛されているのかもしれないと思うことは度々あったわ。

でも、私は恋や愛が分からないの。

誰にも愛されたことがないから。


そう訴えるT。可哀想なT。

どうして、Tのような女がこんな思いをしなくてはならないんだろう。

まだ見ぬY氏を俺は憎んだ。

そして、Tのために涙した。


私のために泣かないで。

私は慣れっこだから大丈夫。


俺の頬の涙を拭う華奢なTの指。

俺は、その手にそっと口付けた。

愛してる…俺の心の1番奥深く柔らかい場所から気持ちが吹き出してきた。

もうこの想いは止められない。

Tの気持ちも確認したい。でも無理だろうな。

捨てられた子犬のようなTには、愛が何か分からない。

こんな事は言ってわかることでもない。

Tの心をゆっくりと解していくのも俺の役目だ。


しかし、ツアーが始まる。

逢えない日々が続く。

折角近づいた心の距離がまた遠ざかっていきそうで怖い。

ツアーが始まるので、しばらく会えないと言った時の顔。そんな悲しそうな顔しないでくれ。俺だって辛い。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