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「いくつか伺ってもよろしいですか。答えられる範囲でお答えいただければ十分ですので。」


 妻がいなくなってから今日までに僕がしたこと、手掛かりになりそうな話を全て説明し終えたとことで、こう切り出された。

 妻失踪という若干不審な話をしてしまったが為に、何か怪しまれてしまっただろうかと思いソワソワしつつ、頷くと、「取り調べではありませんから、気を楽に」と気を遣われてしまった。


「さて、私が伺いたいのは、あなたの奥様についてです。お心当たりがあるかを確認したいだけですので、無理に話していただかなくて結構です。」

「わかりました。」

「では、伺います。奥様が姿を消す前のことですが、体調がよろしくない日が続いたことはありますか。」

「ありました。1カ月くらい前だったと思います。具合が悪いようだったので、尋ねたら、しばらく休めば大丈夫だと言われたので、そっとしておくことにしました。病院嫌いという訳でもなかったので、何かあれば遠慮なく言ってほしいと伝えましたが、今思えばその頃から、思い悩むような…いつもと少し様子が違っていたかもしれません。体調自体は数日で楽になったようでした。」


 もしかしたら、あの時既に何かあったのだろうか。もしくは自分が何かしでかしてしまったのだろうか。気付いてあげられたら、出て行くことはなかっただろうか。見落としていた可能性に後悔と不安が募る。


「そうでしたか。その後は、その思い悩むような様子以外はいつもとお変わりなかったですか?」

「…私の見た限り、変化はなかったと思います。」

「そうですか。ああ、客観的に分かることというのは主観に比べて少ないですから、気に病まないでください。」

「え、ええ。」

「では、次に。直近の奥様のご様子で伺いますが、肌を隠す素振りや、水分を多くとられるような事はありましたか?」

「…言われてみれば、どちらもあった様に思います。」

「失踪にあたって、奥様が何か持ち出しているものはありますか?」

「家の中をきちんと確認していないので、わかりません。家の中のものは基本的に変わりないように見えました。ただ、妻自身で携帯電話を解約していることは確認できました。」

「なるほど。これまでの暮らしになりますが、暑さに弱いとか、夏に水に浸かっているようなことはありましたか?」

「ありました。毎年夏は辛そうでした。それこそプールと称して、水風呂に入っていたこともありました。お風呂でいうと、冬以外は温度をとても下げたがるので、何度か揉めました。」

「やはりそうでしたか。最後に、ひとつ問合せて確認をしたいことがあるので、あなたと奥様のお名前の表記を伺えますか?」

「わかりました。」


 そう言って、自分と妻の名前を記載したメモを渡すと、「ちょっと失礼」と言って電話をかけながら部屋を出てしまった。

 先ほどの質問はどれも心当たりがあり、核心に近づけたような気がした。

 部屋の外から話し声が聞こえる。どこに何を問合せているのか、電話の内容は全くと言っていいくらい聞き取れなかったが、話している声は平淡であったため気に留めずにいた。

 しかしその数分後、電話を終えて戻られた先生の神妙な顔に、何とも言えぬ緊張が走る。


「突飛な話をするようで申し訳ありませんが、どうか落ち着いて聞いていただけますか。あなたの奥様は海に還られました。今、この島の役所に問合わせて確認が取れました。」

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