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規格外の強さです

活動報告のほうで募集しました第1章穴埋めエピソード、第3話はフェルミナさんの話です。

時系列的には《さっそく昇級試験です》に繋がっています。

 物心ついた頃から、フェルミナは強くなりたいと思っていた。


 なぜならフェルミナの父親が、魔法騎士団に所属しているからだ。


 人々のために命懸けで魔物と戦う父を見て、フェルミナは大切なひとたちを魔物から守れるように誰よりも強くなりたいと思うようになったのである。


 そんな夢を叶えるために努力に努力を重ねたフェルミナは、世界最高峰の教育機関である王立エルシュタット魔法学院への進学を決意した。



 そうして迎えた入学試験――。

 魔力測定と筆記試験を余裕でパスしたフェルミナは、実技試験に挑んでいた。


 実技試験は2ブロック制のトーナメント戦だ。

 技術やスタミナ、潜在力などを総合的に判断し、合否が決まるらしい。

 もちろん優勝するに越したことはないし、各ブロックの優勝者は特待生としての入学が確約される。


 そしてフェルミナは、Aブロックの決勝戦に進出していた。


「Bブロックの話聞いた? 決勝戦なのに瞬殺だったんだって」

「えっ、もう終わっちゃったの!?」

「うん。ノワールって娘が優勝したって」

「その娘すごいね……。たしか今年は10年ぶりに推薦で入学が決まった娘もいるんだよね?」

「推薦って、フィリップ学院長が実力を認めたってことでしょ? どんな娘なんだろ……」

「気になるよね……。それにあの赤髪の娘もここまで圧勝だったし、今年の1年生はすごそうだね」


 第三闘技場の客席から、そんな会話が聞こえてくる。

 どうやらBブロックの優勝者は、圧倒的な強さを持っているらしい。


(ノワールちゃんかぁ。その娘とも戦ってみたいな)

 

 強くなるための近道は、強者と戦うことである。


(このひとも強いといいな)


 フェルミナは決勝戦の対戦相手を見る。

 対戦相手の少年は、疲れている様子だった。

 決勝の舞台に上がるまでに、かなりの魔力を消耗したのだろう。


「それではAブロック決勝戦――スタートよ!!」


 試験監督の声が響いた直後、フェルミナは《火焔弾ファイアボール》のルーンを完成させた。

 フェルミナの頭上に直径4メートルの火の玉が出現し、会場が二重の意味で熱気に包まれる。


「な、なにあのサイズ! あんなの見たことないわ!」

「ていうかルーン描くの早すぎじゃない!?」

「それに見て! あの娘、まったく疲れを見せないわ!」

「連戦でかなりの魔力を消耗してるはずなのに……まさに魔力のバケモノだな」

「技術もスタミナも1年生のレベルじゃないぜ……」


「そ、そんなの見かけ倒しに決まってる!」


 対戦相手が悔しげに叫び、魔法杖ウィザーズロッドを振るった。

 風魔法《風槍トルネード》が火の玉に放たれる。

 だが残り魔力が少ないからか、トルネードの直撃を受けても火の玉はびくともしなかった。


「そんなそよ風じゃ消せないよ!」


 フェルミナは魔法杖を振った。

 巨大な火の玉が隕石の如く落下し、対戦相手を押し潰す。

 火の玉が消滅したとき、対戦相手は目をまわして気絶していた。


「試合終了! Aブロック優勝はフェルミナ・ハーミッシュ!」


 そうして決勝戦でも圧勝したフェルミナは、特待生として合格を果たしたのだった。


     ◆


 二年生になったフェルミナには、ある悩みがあった。


「今日はいよいよ昇級試験かー……緊張するなぁ」

「筆記試験はいいとして、問題は実技ね」

「私、フェルミナさんとだけは戦いたくないよ……」

「私も嫌よ。そのときは運が悪かったと思って諦めるしかないわね……」


 昇級試験当日の朝。

 食堂で焼き肉を食べていると、どこからかそんな会話が聞こえてきた。


 強くなりすぎたフェルミナは、昇級試験の場で勝負するのを嫌がられるようになったのだ。

 強敵と戦えば成長できるのに、どうして戦いを避けたがるのかがわからない。


 フェルミナはため息をつき、筆記試験を受けるべく教室へと向かった。


     ◆


 筆記試験が終わったあと――。


「ねえ、ノワちゃん。昇級試験が終わったら、あたしと戦わないっ?」


 フェルミナはノワールに勝負を挑んだ。


「いつも言ってるわ。私は、そういうことに興味がないわ」

「そっかぁ。気が変わったらいつでも言ってね!」

「不変よ」


 ノワールに断られたフェルミナは、今度はエファに話しかける。


「ねえ、エファちゃん。昇級試験が終わったら、あたしと戦わないっ?」

「ごめんなさいっす。わたしは、そういうことに興味ないんすよ」

「そっかぁ……」


 せっかく特待生ノワール推薦入学者エファが同じクラスにいるのに、フェルミナは一度も対戦したことがなかった。

 ちなみにほかのクラスメイトとは練習試合をしたことがあり、フェルミナはそのすべてに勝利している。


(このクラスであたしより強いかもしれないのはノワちゃんとエファちゃんだけだし、戦ってみたいんだけどなぁ)


 フェルミナががっかりしていると、手元に赤いくじが現れた。

 赤くじということは、実技試験は真剣勝負だ。

 対戦相手は――


「アッシュ・アークヴァルドくん、か……。あれ? たしかこのひとって……」


 フェルミナは教壇に立つエリーナのもとへ向かう。


「エリーナ先生。アッシュくんって、たしか編入組でしたよね?」

「そうよ」

「アッシュくんって、強いですか?」

「試験内容は外部にもらしちゃだめだから、詳しくは教えられないのだけれど……とにかく、彼はすごかったわ。あんな規格外な子、いままで見たことないわ」

「規格外っ!?」


 フェルミナはぱあっと顔を明るくさせた。


(規格外って、すごく強いってことだよね! これはもう会いに行くしかないよ!)


 フェルミナは教室を飛び出し、二年F組へと走った。

 そして二年F組のドアの前で深呼吸をする。


(どうかアッシュくんがめちゃくちゃ強くて戦うのが大好きなひとでありますように)


 そう祈りながら、フェルミナは思いきりドアを開いたのだった。


「アッシュくん、いるッ!?」


評価、感想、ブックマーク励みになります。

次話から第2章に突入します。

次話は明日か、遅くとも明後日には投稿できると思います。

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