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君という呪い  作者: naco
第二章
11/21

3

当然と言えば当然のことだが、ふられた。

ただ、そんなに本気の思いを伝えたわけではなかったため、ダメージは思いの外なかった。と思っていた。しかし、涙は目元に溜まる。多少なりとも寄せていた好意は呆気なく打ち砕かれた。


「あ、ごめんなさい。本気で言ってたわけではなかったですよね。つい本気で応えちゃいました。でも沢田さんだからとかではないので落ち込まないでください。」笹川は慌てながら言った。

私は笹川の言葉が少し馬鹿にしているように聞こえてしまいつい反論気味で「いや〜ふった女にその言い草はサイコっすね〜。」と言ってしまった。

笹川を怒らせたか、と思ったが表情一つ変えずに「そうかもですね。」と応えた。

自分の勢い任せの言動にはほとほと呆れる。さっきの感情も消え心から反省した。それから「あ〜でもそう言うとこも惹かれるのかもしれないっす。」と付け足した。

「ん〜。昔話になっちゃうし、わざわざ話すことでもないだろうから、話さないけど、僕は人を愛することができなくなってしまったんだ。」なんて気になることを言うんだ。でも話さないと言ったからには聞かない。ただ、全く他人に興味がないのかは気になった。

「あ〜そんなことはないですよ。こうして沢田さんを家に呼んでご飯を食べたりお酒を飲むのは人と話すのが好きだからです。人と関わるのは今となっては好きですよ。」笹川は曇りのない表情でそう応えた。

「だからですね、またお話とかはしたいなぁって思うんですけど、いやじゃないですか?」

「ん〜、そうですね。正直いやです。」心にもないけど、何か悔しくてそう応えてしまった。

「そうですか…僕が無神経でしたかね…。ごめんなさい…。」しおらしそうにしている笹川を見て流石に罪悪感が芽生えた。冗談ですよと慌てて言ったら、笹川のいつもの笑顔が戻ってきた。

「でもやっぱ、この程度で好きになっちゃったんで、いつもっと好きになるか嫌いになるかも自分では分からないです。私が変わっちゃっても後悔しないのであれば…。」人を好きになる感覚も久々なもので、自分が本当に笹川とどうにかなりたいかも分からなかった。だから予防線を張った。

それに対して笹川は人に嫌われるのは慣れているのでと苦笑いをした。

どうやら、私と笹川の奇妙な関係はもうしばらく続くようだ。

この後の沈黙に耐えるのもあまりだった上に、出てきたビールは飲み干した。ここらでお暇させていただこう。私はそそくさと逃げるように帰り支度を始めた。

「今日はありがとうございました。たまには人とご飯を食べるのもいいですね。」笹川はそう言いながら玄関まで見送ってくれた。ドアを開ける前に一言挨拶をして外に出ようとすると、笹川は「今度は是非沢田さんの手料理を。嫌じゃなければ。」と言った。はにかむ笹川を見つめながら私は「気が向いたら。」と応えた。


悔しい。悔しい悔しい。何が悔しいのか。ふられたことではない。そんなのこれだけ浅い関係なら逆に感謝すべきだろう。違う。ふられたことではない。言葉が溢れてしまうほど笹川のことを考えてしまっていること、何も積み重ねずにそんな言葉を放ってしまったことが悔しい。私は軽い女だと思われただろうか。それはたまらなく悔しい。言動だけじゃない。ノーガードで家に上がったのだ。逆に警戒させてしまった可能性だってある。

これから笹川にはどんな顔をして会えばいいのだろう。分からない。ひとまず今日のことはお酒でも飲んでいったんリセットしたい。そう思った私は家までの帰り道にある最寄りの駅で電車に飛び乗った。


『え〜今日?私明日朝からデートだからむり〜。んえ?彼氏?いないよ〜なんの男か?秘密〜!また飲もうね〜!』

奈々にもふられた。それにしても彼女はなぜこんなにモテるのだろうか。酒豪でおっさんでゲラなのに。結構喧しい。彼女に言わせると、「本気の人はいないけどみんな本気になるからあしらったらみんな燃えちゃった。まぁ〜私が選り好まないからかな?」と言っていた。天然タラシなのだろう。


結局、一緒に飲む人がいたわけではなく、1人で飲むことにした私は、知っているお店の方が安心するかなと思って笹川の働いているお店に入った。

お店の中を見るのももう何度目かだから、少し落ち着いた気分にはなった。

あとは飲むだけ飲んで、いったんリセットしよう。


しかし、このお店に入ってしまったのは、ある意味正解である意味不正解だった。

このお店にも常連はいる。


山本もその1人だったことを忘れていた。

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