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南の封印が解けました

 新学期初日の朝。


「おはようございますっす師匠!」


 3年A組の教室でノワールさんと話していると、エファが教室に駆けこんできた。


「これ、お土産っす! ノワールさんの分もあるっすよ!」


 俺とノワールさんはエファから封筒を受け取る。


 封筒のなかには、5枚の画用紙が入っていた。


 クレヨンで描かれたこの人物は……俺か。


 画用紙には、魔王の頭蓋骨を粉砕する俺の絵が描かれていた。


「私の顔だわ」


 ノワールさんの封筒にも5枚の似顔絵が入っていた。


 エファの妹たちが描いてくれたんだろう。


「ありがとな。大事にするよ」


 封筒に入れっぱなしにするのもなんだし、部屋の壁にでも飾ろうかな。


 画鋲で刺すのは気が引けるし、次の休日にでも額縁を買いに行くとするか。


「ところで師匠、今日は予定とか入ってたりするっすか?」


 封筒をカバンのなかにしまっていると、エファがたずねてきた。


「特に予定はないよ」


 本音を言うと、授業をサボってでも遺跡に行きたいと思っている。


 魔王の封印が解けてしまったら、石碑が破壊されるかもしれないからな。


 けど、遺跡巡りはノワールさんと一緒じゃなきゃ意味がない。


 俺の都合でノワールさんに学校をサボらせるわけにはいかないため、遺跡巡りは長期休暇だけにすると決めたのだ。


 まあ、キュールさんが上手くやってくれれば、今週中にすべての石碑を解読できるんだけどな。


「だったら今日はたっぷり稽古をつけてほしいっす!!」


 と、エファが熱い口調で言った。


「わたし、実家でも毎日トレーニングしてたっすからね! 成長してるかどうか確かめてほしいっす!」

「もちろんだ。楽しみにしとくよ」


 弟子の成長を見守るのは師匠として喜ばしいことだ。


 俺が了承すると、エファは嬉しそうに笑うのだった。


「稽古のあとは一緒にご飯食べようねっ!」


 フェルミナさんがとなりの席にカバンを置いて話しかけてきた。


 どこに座るかは先着順だが、今回の昇級試験ではほとんどのクラスメイトが上級クラスを維持していた。


 そのため、席の場所は2年生の頃とほとんど変わっていないのだ。



「はーい。みんな席につきなさーい」



 フェルミナさんがエファから似顔絵をもらったところで、エリーナ先生が教室にやってきた。


「ほとんど見知った顔だけど、私のことを知らない子のために自己紹介をするわね! あなたたちの担任を務めるエリーナよ! それと……」


 エリーナ先生が廊下に視線を向けると、シャルムさんが教室にやってきた。


 壇上に立ったシャルムさんは、もじもじしながら俺たちの顔を見まわす。


「き、きみたちの副担任を務めるシャルムだ。よろしくお願いするのだよ」


 シャルムさんは、アイちゃんに誘われて正式な教員になったのだ。


 キュールさんも誘われたらしいけど、『僕は自由気ままに生きるのさ』と断ったらしい。


 俺がキュールさんにその話を聞かされたのは、昨日のことだ。


 エルシュタニアに戻った俺は、キュールさんに『地図から赤点が消えたんだけど、アッシュくんが倒したのかい?』と聞かれたのだ。


 そこで俺はキュールさんに魔王の話をしたあと、とあるお願いをした。


 次の遺跡巡りは3ヶ月後の予定だけど、その前に魔王が復活すれば石碑が壊されるかもしれないのだ。


 それだけはなんとしてでも避けたいため、キュールさんに石碑の文字を筆写してほしいと頼んだのである。


 キュールさんはちょうど冒険欲が溜まっていたらしく、快諾してくれたのだった。


 キュールさんは瞬間移動が使えるし、すでにどこかの遺跡を訪れているだろう。


 俺はキュールさんが戻ってくるのを楽しみにしつつ、授業の準備をするのであった。


     ◆


 キュールは最南端の遺跡を訪れていた。


 地下遺跡には蒸し暑い空気が漂っているが、魔法で涼風を纏っているキュールは汗一つかくことなく通路の最深部にたどりつく。


 通路と封印の間を隔てる壁――石碑には、びっしりと文字が刻まれている。


 その文字を、キュールは魔法を使ってノートに写していく。


「さて、あとはこれをノワールくんに渡すだけだね」


 びっしりと文字が記されたノートを閉じ、キュールはつぶやいた。


 事情は知らないが、ノワールは石碑を解読できるらしい。


 名前が同じなのはたまたまだと思っていたが、魔王を封じた魔法使いのノワールと学院にいるノワールには深い関係があるのかもしれない。


「このまま次の遺跡に向かってもいいけど……早く結果が知りたいし、ひとまず学院に戻ろうかな」


 そうしてキュールは瞬間移動のルーンを描き始めた、そのとき。



 どろどろどろどろどろどろどろどろ。



 いきなり石碑が真っ赤になり、どろどろと溶け出したのだ。


「熱……っ」


 涼風を纏っているというのに、肌が焼けるように熱くなった。


 空気が熱くなりすぎて、呼吸ができなくなってしまう。


 いますぐ遺跡を立ち去りたいが、キュールには確かめるべきことがある。


 キュールは、どろどろと溶ける石碑をじっと見つめた。


 石碑の向こうには空洞が広がっていて――



「ホッホッホ。魂の波動を感じると思えば、ニンゲンではないですか。私の復活に立ち会えるなんて、なんと幸運なニンゲンなのでしょう。あなたの魂を喰らい、その運を私のものにしてあげましょう!」



 そこから、炎を纏った鳥が現れたのだった。

評価、感想、ブックマークたいへん励みになります。

ちょっと忙しくなりまして、3週間ほど更新ペースが遅れそうです。

週に2話は投稿できるよう頑張ります。


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