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T  作者: 水面
21/22

あるがままの。

Tには内緒で、彼女のご主人と会った。

俺のほうから、どうしても聞きたいことがあったので、連絡を取った。


渋いスーツを一分の隙も無く着こなしている。

端整な顔立ち。

人に命令をし、傅かれるのが、当たり前と思っているような男。

俺は、気後れしないよう、Tの顔を思い浮かべた。



俺の問いにその紳士は、静かに話し出した。


妻は地上の女ではなかったということです。

ま、それは大袈裟かもしれないけど、

手の届かないところで咲いている花のようだった。

私と結婚した時の彼女は、

純粋無垢な天使のように美しい女性だった。

いや、まだ少女のような…。

汚してはいけない存在。

絶対的な女性だった。

そんな彼女に私は、気後れしてしまったんでしょう。

私には、もっと平凡な女性が似合いだった。

それに彼女は私のことを愛していなかった。


それは、あなたが彼女を愛さなかったからですよ。

彼女は、きっといつも愛してくれるのを待っていたはずです。

でも、あなたがしたこと、いや、しなかったことは、

彼女にとって、残酷すぎることですよ。


俺は、怒りを顕に彼女のご主人に詰め寄った。


あなたの言っていることは、分かりますが。

もう、何を言ってもしょうがないことでしょう。



俺は、彼女のご主人が去っていく後姿を見ながら思った。


この人は、彼女のことを愛している。

俺が愛するようにではないかもしれないが、

でも、愛しているんだ。


重い気持ちのまま、

俺は、ホテルのラウンジのソファーに身を沈め、

考え込んでいた。

天上の存在を地上に引き摺り下ろしてしまった俺がすべきことは…。

ただ在るがままの彼女を愛し、幸せにすること。



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