決闘大会 1 ルーカス
覗いてくださりありがとうございます。
入学してから1週間位たったある日の朝。
俺は、いつものように5分前登校をすると何やら教室が騒がしかった。
「何があったの。」
あまり社交的ではない自覚のある俺にも言葉をかわす程度の友人は何人ができた。
「お前、掲示見てないの?」
「一週間後に決闘大会だよ。」
彼らはやる気に満ち溢れていた。
貴族は幼い頃から剣を学び、兄弟や同級生と剣合わせをする習慣があると聞いたことがある。
「あ、ルーカス君。」「おー、きたきた。おはよ。」
近寄ってきたのは今までほとんど話したことのない男女2人だった。
「おはよう。」
「あの、よろしくお願いしますね。」
はて?なんの話だろう。
俺は、今どき珍しいおさげの女子を見つめ返す。
女子の顔がだんだん赤らむ。
そんなに恥ずかしがられるとこっちも恥ずかしくなる。
見た目通り、かなり内気みたいだ。
確か名前は、フローラだったか。
「決闘大会の話。俺ら4人、同じグループだったろ?」
隣に立っていた男子が親しげに肩を組んでくる。
馴れ馴れしいが、不思議と嫌じゃなかった。
「ん?4人って言ったか?」
「ああ。お前と俺、ああ名前はファルコっていうんだけど、俺と、フローラさん、あとは……」
「呼んだか?」
明らかに不自然な声の出し方をして、壁によりかかり流し目をしながらその男は登場した。
制服の上から黒いマントを羽織り、もうどこからどう見てもアレだ。
厨ニ病だ。
「呼んだ呼んだ。あとはあいつ、ダークな。」
ファルコはそんなダークの様子を全く気にしてないように言った。
あんな奴クラスにいたっけ?
ゆっくりと趣たっぷりに近づいてくるダークを見るが記憶にない。
小学校が一緒だったというファルコに聞くと、彼は今までの授業に出てないらしい。
体が弱いのだろうか。
少し頭は弱そうだけど。
「あの、始めまして。俺はルーカス。」
恐る恐るコミュニケーションを図ると、ダークは大きく頷き、よろしく、と言った。
続けて、気になっていることを聞く。
「その右手って、なにか力持ってたりする?」
「な、なんでわかったんだ。」
「厨ニ病のお約束。」
封印されし右手の力。
「ちうにびょ、、、?」
「何でもない。」
フローラが聞き返してきたが、俺は慌てて言葉を遮った。
ダークは大きな秘密を暴かれたような顔で固まっていたが、やがてこちらへ向き直りやたら厳かに言った。
「そう、この右手には触れてはいけない。お前たちを焼き尽くしたくはないからな。」
黒い手袋をしている手を見つめながら。
コホン。
微妙な空気になったところで、わざとらしい咳払いをしてファルコが話を遮った。
「決闘だから一対一原則はもちろん守られるが、勝ち星の数をこの4人一組のチームで争うんだ。」
強引な話の戻し方だと本人も思っているようで苦笑いをしながら説明してくれた。
そうだ、決闘の話だった。
まずい。
俺は冷や汗をかきはじめた。
まだ1週間程度しか剣を練習していない。
そんな付け焼き刃で幼少期から鍛錬してきた皆と戦えるわけ無い。
初日に見たサシャのレベルが普通だとしたら。
精神的肉体的ともに打ちのめされる未来しか見えないし、チーム戦ともなれば責任もある。
かなり憂鬱になってきた。
右手だっけ?左手だっけ?