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T  作者: 水面
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出会い

出会い


ふとしたことで知り合い、俺に抱いて欲しいと言う女。

確かに最初に誘ったのは俺。


俺は、あんなことしたのは初めてだった。

ヒースロー空港のラウンジで、初めて見た女に一目惚れ?

俺は、降りる間際、あのころのマネージャーFに俺の連絡先を渡してくるように命令していた。

Fだってビックリしてたよな。


憂いを秘めた横顔が美しい女だった。

一眼で心惹かれた。

だが、俺に抱いて欲しいと電話をかけて来たときは驚いた。

そんな女だったのかと。自分から誘っておいて、勝手な言い分だが。幻滅したのは否めない。


うんと弄んで捨ててやる。


そう思っていたが、溺れてしまったのは俺だった。


マネージャーを迎えに行かせ、2人が落ち合ったのは、俺が定宿にしている銀座のホテル。


抱いて。


細く震える声で囁くように呟いたT。

抱きしめ、激しいキスをした。

俺のキスを受け止めかね、嫌々をする顎を掴み続けた。

やがて、ぐったりしてしまったTをベッドに横たえた。


だが…。


怖いの。痛いの。本当は初めてなの。

お願い、やめて。


まるで俺を挑発しているように、身をくねらせ訴えるT。

そんなこと信じられるか?


だが…。本当だった。

夫がいながら、夫の愛人のせいで、夫から遠ざけられていたT。

かわいそうなT。


これが苦しい恋の始まり。

俺たちは茨の道に踏み出した。


硬い蕾のT。俺が女にした。

柔らかな甘い身体を抱きしめ、ひとつひとつ教えていった。


大輪の花のように華やかに花開いたT。


透き通るように白い肌がほんのりと染まり、可憐な唇からはため息が漏れた。

初めて抱いてから何回目だったか。



だんだん、愛しさが募ってきていた。

最初の夜に思った、「うんと弄んで、捨ててやろう。」なんてことは、もう忘れていた。

夢中になったのは身体だけじゃない。


あの憂い顔、投げやりな態度…。

それでいて消えて無くなりそうな儚さに惹かれていった。


こんな出会いだったが、俺の心の中から想いが溢れてきた。

これっきりにはしたくない。


Tは、愛や恋などというものを理解できないらしい。

信じないということか…。

信じて裏切られるのが怖いのかも。


俺とのことも、身体だけの遊びの関係だと思っている。

どちらかが飽きたら別れるものだと思っている。


だからだろうか。

俺がTを抱くと、ほっと安心したような顔をする。


俺の気持は…。

だんだんと変化してきた。

俺は、Tを愛している。

でも多分、Tはそう言っても信じなかっただろう。

敢えて、俺も言葉で伝えることはしなかった。

Tを抱きしめる俺の腕を信じて欲しかった。


俺がTにのめりこんだように、Tにも俺なしでは生きていけないようになって欲しかった。

身体から始まった関係。

こういう愛の形もあると知って欲しかった。




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