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一流の薬師です

 ラムニャールにはのどかな雰囲気が漂っていた。

 都会とは呼べないけど、田舎ってほどでもない静かな町だ。

 まだ朝早いから人気はないけど、住宅数からして人口はそれなりに多そうだな。


「さて、さっそくコロンさんを見つけないとな」


 コロンさんは世界的な有名人だ。

 俺はコロンさんの顔を知らないけど、町のひとなら住所を知っているだろう。


 俺は道なりに歩きつつ、町人を探すことにした。

 路地裏に差しかかったところで、第一町人を発見する。


 あれは……酒場の看板娘かな?

 酒場っぽい看板がぶら下がった店の前に、若い女性がいたのだ。

 酒樽の上に座り、ぼんやりと空を眺めている。

 なんだかミステリアスなひとだ。


「すみませーん。ちょっとおたずねしたいことがあるんですけどー」


 声をかけながら近づくと、看板娘さんはびくっと震えた。


「な、なにか用かしら?」


 酒樽から立ち上がり、おどおどしながらたずねてくる。


「この町に勇者一行のコロンさんっていますよね。どこに住んでるか知ってますか?」

「し、知ってるわ……」


 おおっ、さすが有名人だ!

 さっそく手がかりが見つかり、俺は内心でガッツポーズをする。


「どこに住んでるか教えてもらえると助かります」

「な、なぜ住所を知りたいのかしら?」

「フィリップ学院長の紹介で、コロンさんに会いに来たんです。本人に確認してもらえればわかると思いますけど……」


 俺の言葉に、看板娘さんは納得顔をした。


「あ、ああ……あなたがアッシュくんなのね」


 俺のことを知ってるってことは、コロンさんの家族かな?

 勇者一行の最古参ってことは80歳くらいだろうし、コロンさんにこれくらいの歳の孫がいてもおかしくない。

 きっと俺を出迎えるように、コロンさんに頼まれたのだ。



「はじめまして、コロンです」

「若すぎません!?」



 まさかのご本人だった。

 化粧で若作りしてるとか、そういう次元じゃないよな、これ……。

 髪のツヤとか肌のハリとか、どこからどう見ても20代だ。


「よ、よく言われるわ。コロンは変わらないな、って」


 変わらないにもほどがあると思うんですけど。

 昔のコロンさんを知ってるわけじゃないけど、本当にまったく変わってないんだろうな。


「すみません。想像より二世代くらい若かったのでびっくりしてしまいました。てっきりお孫さんかと……」

「わ、わたしは独身だから孫はいないわ。若く見えるのは、薬のせいよ……。わ、わたしは自作の薬を試飲するのが趣味なの」

「コロンさんは一流の薬師なんですよね」


 それなら若さを保つ薬を調合できてもおかしくは……ないのかな?

 そんな薬があるなら注文が殺到すると思うけど。

 まあ趣味って言ってたし、薬で儲けるつもりはないんだろう。


「い、一流とか言われると照れるわ……」


 コロンさんは真っ白な肌を真っ赤にする。


「わ、わたしはただ、いろいろな薬草と、いろいろな闇魔法を組みあわせて、適当に薬を作ってるだけだから……。そ、そしたら、まわりのひとたちがすごいすごいって褒めてきて……」


 コロンさんは本当に遊び感覚で薬を調合してるんだろう。

 それですごい薬を作れるんだから、コロンさんの薬師としてのセンスは抜群だ。


「そ、それで、適当に作った薬を飲んでみたら、老けないようになっちゃったわ」


 偶然の産物だから、同じ薬は作ろうにも作れないってことか。


「と、ところで、アッシュくんは魔力がない……のよね?」


 さっそく本題に入り、俺はすぐにうなずいた。


「フィリップ学院長に『コロンさんならなんとかできるかもしれない』って言われて、会いに来たんです」

「そ、そうね。魔力なら、薬でなんとかできるかもしれないわ」

「ほんとですか!?」

「ひぃっ」


 コロンさんはびくっと震えた。

 きっと大きな物音とか知らないひとがすごく苦手なんだろう。

 フィリップ学院長が言ってた『気難しい』って、こういうことだったのか。


「く、詳しくは家のなかで話すわ。ここがわたしの家だから……」


 コロンさんは酒場を経営しているらしい。

 薬として扱われている酒もあるし、薬師のコロンさんにぴったりの仕事だな。

 ……まあ、騒音と人見知りが激しいひとが酒場を経営してるってのもどうかと思うけど、それはそれだ。


「お邪魔します」


 コロンさんのあとに続き、俺は酒の香りが染みついた店内に入るのだった。


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次話もなるべく早くお届けできるよう頑張ります。

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