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電脳世界で美少女はじめました  作者: 有栖 璃亜
第一部 マスター、これからお世話になります
11/30

デネと切刃(霧乃)の相談会


「うわぁぁーー!!」


 上がる、上がる、時には曲がりまた上がる。

 すぐに着君に入ってからずっとこの繰り返しだ。

 体感的には結構時間が経っているような気がするが、実際は一分たりとも経過していないだろう。


 確か、学校でも同じようなことがあった。

 早く授業が終わればいいのに、と考えていると時間の経過が遅く感じられ、ボーとしていると知らぬ間に時間は経過している。


「そうだ!」


 ボーとしていると時間がいつの間にか経過するのであればそうすればいいんだ。

 そうすれば、この長く感じている時間もあっという間になるだろう。


「考えるな、何も考えるな」


 何も考えない、心を無にするんだ。何も考えなければすぐに着く。


 それから何も考えずにボーとしていると、すぐに着君の終着点が見えてきた。


「うわっ!!」


 すぐに着君からスルッと出てくる。幸い、すぐに着君の出口一帯にマットが敷かれていたので着地の衝撃はそれほどなかった。


 そして、目の前に三メートルくらいの大きな扉があった。


 ——怪しい……。


 扉を見た瞬間にそう感じた。

 後ろにはすぐに着君と今私が座っているマット、周りには、一面が壁でドア一つ無い。


 ならば、することは一つしかない。


「お邪魔しま〜す」


 そっとドアを開け中に入る。

 部屋の中には山積みの書類があり、部屋を見回してもデネの姿はなかった。


 と、思った矢先に山積みの書類の中から何かが出てきた。


「ぷはぁ〜。死ぬかと思った〜」

「何してんだデネ……?」

「ん?おぉ、これはこれは、最近住処を見つけてその時に自分が女だと自覚して名前を変えて口調を演じ始めた元大神切刃、現大神霧乃さんじゃないですか」

「おい、二言多いぞ」


 書類の中から出てきたのはデネだった。いったいどうやったら書類の中に埋もれるのか。


 そして、今デネが言ったことの全てをすることになったのはデネ、お前が原因だからな。


「あれ? ここでは元の話し方なの?」

「そりゃな。俺の正体知ってるんだから、別に演じる必要ないだろ?」

「えぇー、折角可愛いのに……」

「はいはい、それより本題に入るぞ」


 これ以上無駄話に付き合っている暇なんてない。

 さっさと本題に入らないといつまで経ってもこの無駄話が終わらない気がした。


「その前にさ……」

「ん? 何だ、また無駄話か?」

「この書類片付けるの手伝って」

「自分でやれ」

「……この書」

「俺はやらん、デネがやれ」


 デネのふざけた質問に即答してやった。


 ——なるほど、今すぐ来てと言ったのはこれを手伝わせるためか。

 

 ただでさえ無駄話に付き合ったというのに、恐らくデネの仕事の物である書類を片付けるのを手伝うなんて、デネは俺を執事か何かと間違えていないか?

 いや、どちらかと言うと今は女だから執事じゃなくてメイドだな。


「鬼! 悪魔! サタン!!」

「まあまあ、もし一人で片付けたら下界の人達にお前のことを教えて知名度上げてやるからさ」

「ほ、本当か!?」

「勿論」

「な、ならば仕方が無いな。よし、頑張るぞ!!」

(フッ、チョロい奴だ)


 この世界で言う神様のくせに何でこんなにチョロいんだよ。

 本当にこんな奴がこの世界の管理者なんて信じられない。下界の人達に言っても信じる人なんて一億人の内一人くらいだろう。


「知名度のためだぁぁ!!」


 デネはそう叫びながら書類を積み上げて部屋の隅に置き始めた。


 ——いや、片付けるってそういうことかよ。


 てっきり書類の内容を確認した後に承認が否認の判を押す方の片付けるかと思った。


「はい、片付け終わり」

「後で処理しとけよ」

「りょ、了解」


 非常に嫌そうな顔をしながらデネは答えた。

 お前は夏休みに宿題を嫌がる小学生か。


「それじゃあ本題に入るぞ」

「オーケー」


 いったい本題に入るのにどれだけの時間を費やしたであろうか。


 ようやく俺は、マスターのことについてデネ話した。


 え? 何で急に一人称が変わったかって?

