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異端、騎士を目指す  作者: 柳瀬 ルカ
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決闘大会 4 ルーカス

おはようございます

 ついにその時がやってきた。

 決闘大会当日。

 俺は緊張していた。


 そこへクシェルが通り掛かった。

「おはよう。ちょっといい?」

「なんだよ。」

 相変わらず冷たい態度のクシェルに、何故か負い目を感じた。

 けれど、その変な感覚はすぐに消え去った。

 

 いつも通り、気にせず話しかける。

 今はなんとか、決闘を避けたいんだ。

 そのためには手段も選ばない。


「うあ、なんか、お腹痛くなってきたな。目もぐるぐるする。これは持病が再発したかもしれない。」

 ……。

 ひどい猿芝居だと自分でも思った。

 それでも始めてしまったものはしょうがない、と言葉を続けようとした。


「ЭЯМАТФЉ」

 それを遮ったのはクシェルの詠唱。


「な、何したんだよ。」

 変化は起きなかった。

 ただ、クシェルは顔を赤らめてそのまま無言で行ってしまった。

 訳がわからない。


「お前、体調悪かったのか?」

 ファルコたちチームメイトがやってきた。

 彼らは何故かクシェルを避けていて、一緒に話すことはない。

 嫌っているというよりは、恐れている感じだが。

 

 俺は彼らの言っている意味がわからず、黙っていた。

「あのクシェルに回復魔法を使わせるなんて、実は相当な地位者だったりする?」

 その発言から推測するに、さっきのクシェルの詠唱は回復魔法か。

 回復する場所がなかったから何も効果が出なかったんだ。


「魔法使い共はプライドが高いから、滅多のことで魔法を使わないはずなんだけど。」


「そうだよな、ありがたいな」

 こみ上げてくる笑いを抑えながら適当に相槌をうつ。



 魔法は能力とは異なり、一部の家に古くから伝わるもの。

 本当のところはプライドが高いというより、自衛のために使わないんだろう。

 力尽くでも魔法を欲しがる輩は多くいる。


 つまりクシェルは俺の体調を本気で心配してくれた。

 そして、俺の嘘を責めるよりも、自分がだまされたことを隠すことを優先した。

 あの赤面はそういうことか。

 いつも冷たいけど、とクシェルが出て行ったドアの方を見る。

 いいやつなんだよな。




 一方教室の中心には輪ができていた。

 その中心にいるのはサシャさんだ。

「大会応援してますわ。」「私も。」

 サシャさんはその端正な顔立ちと行動がかっこいいということでクラスの人気者となっていた。

 ただし、女子に。


 木の上から降りられなくなった猫を華麗に救い出した、だの、ナンパされていた少女を王子様のように助け出しただの、人気者になる話はたくさんあった。

「あ、ありがとう。」

 サシャさんは、全く慣れていない様子で応えると「そんなサシャさんも素敵。」と黄色い歓声が上がる。 


 なんか遠い人になった気がする。

 人気者になってしまったサシャさんとは入学式以来話せていない。

 

 それでも、サシャさんの戦う姿は俺しか見てないんじゃないか。

 だから、戦うともっとすごいぞ、と叫びたかった。

 もちろんそんなことできないけど。


 それに、まだ自分の剣がうまくなったとは言い難いから、サシャさんとは大会で当たりたくない、そう思った。




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