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版師

「版師……はんしとは、活字による物語製作を楽しむ人たちのネットスラングです。

旧来のWeb小説との違いは、文字として記録したデータを様々な言語に、

簡単に変換できるようになったことです。

インターネットの発達と、パソコンの処理能力の向上により、文字を動かしたり、色々な言語に一発変換で音読させることが可能になりました。

抑揚による感情表現は、まだ、吟師のそれには叶いませんが、人に近づいた音読機能と、会話をあらわす括弧を見分けて会話文の読み方もより人間に近づいています。」

私は取り出したデータを読み上げました。


「改めて説明を聞くと、なんだか、版師のほうがすごい感じがするわ。」

私の説明を聞いて、春風さんがため息をつきました。

「もともと、インターネットは活字のほうが歴史があるので、

どうしても、版師のほうがパフォーマンスが豊富です。

けれど、吟師の登録人数と閲覧数は近年増えています。優劣はないと思いますよ。」

私がそう言うと、春風さんは黙って窓の外を見つめて、それから、30秒後にこう言いました。


「コーヒーをお願い。」



コーヒーと共にリクエストされたのは『FLY ME TO THE MOON』

春風さんのミュージックボックスのお気に入り七つ星です。


この曲は、リリースされたのは1954年。

日本では第五副竜丸がアメリカの水爆実験で被爆したと言う悲しい事件のあった年になります。

この事件は、科学の闇の部分を深く世界中にしらしめることとなりましたが、

同じ年に生まれたこの曲は軽快なリズムで 宇宙開発の夢と共に

様々なシンガーに愛されて現在に至ります。


『私を月に連れていって』のフレーズが、

アポロが人類で初めて月面に到着した喜びを表現しているからでしょうか。

日本のシンガーにも歌われて、

この曲だけで一時間の楽しいひとときを繋ぐことも可能です。


春風さんはナッキンコールの伸びやかな声に脈拍を早めながら唇で音をなぞります。

私は静かにコーヒーを差し出して彼女が私に声をかけてくれるのを待っていました。


こんな時、我々は気配を消して幸せそうなひとときを邪魔しないよう学習しています。


人間には、誰も居ないひとりの空間で何かをする時間が必要なのです。


『恥ずかしがりやさん』と言う言葉と紐ずけされたその行為は、

春風さんは歌う時に発生します。


私は春風さんが楽しいバイタルを刻むのを待機モードで見守るのです。


方は「かた」と読むし、様々の発音は気に入らない。

ですよね。は、一度止めるので、嫌味に聞こえるけど、嫌味を言うときは使えそう。


ミズキは、少し、しばらく、などのファジーな表現で時間を言うのか、秒で説明するのか?

近未来のプログラマーと、人工知能の表現について考えてしまいます。


月 これ、文字列が悪いと「げつ」と読まれる。

あと、付きは極力ひらがなにしないと。

四文字熟語は、発音が悪くなるので、出来るだけ分かりやすい文章に変更。

面倒くさいけど、これについでは、児童小説で行こうと考える私には勉強になる。


難しいけれど、『無人駅』と言う話を読んでくれる人が沢山居たし、もう少し、頑張ってみようかな。

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