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独身貴族はハーレムに屈しない  作者: シバトヨ
独身貴族は異世界に屈しない
6/79

6話

 朝食を食べ終えた俺とモニカは、今後の話に移っていく。と言っても、俺の中では既に決まっているのだが。

 問題は、彼女がドンドン話を進めていく為に、切り出すタイミングがない点だろう。

「じゃあ、服を買わないといけないですし、街に行かないとですね?」

 話を切り出すならここだろう。

「いや、町へは俺一人で大丈夫だ」

「ダメです」

「………………」

 俺の予想では、「へ? なに言ってんですか??」といった反応が返ってくると思っていたのだが……

「まさか、即座に却下されるとはな」

 半ば感心するように俺が述べれば、

(はじめ)さんの行動パターンなら、既にお見通しですからね! それよりも、」

 と、プクーっと頬を膨らませ始めるモニカ。膨らみきった頬は、風船を割ったよう瞬時に(しぼ)み、言葉で(まく)し立ててくる。

「あれだけ、男性の一人歩きが危険だと言ったのに! まだ足りないんですか!? もう一度説明しますか!?」

「話ならもう十分だ」

 来年は三十路だというのに、少女から再び説教を頂くのは、精神的に(こた)える。特殊な性癖ならば、それはご褒美となるのだろうが……俺はいたってノーマルなんだ。出来る限り、説教を受けたくはない。

「……そうですね。既に言葉ではダメな領域のようですね」

「………………」

 次は身体で解らせてやる。と、言いたげな目付きでこっちを見てくる。

「ヒィーヒィー言わせてあげますからねっ!」


 と。

 結局、モニカのいう通り、二人一緒に町に行くことに。

 喫茶店から移動した先は、緑が整えられた街だった。規則正しく街路樹が並んでいるが、車は一切走っていない。

 変わりに、ときどき馬や馬車が人を避けるように、あるいは人が道を譲りながら、通りすぎていくくらいなものだ。

「では一さん」

「……なんだ?」

 これからの様子が楽しみでしょうがない。と、歩きながら呟いていた彼女は、

「今からココに書いてある物を、買い揃えてきてください。全部、この通りの商店で買えますから」

 と、一枚のメモと数枚の紙幣を渡してくる。

 紙幣は日本のものと同じようなサイズ、色合いだが、描かれている人や草木が異なっている。幸い、金額と思われる数字の書かれている位置は同じだ。

 金額にして二万五千。通貨の単位は分からないが、学生がポーンと渡せる金額では無いはずだ。

「お釣りは返してくださいね?」

「もちろん、そのつもりだ」

 むしろ、払わせてしまうことに罪悪感が生まれる。財布の中身が使い物になるのであれば、彼女の世話になることはなかったと言えるだろう。

 仕方がない。このお使いを無事に終えたら、彼女とさようならだな。

「……待ち合わせはどうする?」

 待ち合わせる気など更々無いのに、そんなことを口にする。

「そうですね。……では、一時間後にあの時計台前に集合ということで」

 それだけ言い残し、彼女はフンフンと鼻唄を刻みながらベンチへと歩いていった。


 さて。

「異世界でのはじめてのおつかいか……」

 自分一人で何かを買ったのは、いつだっただろうか。

 頭の中だけを幼少の頃までタイムスリップさせながら、俺は近くの雑貨屋へと足を運んだ。

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