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電脳世界で美少女はじめました  作者: 有栖 璃亜
第一部 マスター、これからお世話になります
9/30

最強ゲーマー藤原大輝


「ただいまー」

「おかえりなさいマスター」


 午後四時十分。家にマスターが帰って来る。それとほぼ同時刻に私もマスターのスマホに戻る。


「あれ? お婆ちゃんは?」

「買い物に行くと聞きました」

「ふーん」


 と言っても、聞いたのではなく聞こえてきたの方が正しい。

 そして、その時のマスターは学校で見せた冷たい表情ではなく優しいいつも表情に戻っていた。


「マスター……」

「ん? どうしたの?」

「その……」


 マスターの今の表情を見ていると心が痛い。いつか、マスターの精神が壊れて取り返しのつかないことになってしまいそうで怖い。


「ゲームでもしませんか?」


 私はマスターに気休めに提案してみる。

 

 今のマスターの精神は相当辛い筈だ。そんな時には楽しいことをするのに限る。

 それに、私がマスターに出来ることはこれくらいしかないから……。


「別にいいけど……急にどうしたの?」

「特に理由はないんですけど……マスターと一緒に遊びたいなーっと思いまして」

「そうなの?それなら急いで準備するからちょっと待ってて」

「了解です」


 そう言ってマスターは、自分の部屋に向かった。

 そして、荷物を部屋に置いた後に洗面所で手洗いとうがいをして、また自分の部屋へと向かう。


「えっと……ゲームと言っても何がしたい?」

「何でもいいですけど……ちなみに聞きますが、マスターはゲームハ(ゲーム機)ードは何を持っているのですか?」


 ゲームをする以前にどんなハードが家にあるのかを把握したい。その上で何をするのかを決めたい。


「えっと、確かPH(プレイホーム)2と3と4があって、MeU(ミーユー)とかだね」

「マ、マスターって意外と持ってるんですね」

「うん。だってゲームは好きだし」

「そ、そうですか」


 マスターは以外にもゲーマーであった。


 準備が出来たので私はスマホから今からするゲームハードのPH2のコンピューターの中に入る。

 一度この家のコンピューターにはアクセスしているので、今家にあるあらゆる電気家具や器具への侵入は楽だ。


「まさかこのソフトがあるとは……」


 今からプレイしようとしているソフトは「グランドツーモス4」というレースゲームでプレイモードは二人で対戦だ。

 

 このソフトは、今現在では全く手に入らないとまで言われている超レア物だ。

 私だって持っていないソフトをマスターが持っているのは予想外だった。


「負けませんよ?」

「僕も元からそのつもりだよ」


 お互いに車と選んだ後にコースを選び、レース開始のカウントダウンが始まる。


 選んだコースの難関ポイントはカーブが多いこと。

 だが、直線も多いのがこのコースの特徴だ。

 そして、私が選んだ車は、直線が速いスポーツカーで曲がりやすいMR車にした。


 それに対してマスターが選んだ車は、私より少し遅めのスポーツカーでドリフトがしやすいFR車だ。

 と、説明書には書いていた。


『5、4、3』

「「…………」」


 横に真剣にやけに真剣な顔をしたマスターがいた。

 どうやら、マスターは私に負けたくないらしい。


『2、1』

「「………」」


 部屋に聞こえるのはゲームのカウントダウンと車のエンジン音のみ。

 お互い、最初から本気でやるようだ。


『GO!!』

「「………!!」」


 スタートの合図と、同時に走り出す。

 最初の直線は馬力が高い私の方が速く、どんどんマスターと距離を離していく。


 そして、ある程度距離が離れたところで左に急カーブが来る。

 私はスピードを落として曲がる。マスターもスピードを少し落として曲がる。


 直線の速い車の弱点はカーブ。そして、マスターが唯一私と距離を詰められるのはカーブだ。


「直線で距離を離す!」


 直線で距離を離してカーブは落ち着いて曲がれば追いつかれることは無い。

 このままバックミラーから消してやろう!!


「…………」


 マスターは無言でプレイしている。少し集中しすぎではないだろうか?


 しばらく走っているが、一向にマスターの車がバックミラーから消えない。それどころか、僅かに近づいてきている気がする。


 ——まさか、この私がコーナーで負けているというのか?


 有り得ない。確かに直線で距離を離している。そもそも、私が使っている車はマスターのより馬力が上。


 そして、このコース一番の難関ポイントである右急カーブからの左急カーブという連続カーブゾーンだ。


 それに備えて私はスピードを落とす。

 恐らくマスターもこのポイントはスピードを落とす筈だ。


 だが、マスターは予想外の行動をした。


「マ、マスター!?」


 普通はこのポイントを通る時はスピードを落として曲がるのだが、マスターはスピードを落とさずにそのポイントに向かう。


 ——まさか、マスターはこのポイントを知らない?


 そんなことは無いとは思うが、スピードを落とさずにこの連続カーブに突っ込むなんて無謀だ。


 そして、マスターは連続カーブゾーンギリギリの所でドリフトに入る。


 ——ダメだ。スピードが乗り過ぎている! 減速するスペースがもうない!!


 確実に事故る、そう思った私だがマスターは有り得ないことをした。


 一つ目のカーブをドリフトで曲がり、二つ目のカーブを有り得ない速さで曲がりきった。


「な……なにっ……!?」


 ——慣性ドリフトだと……!?


 慣性ドリフト……つまり慣性力を使ったドリフトだ。簡単に言うと、右曲がりのドリフト状態の車を遠心力を使って車を無理やり左曲がりのドリフトにしたのだ。


 まさか、このゲームでこの上級テクニックを使うとは思わなかった。


 そして、そのまま一週目が終了し、ニ週目に突入するが、一度マスターに抜かれた私は直線で抜くもカーブで抜かれ、連続カーブゾーンは慣性ドリフトを使えるマスターには勝てず、私とマスターの対戦はマスターの勝ちで終わった。


「強すぎですよマスター……」

「あ、手加減した方が良かった?」

「いえ、手加減されると何か悔しいのでやめてください」

「う、うん」


 まさか、マスターがここまで強いとは思わなかった。このまま終わるのも嫌だ。


「マスター! リベンジマッチを申し込みます!」

「霧乃さんって意外と負けず嫌いなんだね」

「い、いいじゃないですか!」


 そして、再度対戦をした。


 結果は完敗だったが、マスターも私も心の底から楽しめたと思う。


「マスター! もう一度お願いします!!」

「これで五回目だけど……」


 その証拠に、私に勝った時やレース中に見せた表情はとても嬉しそうで楽しそうだった。

完全になんちゃらDである。

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