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なにが起きているのかわかりません

 地下洞窟に踏みこんでしばらくすると、あたりは真っ暗闇に覆われた。


 光が届かない場所まで来たってことか。


 薄暗い場所に行ったことは何度もあるけど、なにも見えないくらい真っ暗なのははじめてだ。


 試練の間も真っ暗だったけど、魔王たちの姿ははっきり見えたからな。


 でも、ここではなにも見ることができない。正真正銘の真っ暗闇だ。


 はじめての経験に、ちょっとどきどきしてしまう。


「どきどきするのは、俺が精神的に未熟だから……だよな?」


 てことは、このどきどきがおさまったとき、俺は精神的に成長してるってわけか。


 さすがにそれだけで大魔法使いにはなれないだろうけど、成長するのは素直に嬉しい。


 一歩一歩着実に成長し、いつの日か大魔法使いになるのだ!


「そのためにも、生きてここを出ないとな!」


 何日かかるかはわからないけど、出口は必ずあるわけだしな。


 急がす焦らず、俺のペースで先に進むか。



 ボコッ!!



 通路を手探りで進んでいると、なにかが砕けた。


 指を擦ってみると、ざらざらとした感触がある。


「まさか手探り中に壁を壊しちまったのか?」


 再び手探りしてみると、壊した先は空洞になっているようだった。


 これって、べつの通路へのショートカットコースを作っちまったってことか?


「てか、そもそもこの洞窟の通路って一本道なのか?」


 迷路みたいな構造だとすると、ショートカットコースの先は行き止まりかもしれない。


 念のため、しばらくは最初の通路を歩いたほうがよさそうだな。


「ええっと……こっちがいま俺が作ったショートカットコースの入口だよな? てことは、こっちがさっきまで歩いてた通路……か? 進行方向はこっちであってるんだよな?」


 こうも暗いとどこになにがあるのかさっぱりだ。


 とりあえず歩き始めてみたけど、まったくべつの通路に迷いこんでいる可能性だってある。もしかすると入口に向かって歩いているかもしれないのだ。


 こんな調子でほんとにゴールできるのか? ちょっと不安になってきた。


 けど、不安を感じるのは俺が精神的に未熟な証拠だよな。


 つまり、まだまだ成長の余地があるってことだ。



 ――どんな状況でも落ち着いていられる精神力。


 ――不安や恐怖などを感じることのない鋼の心。



 ゴールすることで、俺はそれらを手にすることができるのだ!


 そして手にしたとき、俺の魔力は飛躍的な成長を遂げているのである!


「どうせなにも見えないんだ。考えたってしかたがないし、とにかく歩き続けるしかないよな!」


 行き止まりに迷いこむのを覚悟の上で、俺は通路を進んでいく。



 ばさばさっ! ――パァン!!



 えっ、なにいまの音……?


 さっきの破砕音とは明らかに異なる音に、俺は立ち止まってしまう。


 まず羽音っぽいのが聞こえて……で、そのあと砕け散る音が響いたよな?


 口のなかに砂利っぽいのが入ってるし、俺の顔面になにかがぶつかったってことか。


 まあ、魔物だろうな。


 ティコさんもこの洞窟には魔物が棲息してるって言ってたしな。


 道に迷うのは厄介だけど、魔物なら心配いらないな。顔に衝突されたところで、砂利(?)がつくだけだしさ。


 俺は気にせず歩を進めることにした。



 ばさばさっ! ――パァン!!



 ばさばさっ! ――パァン!!



 ばさばさっ! ――パァンパパァンパァンパンパンパンパパァン!!



 何事だよ!


 いやいやいや、さすがに魔物多すぎだろ! 魔物の巣にでも入っちまったのか?


 幻聴を疑うほどの破裂音だったしな。爆竹なわけないし、やっぱりいまのも魔物が砕ける音だよな。


 いったいどんな魔物なんだ? 羽音が聞こえたってことは、飛べるってことだよな。で、砕けるってことは……翼の生えた岩?


「そんな魔物いたっけな……」


 ランプがあればわかるんだけど……正体が謎のままって、すごくもどかしいな。


 集中して歩きたいのに、気になってしかたがない。


「……いや」


 考えてみれば、べつにランプがなくても確認はできるよな。服の近くで指を擦れば摩擦熱で火を起こせるわけだし。


「……でも、こういうのをいちいち気にしてちゃだめなんだよな」


 大魔法使いになるためには、どんな状況だろうと落ち着いていられる精神力を手に入れないといけないのだ。


 魔物の正体は気になるけど、ゴールしたあと町で魔物図鑑を買えばいいだけの話だもんな。


 それにこの修行は真っ暗なことに意味があるのだ。火を起こしたら修行にならない。不安を感じるためにも、摩擦熱で火を起こせるってことを忘れたいくらいだ。ついでに言うと、ジャンプすれば頭突きで洞窟から脱出できるってことも忘れたい。


 だとすると、いま俺がやるべきことはひとつ。


 ただひたすらに出口にたどりつくことだけを考えるのだ!



 ブチッ!! ブチッ!!



 なにかが千切れる音を聞きつつ、俺は黙々と歩き続けるのだった。



遅くなりました。

次話はなるべく早めに投稿できるよう頑張ります。

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