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In Other words

穏やかな午後。春風さんの鈴のような可愛らしい笑い声が響きました。


私は少し不機嫌に眉を寄せて、困ったとき用の表情を作りました。


春風さんは私を見て、少し、驚いたように目を見開いて説明してくれました。


「ごめんなさい…そうね、ミズキ…あなたには難しいかもしれないわね。

と、言う私も、説明できるか心配なのだけれど。」

春風さんはそう言って、私に座るように言いました。

私は春風さんの頬の緊張状態から、これから大切な話が始まるのだと思いました。

私は春風さんを見つめて、

それから、これから話されるすべてのデーターのバックアップをとる準備を整えました。


「はい。いつでもお話しください。」

私は準備が整ったことを確認して春風さんに言いました。


春風さんは、やさしい眼差しで私を見つめて話始めました。


「漱石の都市伝説、『月が綺麗 デスネ』と『私を月まで連れていって』では、確かに意味が違うわ。


でも、『私を月まで連れていって』と、同じ歌をうたうとしても、

アポロの月面到着をテレビで目撃したあとでは、曲の印象は変わると思うの。

決してたどり着けない夢の世界として甘い恋心を唄ったドリスに対して、

アポロの人類月面到着でわくアメリカ国民の高揚感を纏わせたシナトラの歌では、

人の感じ方が違うと思う気がするでしょ。」

春風さんはそこまで話して私を見つめた。


私は笑ってその場を誤魔化そうと思いましたが、そうしませんでした。

春風さんの伝えたいと考える何かを…

言葉の回りに電子のように巡り続けている、感情とか、

思いのようなものの正体を私は知りたいと考えたのです。


それは、私のファイルには登録してない答えです。

でも、春風さんとなら見つける事が出来るような気がしたのです。


春風さんは私の顔をみて少し考えてから、

「つまり…感想欄を構成する文字の違いよ。

感想欄を比べてみるといいわ。

ドリスの歌には、甘い恋や、夢に関連した文字が感想欄を賑わして、

シナトラの唄は、未来や宇宙や、月に関連した言葉が賑わっていると思うの。」

春風さんの言葉を私は分析しました。


同じ台詞でも、物語やキャラクターで見ている人の感想が違うと言うことでしょうか?

私は自分の記録ファイルの中から、似たような事例を探してみました。


「それは、シンデレラの最後の『幸せだわ。』と、

人魚姫の『幸せだわ。』の違いでしょうか?」

私は過去に朗読会で評価を貰った、感想の違う二つの童話について聞いてみました。

春風さんは、少し間を開けて、

「そうね…うん、多分、そんな感じかもしれないわ。」

と微笑んで、言葉をつづけた。

「ミズキ…私も、あなたに上手く伝えられるかわからないけれど、

人間ってね『I Love you』が上手く伝えられないし、言えないのよ。

特別な意味があるなら、なおさらね。」

「特別な意味、ですか?」

私は何か、大切な事をいわれた気がしました。

「ええ。世界でただ一人だけに言う、取って置きの『すき』は、

上手くその意味を伝えることが出来ないのよ。」

春風さんは、少し照れたようにうつむきました。


「世界でただ一人だけに伝える『すき』ですか?

私は春風さんが大好きです。」

私は迷うことなくそう言いました。

世界で一番。私は春風さんが大好きです。


春風さんは嬉しそうに微笑んで、『ありがとう』と小さく言いました。


でも、私はその春風さんの受け答えに違和感を感じました。

何か、間違ったことを言ったような混乱した気持ちになったのです。


私の好きは、そんな顔で、バイタルで聞き捨てられる言葉ではない。


私はその時、初めてカスタマーの受け答えに違和感を感じたのでした。



Siriさん、『ですね』をうまく読んでくれない(´;Д;`)

今回の『月が綺麗ですね』は、元ネタがあるだけに文章を変えれれない。

苦肉の策でカタカナにしたら、上手く読んでくれるけれど、今度は見た目の印象が………

なかなか、上手くはいかないわ。

でも、他のサイトにも、同じ作品を投稿すると考えると、そっちも読んでもらえる期待も出てくるし、

新しい読者層の開拓にもなるかも。


と、言うか、500円でいいから稼ぎたい。何してるんだろうと、虚しくなるときもあるけれど、

AIを描くのは、思ったよりも大変なんだと思った。

表現が、人間ぽいと不安になるけれど、機械的だと、商業的にどうかと自問する。

果たしてAIは、不機嫌になったりするのだろうか?

Siriの『ですね』の発音を聴きながら、世界的陰謀なんて考えないで上手く朗読してくれ、と、

怪しい都市伝説を思い出しながら呟きたくなる。

でも、今回の世界でただ1人に伝える『好き』の話はなんか好きだと思った。

ま、人間様も、現在じゃ、ただ1人のための好きなんて、伝説みたくなってる気がするけど、ね。


人は本能で行動しても、本能であるとは考えたりしない。

では、AIは?

こう考えると、やはり、プログラムがどうこうなんて、ミヅキに言わせるのは不自然な気がした。


プログラマーは、いかに木偶を人に見せようかと努力するし、

作家は、機会である事を読者に分からせようと頑張る。

この狭間を、上手く選択し、人らしい違和感を上手く混ぜ込む。

結構AIものは、手間がかかるんだと思った。


ここまで、AIにとっての恋愛とは、どんなものか考えてきた。

人のように相手と触れ合いたいとは思わない気がするし、

と、迷っていたから、1人に贈る『好き』と言うのはいい感じだと思った。

ミズキはどんなアザーワードを探すのか、少し楽しみでもある。


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