 そりゃ、俺後演じる時に絶対にすることが、体の動きだけでなく心まで演じることだ。そうでもしないと絶対に何処かでボロが出るからな。


「ふーん、君の住処の持ち主がいじめにあってると」

「流石に一人じゃ何も出来ないからな」

「で、相談しに来たと」

「その通り」


 俺がマスターのことを話すとデネは真剣に考え始める。まさかデネがここまで真剣になるとは思いもしなかった。


「これは人間の心の問題だしな〜」

「何か解決策はないのか?」

「あるにはあるけど……それが原因の可能性としては低いよ?」

「あるのなら教えてくれ!」

「……はぁ、仕方ないな〜」


 それが解決策でなくても可能性があるのなら知っておいても損じゃない。

 しかし、もしこれが違ったらこっちの世界では打つ手なしだ。


「この世界から人間の世界に悪影響を及ぼす物が二つだけある」

「それは?」

「——一つはコンピューターウイルス。そして、もう一つは悪電波だ」

「悪電波?」


 コンピューターウイルスなら人間界でも有名だから知ってるのだが、悪電波というのは初めて聞いた。

 名前からしていかにも悪さをしそうだな。


「悪電波……文字通り悪い電波のことだよ。なら影響はないんだけど少量なら特に何も無いんだけど、大量になると手がつけられない程厄介になる」

「どうなるんだ?」

「大規模な障害が起きる。これは、悪電波のせいでこちらの世界と人間の世界との接続を邪魔されるんだ。

災害以外の時に人間の世界に障害が起きるのはそのせいだよ」


 ふむふむ、障害はこうやって起きるのか。勉強になった。

 ……で、その悪電波とさっき俺がした話とどういう関係があるんだ?


「そして、悪電波は厄介な理由はそれだけじゃない」

「他にもあるのか?」

「あるさ。それは、電波に混じって人間の世界を飛んでいて、人間に当たれば悪電波だけが人間の体の中に入っていくことさ。僕達のようなデータの体をした者にはなんの影響もないんだけどね」

「ふーん。で、その悪電波が人間の体に入るとどうなるんだ?」

「体に悪電波が少ない、或いはない人間に嫌悪感や嫉妬感などの悪感情が湧き出てくる」


 複数の人間に大量の悪電波が入って、その集団が体に少量の悪電波が入っている、或いは体に悪電波がない一人の人間に嫌がらせをする。


 まさに、人間界で起きているいじめや差別だな。


「さっきの話には関係してる可能性は低いけど、悪電波も人間に悪影響を及ぼすってことは覚えておいて。今の話に質問がある?」

「……その悪電波っていつもどうやって対処してるんだ?」


 悪電波をこの世界から消滅させる=人間界の電波がなくなるということだ。

 流石に、そういうわけにはいかない筈だから、デネもなにかと対処方を作っている筈だ。


 俺がそれを知っておけば、もしその悪電波が原因の場合の解決が早くなるからな。


「対処法は、悪電波の発生源を突き止めてこの()()()()()を使う」


 そう言って、デネは何処からともなくリュック型の掃除機を出した。名前からして、その掃除機で悪電波を吸い取るのだろう。


 それより、デネのこの変な名前は何なんだ。ネーミングセンスの欠片もないじゃねぇか。

 それと、何でリュック型の掃除機なんだよ。俺に某有名ゲーム会社の永遠の二番手が主人公のゲームみたいにお化け退治でもさせたいのか?

