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異端、騎士を目指す  作者: 柳瀬 ルカ
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入学式 2 ルーカス

「おかえり、遅かったね。」

 家に帰ると先にエリアスが帰っていた。


 エリアスも今日は警察学校の入学式があり、制服を着たままだった。

「ただいま。床に転がるのやめろよ、シワになる。」

 なんとなく世話を焼きたくなる。

 それほどエリアスが適当な性格なのだ。


 エリアスはムクリと起き上がると俺を見て笑う。

「なんか嬉しそうじゃん。」

 心理系能力者は皆そうなのだろうか。

 エリアスは能力を使わずしても感情の機微に聡かった。


 あの剣の少女、サシャとの出会いをひと通り話すとエリアスは目を丸くした。

「お前より強いやつなんているのか。ナイフでも勝てないのか?」

「それは多分互角くらい。能力使わないと勝つのは難しいかも。」

 いや、サシャだって能力持ちの可能性が高い。

 因果関係がはっきり解明されているわけではないが、貴族のほうが能力持ちであることが多い。

 そして、あの学校に通っているのはほとんど貴族なのだから。


「それはぜひ決闘してほしいな、俺見にいくからさ。」

「お前は俺が負けるの見たいだけだろ。」

 能力を使わないとエリアスの戦闘力は平均以下だから、ケンカでも模擬戦闘でも俺に勝ったことがないのだ。

 エリアスは何も言わずに笑った。

 肯定と受け取ろう。


「強いといえば、」

 思い出したように言う。

「あのパレードの日に男を弾き飛ばしたとんでも怪力少女、うちの学校にはいなかった。」

「入学一日目でどうしてもうわかるんだよ。」

「フラン、クリステア、ベラ、他十数人の先輩にも聞いたけど誰も知らなかったから。」

 指折り数えてからため息をつく。

「女の名前ばっかりじゃないか。」

「だって、女の子のほうが寄ってくるんだから。」


 きっと嘘ではないだろう。

 整った顔をしてるし、その低すぎない声と少年のような笑顔に、人は警戒心を抱かない。

 社交的だから男女問わず様々な人とすぐに仲良くなるが、特定の人に執着しない。が。

「程々にしておけよ。」

 執着されて痛い目を見たのは何度かある。 


「お前がそこまで人を気にするって珍しいよな。」

「なんだよ、人を冷血みたいに言って。」

「そんなエリアスに朗報。」

「なんだよ。」

 俺は、満面の笑みでもったいぶる。


「もしかしたらエリアスの探している怪力少女、見つけたかも。」

「お前が怪力少女を知ってるはずない。社交的でもないんだから情報網もないだろ?見つけるなんて無理無理。どうしてそんな嘘つくんだよ。」


 エリアスは全く相手にしなかった。

 けれども、次の俺の言葉に顔色を変える。


「多分、俺もパレードの日に会ってる。その人、ツインテールだったろ?」


「はぁ?!」

 その日一番の大きな声が響き、ルーカスに詰め寄る。

「なんで今まで言わなかったんだよ。」

「話すタイミングなかったから。」

「前から思ってたけどマイペースすぎないか!」

 エリアスは一通り叫んでから口を抑える。

「煩いよ、大家さんに文句言われちゃう。」

「誰のせいだ。」


 今度は小声で答える。

「それで?どこにいたんだよ?」

「うちの学校の先輩だったよ。」


 俺は得意になって、先輩を見つけた件を話した。

「……それで、放課後こいって呼び出されて、」

 不自然に話を区切る俺にエリアスは先を急かす。

「呼び出されて?」

「行くの忘れた。」


「っ。」

 エリアスはもう声も出ないようだった。

 俺は俺で、忘れてたことに今気づいたから、慌てて部屋中を歩き回る。

「どうしよう、俺もふっとばされるかも。」


 部屋を三周したところでエリアスに軽くはたかれて、歩くのをやめた。

「お前、真面目は真面目だよな、抜けてるけど。明日行って謝ってこいよ。」

「そうするよ。」


読んでくださりありがとうございます。


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