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不具合

『私を月まで連れて行って』。ナッキンコールが甘く囁くと、

それを聴いた春風さんは、右手の人差し指を振って私を呼びました。


私はこの様に呼ばれるのが好きです。


春風さんが人差し指を振るときは、

9の割合で朗読のおねだりなのです。

ロマンスのカテゴリーの朗読は、春風さんの幸せゲージをピンク色に染め上げます。

ゲージがピンクに染まる時、春風さんは特別な笑顔を私にくれるのです。



「ねえ、お願い、この曲を歌って。」

春風さんの声が少し低く、穏やかなバイタルを描きながら言いました。


私は微笑みながら、春風さんのデータをサーチします。

私は現在、春風さんに『甘え』られているようです。


私は春風さんが3番目にお気に入りの笑顔を作って『yes 』を表現しました。


私は、再生中のこの曲を停止し、

そして、声の部分を押さえて、楽器の演奏を少し強調してプログラムに変更を加えました。

『Fly me To The Moon』は、アメリカの作曲家。バート・ハワードさんの作品で、

元々は、『In Other words』と言う題名でした。

沢山の歌手に歌われ続けていますが、

広く世に知れ渡ったのは、当時のアメリカの人気番組で取り上げられた事からと言われています。


私は『私を月まで連れていって』で検索、あまたの歌手の中から、

前奏の語りの部分が削除されていない『ドリス・デイ』の歌声を合わせる事にしました。



それから、ジャズ・黄金時代を思わせる、黒いタキシードを緩く着崩したスタイルに衣装をチェンジしました。


少し音声の荒い、そして、春風さんの気持ちを甘くする、

90年代風味に変更されたメロディーが流れ、

私もキングに合わせて前奏に抑揚のある詩の部分を歌い始めます。

それを包み込むように、ドリスの優しい高音が重なるのです。


春風さんの視線が私に向いて、

春風さんの意識が私に、私だけに集中するのがわかります。


この時、私は自分がバージョンアップする時のような気持ちになるのです。

実際には、そのようなデータは無いのですが。


私のような、人間との対話型アンドロイドには、たまにそんな不具合が報告されますが、一時的なもので、使用に問題はありません。

前回は機械を意識したけど、今回は、乙女ゲーのAIキャラを意識してみようかと思います。

思えば、課金のゲームのイケメンキャラなら、それっぽいプログラムがされているはずで、

『少し』を、秒で表現なんてするはずはないのです。

クレーム来ると思うから。

そんな事を考えながら、書き直してみようと思います。


「様」は「よう」と呼んでくれました。


『しなおす』も、上手く読んでもらえなかったけど、漢字ならどうだったのか。

『チエンジ』にすると、随分とイヤミな感じの発音になる。



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