 てか、絶対すぐに着君もデネが命名しただろ。


「君も名前でわかったと思うけど、これは悪電波を吸い取るために使う掃除機だから、僕達がこの掃除機に吸い込まれる心配はないよ」

「掃除機に吸い込まれるってどんな吸引力だよ」

「え、あっそっか、君には教えてなかったね。この世界の一般的な掃除機はただ吸い込むんじゃなくて、掃除機自体がゴミと判断した物のデータを分解してから吸い込むんだ。だから、もし体にゴミがついてたら一緒に分解されるよ」

「何その取り扱い注意の掃除機(兵器)


 それ一つで強盗やら殺人などの事件でも起こせるんじゃないのか?

 掃除機を持って掃除機で脅す銀行強盗……。


『さっさと金出せ! でないと、俺の掃除機でお前らの命はないぞ!』


 ——何このシュールな感じ。俺が人間界でそれを見かけたら人質側でも確実に笑い転げるな。


「取り敢えず、一応これは君に渡しておくよ」

「わかった」


 俺はデネから吸い取る君を受け取った。掃除機だから結構重いかと思っていたが意外と軽い。電源プラグはないから充電式間違いないだろう。


「さて、言うことは言ったし、これからこの書類を片付けることにするよ」

「今の片付けるって処理するであってるよな?」

「そうだけど、急にどうしたの?」

「いや、別に」


 ——お前が最初の片付けるが俺の思ったのと違うから確認を取っただけだ。


 これからデネも仕事に入るみたいだから、邪魔になる前に俺も帰るか。


「じゃあ、邪魔にならない内に俺は帰ることにする」

「うん、また好きな時に来なよ」

「遠慮なく来させてもらうよ」


 下にいたあの美男子は苦手だが、デネはいい相談相手になる。困った時に頼りになる奴だ。


「それじゃあ……」

「どうかした?」

「俺って、どうやって帰ればいいんだ?」


 考えてみれば、俺はあの女性が飛んでくれたのお陰でここに来れた。

 ここは下界でいう天界。雲が下に見えるから結構高いところというのはまず間違いない。

 落ちても下に水があれば生きれるかもしれないが、絶対に痛い。


「あ〜そんなことか〜、それならこれを使えば下界に楽に行けるよ」

「これって……」


 デネは俺にあの時の女性が持っていた通信機的なものを渡してきた。


「これがあれば下界や天界を行き来できるよ」

「それは便利だ」


 そして、あの時女性は通信機としても使っていた。

 通信ができて下界と天界を行き来できるとは便利なものだ。

 しかも、わかりやすいように下界や天界、通信と書かれたボタンがそれぞれある。


「そこの下界を押すと帰れるよ」

「ありがとな。それじゃあ帰らせてもらうよ」

「じゃあね〜」


 そう言って俺はここで下界のボタンを押した。

 すると、目の前が真っ白になっていく。この現象は恐らくテレポートだ。人間界にないようなものがあって、改めてこの世界は凄いと思った。


 周りが見えてくると、そこは俺が天界に行く前にいた場所……ではなく、見たことがない部屋だった。

 そして、目の前には……。


『片道 下界行 すぐに着君』


 と書かれた電光掲示板が一つと、そのそばに下に続いているであろう半透明のパイプ……すぐに着君がある。


「……マジかよ」


 ここでもすぐに着君かよ、と思いながら俺は、すぐに着君に近づいて行く。

 すぐに着君は高速の移動手段、ましてや今目の前にあるのは下向きのもの。ありえない速度が出てもおかしくない。


「やってやるか」


 覚悟を決めてすぐに着君に入る。ゆっくりと入って行く。ここで足を滑らしたらヤバいと思いながら入って行く。

 すると……。


 ズルッ


「……あ」


 足を滑らした。すぐに着君の微妙な曲がりの所でスルッと滑った。

 やっぱり、こういう場面ででもしもの話を思い浮かべるのは良くない。解説はフラグって言うくらいだしな。


「うわぁぁぁぁーー!!!」


 特大の悲鳴をあげながら、俺は落下速度とすぐに着君によって高速を超えた速度で下界に向かって落ちて行った。

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