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 小さな島のとある喫茶店。

 海辺の小高い場所にあって、窓からの見える景色がとても綺麗だと話題のお店である。特に朝陽が昇る海は、窓という額縁に納められた風景画の様だと称される程だ。そして、その窓辺に1枚だけ飾られた鱗もまた、見入ってしまう美しさと言われている。

 浜も近いこともあり、夏の観光シーズンは連日賑わっている為、朝早くから夕暮れまで毎日開店しているが、その他の時季は緩やかな島時間が流れるせいか、営業日は気まぐれだ。どちらかというと島民の為に朝だけの開けるなんて日の方が多いくらいだ。

 ここの店主とはこの店を開く前からの付き合いで、かれこれ10年くらいになるが、この気まぐれが年々加速している様に思える。

 とは言え、私もこの店の常連で、早朝に窓辺の席でゆっくりコーヒーを飲むのが好きだ。


「あ、先生!もう島に帰ってらしたんですね。」

「もう間も無く春だからね。今年も夏の終わりまで、ここの研究室で過ごすよ。」


 私は島外の複数の大学で民俗学の講師をしており、半期だけ授業を受持っている。残りの半期はこの島の研究室で過ごし、その間はこの店に通っている。

 店主は30代の若者だが、飾らない性格で、やや歳の離れた私の様なおじさんでも気さくに話せる男だ。

 そして、彼も私と同じく元々は島外の者だが、訳あってこの島に越してきた。


「了解です。営業日は相変わらずですけど、ごひいきに。」

「気まぐれ営業は毎年のことだからね。もう7年だし、慣れてきたよ。」

「営業しているタイミングも、そろそろ把握されているようで…常連さんには敵いませんね。」

「君もなかなか、島時間に溶け込んだね。」

「この暮らしに慣れると、ここに来るより前の生活には戻れなくなります。毎年お仕事で島を離れる先生の切替えには驚かされるばかりです。」

「半年ごとに行き来する暮らしも20年ともなれば、それくらいはね。最初の頃はもちろん難しかったよ。」

「僕には出来なさそうです。ひとまず次の切替え時まで、島時間でゆっくりコーヒーを飲みに来てくださいね。」

「営業しているタイミングに来れたらそうするよ。」

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