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独身貴族はハーレムに屈しない  作者: シバトヨ
独身貴族は異世界に屈しない
3/79

3話

 何故?

 何故モニカは、俺が異世界から拉致された事を知っているのだろうか?

「……悪いが、君が何を言っているのかが分からない」

 彼女の部屋に不法侵入している俺が、彼女を(うたぐ)るのもおかしな話だ。これ以上世話されるのも好きじゃない。

「そんなっ!? 空から男の子が降って来たら、異世界から召喚された勇者だった! ぐらい有名な展開なのにっ!?」

「………………は?」

 本当に彼女は何を言っているのだろうか?

「は? じゃないですよっ! いいですか?」

 間抜けな声を出した俺の真似をしてから、彼女はさらに続ける。

「確かに、空から降ってきたわけでもなければ、男の子というより中年オヤジですし、魔王を裁く勇者でなく荷物を捌く社会人な訳ですがっ! それでも異世界から来たのには、間違いないですよね?」

 色々と修正したい発言も合ったが、

「何を根拠に?」

 大筋で合っているため、話を進めることにした。

「根拠はそれです!」

 と、モニカは、俺のズボンをピンッと伸ばした人差し指で示してくる。たどっていけば、右ポケットにぶつかった。

「これが……どうかしたのか?」

 ポケットの中には、薄い長方形の携帯電話ーーいわゆるスマートフォンが入っている。

「この世界ーーノブリスって言うんですけど、ここには、そんな物は無いんですよっ!」

 説得力満点の根拠を提示されてしまった。




 長丁場になると思い、俺は丸太が剥き出しになっている床へと腰を下ろした。ただ、今度は正座ではなく胡座(あぐら)だ。

 彼女もベッドへと腰を下ろす。

 今更ながら。バスローブ姿のモニカは、あまりにも無防備過ぎる。隙間から色々と見えているが、それを隠すつもりがない。

「確かに……俺は地球って星の日本と言うところから、ここに拉致されてきた。その点で言えば、異世界の人間だと言えるし、それは認める」

 うんうんと、彼女は俺の発言を聴きながら、ゆっくりと頭を上下に振る。

「だが、君に迷惑をかけるつもりもない」

「え?」

 「なに言ってんの? コイツ??」みたいな目で見られても困る。君よりはマトモな日本語を使っている自負があるぞ?

 まぁ、なんらかの「トップ」なんだ。頭の良いモニカであれば、

「俺も、いい歳をした社会人なんだ。自分の事は、自分で何とかするさ」

 とでも言っておけば納得するだろう。


「甘いですっ!」


 が。俺の予想通りに行かず、彼女は言う。

「炭酸が抜けたコーラの如く甘いですっ!」

 言うほど甘いだろうか? 美味しくないのは認めるが。

「まず! 貴方は男性ですよねっ!?」

「あ、あぁ。見ての通り、オヤジだな」

 俺は両手を広げて肩を(すく)める。ジョークを放ったアメリカ人の気分だ。

「この世界でっ! いかにオヤジでもっ!! そんな薄い格好で出歩けばっ!!! 間違いなく襲われますよっ!!!?」

 語気を強めつつ、迫るように顔を寄せてくるモニカ。現在進行形で襲われている感じがするのは気のせいだろう。

 だが、

「カツアゲってやつか? だとすれば、一文無しの俺なら少し痛い目を見て終わりだろう」

「違いますよ! 強姦です!! 貞操の危機ですよっ!!!」

「………………」

 ゴウカン? テイソウノキキ??

「その顔は、まっっったく! 理解できていませんね?」

 あぁ。全然、理解できていない。

 俺が誰かを襲うかもしれない。ってことならば、まだ理解できる。もちろん、襲うつもりなど皆無だが。

「あのですね? (はじめ)さんの居た世界がどうだったのかは知りませんが、ここでは男性がかなぁ~~~り! 少ないんですよ」

 彼女は両手を懸命に広げて言うが……男女比が偏っていたとしても、俺には関係のある話だとは思えん。

「……その顔は、俺は無関係だ。って顔ですか?」

「よく分かるな」

 素直に感心してしまった。読心術の心得でもあるのだろうか。

「……いいでしょう。これだけ親切に教えているのにも関わらず、全然理解する気がないならーー」

 彼女はニヤリと口元を上げては、

「ーー外で朝ごはんでも食べましょうか」

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