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君という呪い  作者: naco
第二章
13/21

5

山本と居酒屋で会ってから数日が経った。

相変わらず笹川とは連絡もとることもなく、連絡先を交換した日に送られてきたスタンプで止まっていた。

なにより、その日から連絡もしていなかったのに、あんなことを言ってしまったら、さらに連絡なんてできなかった。

仕事にもなかなか精が出ず、失敗が続いた。

山本や他の先輩にも心配されたが、こんなことで悩んでいる自分が悔しく強がるばかりだった。


また数日が経った。仕事は元のペースが戻ったもの、私生活はなかなか締まらず、コンビニ食が増えていった。

このままではいけない、と流石に感じ、奈々を食事に誘うことにした。

相変わらず多忙でなかなか日程が合わなかったが、ようやく今週末に会えることになった。


奈々と大学前駅で合流すると、この前の居酒屋に行こう、笹川氏がいるかもしれん!とはしゃぎ出した。正直それだけは避けたかった。その話をしたかった。どうしたものか。はっきり言うか迷ったが、下手に隠してもすぐにバレるし、それこそこのお店に行こうと言い出すと思い、はっきりと話した。

すると奈々は「それこそこのお店行かなきゃじゃん!」と言い出し、この駅にきた時点でこのお店に行くことは決まっていたようだ。私には反対の余地はなく、結局そのまま入ることに決まった。


お店に入ってすぐ、知ってる顔がいた。その顔に「いらっしゃいませ」と迎えられた。

私の気持ちを珍しく汲んでくれたのか、奈々が対応してくれた。笹川も私の態度に気がついたのか、余計に関わってくることはなかった。


奈々はいつものようにビールを水のように飲む。手も口も止めることなく、いちいちリアクションをとる。どこにそんな体力があるのだろうか。

奈々は私を慰めるでもなく、馬鹿にするでもなく、話を聞いていた。そして何かを突然思い出したかのように手を挙げ近くの店員を呼んだ。

私もそろそろおかわりしようかとメニューを眺めていると奈々は生一つ!と声を張り上げ、京子は何にするん〜?と言いほっぺたをつついてきた。結局決まらず「じゃあ私も生で…」と言いながら顔を上げたと同時に奈々は「あ、あとお兄さんも!」と言い文字通りゲラゲラ笑い出した。

手を挙げたタイミングから少し嫌な予感はしていたが、やはり笹川だった。

「冗談はよしてくださいよ〜。僕は高いですよ?」奈々の冗談に対して笹川は応えた。

「ええ〜いいじゃないの〜ちなみに今日閉店までなの〜?」まだ会って2回目だし、ほとんど話したことのない笹川ににかなり馴れ馴れしい奈々。そこがいいところでもある。

「それがタイミングよく今日は24時に上がります。」

「え!そんじゃカラオケとか行こうよ!」

「いいですね〜たまには遊びたいものですし!」

2人でかなり盛り上がっている。完全に置いていかれた気持ちになった。

「こいつも連れてくんで!」奈々はそう言いながら私の頭をテーブル越しに抱えた。私が一瞬困った顔をしてしまい、笹川も気まずそうな表情をした。

「ねぇ、奈々!私行くって言ってないよ!」つい、少し怒り気味に言ってしまった。

「は〜?ありえん、来るよ!明日どうせ予定ないでしょ!」

「どうせってどう言うことよ。失礼な。」

「まぁまぁ、ケンカしないでください。沢田さんは来てくれないんですか?」笹川に寂しそうな表情をさせてしまった。かなりの罪悪感が生まれ、自分のこの煮え切らない気持ちとは裏腹に「行くけど…。」と応えてしまった。

「ほらね!京子なら来ると思ったよ!朝まで歌い倒すぞ〜!」そう言いながらおしぼりをマイクに、歌うジェスチャーをすると、お上手ですね〜と笹川は煽てた。

ビールの注文を伝えに笹川が裏に向かった瞬間、私は奈々にズイっと顔を近づけ睨みつけた。

「なんで、あんなことしたの!」

「え〜私は今までああやって一緒にストレス発散したりして仲直りしてたから〜。」奈々は口を尖らせ口笛を吹くそぶりを見せた。

「私はそうじゃないの、繊細なの!」

「まーたそうやって言って。何年の付き合いよ。繊細なら私みたいなのとはつるめないよ〜。」

「そ、そうだけど…。」

「いや、ちょっとは否定せい。」奈々はそう言いながら私の額にチョップした。

たまに、こうまともなことを言う奈々には何も言い返せない。

今日のことも後々感謝することになりそうな気がする。


奈々と話して色々考えていたことも馬鹿馬鹿しくなり、この後は24時になるまで飲み続けた。


そして24時がやってきて、着替えた笹川が現れた。

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