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T  作者: 水面
19/22

犠牲者。

あの人も犠牲者なのよ。

私と結婚する前、主人の会社はまだ義父の代で業績が悪化していたの。

私と結婚することで、私の父親からの援助を受けて、会社を持ち直したわ。

でもその後の会社の発展は、主人の業績なのよ。

私がこんなこと言うのはおかしいけど、あの人は素晴らしい実業家なの。

でも、会社のために私を押し付けられて。

あの人には学生時代からお付き合いしている人がいたの。

本当に好きなんだと思う。

今でもお付き合いが続いているんですもの。

あの人はあの人で、1番大事なものを犠牲にしてたのよ。

だから私はあの人を恨むことができない。


俺がつい嫉妬してしまうほど、そんなことを語っていたな。

人生なんてわからないものだ。

ほんの少しの掛け違いで、こうやって幸不幸が分かれていく。


そんな話をした数日後、弁護士から連絡があった。

旦那の相手の女が妊娠していると言う。

これで多分、離婚が成立するだろう。



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