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犠牲者。
あの人も犠牲者なのよ。
私と結婚する前、主人の会社はまだ義父の代で業績が悪化していたの。
私と結婚することで、私の父親からの援助を受けて、会社を持ち直したわ。
でもその後の会社の発展は、主人の業績なのよ。
私がこんなこと言うのはおかしいけど、あの人は素晴らしい実業家なの。
でも、会社のために私を押し付けられて。
あの人には学生時代からお付き合いしている人がいたの。
本当に好きなんだと思う。
今でもお付き合いが続いているんですもの。
あの人はあの人で、1番大事なものを犠牲にしてたのよ。
だから私はあの人を恨むことができない。
俺がつい嫉妬してしまうほど、そんなことを語っていたな。
人生なんてわからないものだ。
ほんの少しの掛け違いで、こうやって幸不幸が分かれていく。
そんな話をした数日後、弁護士から連絡があった。
旦那の相手の女が妊娠していると言う。
これで多分、離婚が成立するだろう。




