leere
息をするように、思い出す。
誰かを、思い出す。
それが誰なのか僕にはわからなかった。
ただひとつ云えることは、僕にとっては変わることのない――大切な人。
僕は彼に恐怖し、彼は僕を憎んでいる。
今後とも彼が僕に向き合うことはない。
僕が命尽きるまで愛そうとも、彼にとっては関係がないのだ。
毎日夢を見ようとも、街中で幻に惑わされようとも、思い出を手に取り涙しようとも――彼は僕の世界から消えたのだから。
逢いたい。
そして届けたい。
遍く紅空が悲しむような――この愛を。