1ー5
この日は、シーナの家に泊めて貰い、明日の朝に出発する事になり、その日の夜の夕食後はイーリルさんが魚介たっぷりのスープを作ってくれて、とても美味しかった。
食事を食べ終えた俺は、ある事に気付きシーナに聞いて見た。
「そう言えば、シーナ。これからずっと陸続きの旅になるけど大丈夫か?」
シーナは、「はっ!」と気付き旅は無理だと思い泣きそうになる。
「やっぱり人魚の私には無理だったんだ。」
「そうだな。それじゃぁ厳しいだろうな。人の姿になったりとか出来ない?」
シーナは顔を横に振り目に涙を浮かべる。
「んー、俺がシーナに魔法を掛けるとかは出来ないかな?」
「出来るっ!?」
シーナは涙を拭き笑顔になった。
「まだ出来ると決まってないよ。でも回復魔法の最上級が使えたし、出来る気がする。じゃー魔法掛けるからこっちに来てくれ。」
「わかった!マオお願いね。」
「よし!行くぞー。『人化の術』!」
すると、シーナの体が光だし人魚のシルエットが徐々に人間の姿に変わっていく。光が収まり成功したか確かめる。
「よし!これで成こぶはっっ!?ありがとうございます!」
「マオ見て!足が!ってきゃぁーー!!こっち見ないでっ!」
人魚であるシーナは、下半身に衣類などを身に付けていなかった。当然、人間の姿になってもそれは変わらず下半身丸出しの状態だった。
シーナは直ぐに部屋の奥に隠れてしまった。
まー狙ってやった事ではないが、ちゃんと謝っとこう。
「もうっ!マオのえっち!」
シーナはイーリルさんの洋服を借りて出てきた。顔がめっちゃ赤い。
「いやいや!今の不可抗力と言うもので」
「言い訳しない!」
「は、はい。ごめんなさい。」
シーナに怒られた。
「マオ、目を瞑って。」
ゔっ!やばい!これはビンタパーターンだ!どうしよう!
「早くして!」
「はい!・・・・」
俺は目を閉じビンタが来るのを待ち、顔に力が入る。だが来たのはビンタではなく、キスだった。
「マオのお陰で、人間の姿になれたから許してあげる!これで一緒に旅に行けるね!」
シーナの満面の笑みに俺は心を奪われ、この瞬間、俺は本気でシーナに恋したのだった。
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翌日、旅の準備を終えたシーナの荷物は中々の量だった。
「シーナ、それは流石に多すぎるんじゃないか?」
「だ、大丈夫です!女の子には色々必要な物が多いんです!」
流石に、森の中を行くのにこの量は多すぎる。
異世界系の定番!『アイテムボックス』の出番だ!と思いシーナに荷物を渡すように言う。
「シーナ、そっちの荷物貸して。」
「あっ!そっちは私の下着とかが入ってるからダメ!はっ!?まさか、私の下着を盗もうと!?」
なんかめっちゃ誤解された!
「ち、違うから!ちょっと『アイテムボックス』が使えるか試そうとしただけだしっ!」
俺は荷物を受け取り、『アイテムボックス』をイメージする。イメージは、○次元ポケットで入ってる物か分かるように、PCのフォルダーの様にしよう。
「『アイテムボックス』!よし!成功だ!」
俺はシーナの荷物を受け取り、『アイテムボックス』に入れ、イーリルさんに出発の挨拶をしに向かう。
「イーリルさん、お世話に成りました。シーナの事は任せて下さい。命に代えてでも守ります。」
「いえマオ様。もうマオ様も私の家族達同然です。シーナだけでなく、マオ様の命も大切にして下さい。それとこれを少ないですが。」
イーリルさんから嬉しい言葉を貰い、小さな袋を受け取る。中には金貨1枚と大銀貨5枚が入っていた。
「何から何まですみません。このお金は今度来た時にお返しいますので。」
「気にしないでください。いつか孫の顔を見せて貰えれば構いません。」
孫かーしばらくは旅をしたいから無理だが、子供が出来たら見せに来よう。
「お母さん!しばらくは旅をするから無理だから!」
シーナもそう思ってくれている様で、『しばらくは』無理だそうだ!
「では、行って来ます!」
俺とシーナは、人族の街ドールスに向かう為に『迷いの森』に足を踏み入れた。
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俺とシーナは、人族の街を目指し森の中を歩いている。
「ドールスの街は、海人族の集落から東の方角に有るってお母さんが言ってたから大丈夫!」
「そうか、方角が分かってるなら安心だな。」
俺とシーナは森の中を歩き、ふとある事に気付く。
「なぁシーナ、この木さっきも見なかったか?」
「そんな訳ないよ。だってずっと真っ直ぐ東に向かって歩いてるし・・」
そ、そうだよな!まさか同じ所を何回も通ってる訳ないよな!あはははは!
俺は木に目印の切り込みを入れ、歩き出す。
「おい!シーナこの木!さっき俺が傷を付けた木だ!俺達は同じ所をグルグル回ってるみたいだ。」