ハーレム力が試されます
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ご馳走を食べたあと。
俺は五つ子ちゃんに誘われて、庭で遊んでいた。
同じ顔をした五つ子は、エファにもらった土産のリボンをさっそく身につけている。
そんな五つ子たちとしている遊びというのは――
「ちょっと、これはどーゆうことなのっ?」
「なっとくできるせつめーをしなさいよね!」
「こんなぶすのどこがいいのっ?」
「ちょっと、ぶすってだれのことなの!」
「あなたたちのことよ! おなじような顔しちゃってさ!」
――おままごとだ。
どの世界でも、子どもって同じような遊びをするんだな。
まあ『五股かけていた男(俺)のもとに恋人たち(五つ子)が押しかけてくる』という修羅場な設定はどうかと思うけどね。
この娘たちが楽しめてるなら、それでいいんだけどな。
ちなみにエファはリビングで親子水入らずの時間を過ごしている。
そしてフェルミナさんは、来年受験を控えたシルシィちゃんに勉強を教えてやっている。
俺は昼食を食べたあと、さっそく魔力の有無を確かめようとした。
だが遊び盛りの五つ子ちゃんに捕まり、おままごとをすることになったのだった。
「お、落ち着いてください、みなさん。法的に考えてアッシュさんが誰の恋人なのか言いますから、まずは落ち着いてください……」
俺と同じくおままごとに強制参加させられた三女のリルちゃん(弁護士役)が、おどおどしながら仲裁に入る。
「はい、おちつきました! おちつきましたよ!」
「さあ、はやく言いなさい!」
「いったい、だれがこいびとなのっ?」
「ほーてきに言いなさいよ!」
「こたえによっては、おこるわよ!」
「え、ええっと……」
リルちゃんは涙目だ。
すごくかわいそうな役回りだな……。
「(助けてください)」
リルちゃんが小声で助けを求めてきた。
助けてあげたいけど、誰を選んでも待っているのは修羅場だしな……。
修羅場を避けるには、俺は五つ子ちゃん全員を幸せにしなくちゃいけないってことだ。
「(アッシュは全員のものです、って言ってやってくれよ)」
「(そ、そんなので納得しますかね?)」
「(まだ五歳だし、納得してくれるんじゃないか?)」
「(い、言ってみます)」
リルちゃんは、きりっとした顔で妹たちと向きあう。
「ほ、法的に考えて、アッシュさんは全員のものです!」
五つ子たちは、はっと目を見開いた。
「それは、よそーがいだったわ!」
「だけど、なっとくできたわ!」
「アッシュおにーちゃんは、みんなのものなのね!」
「ほーてきにかんがえて、そうなるわ!」
「ごとーぶんしましょ、ごとーぶん」
おい、いますげえ怖い台詞が聞こえたぞ!?
五つ子たちは「わぁーっ!」と叫び、俺に襲いかかる。
俺は「うわあああ」と言いつつ背中から倒れてあげる。
五つ子たちは手をチョップの形にすると、
「みぎうでは、わたしのものよ!」
「ひだりあしは、もらったわ!」
「あたまちょーだい、あたま!」
「あーっ! わたしもあたまほしーのに! ほしーのにぃ!」
「じゃー、はんぶんこしよっ」
「うんっ!」
「えと、えと……じゃあ、わたしはひだりうでもーらいっ」
とか言いながら、俺の身体にどすどすとチョップする。
「な、なんかすみません……」
申し訳なさそうな顔をするリルちゃんに、俺は『気にするな』とアイコンタクトを送るのだった。
◆
その日の夕方。
「そろそろお風呂の時間っすよー」
五つ子たちと遊んでいると、エファが庭にやってきた。
「えーっ、もっとあそびたいよー!」
リーダー格の娘の言葉に、ほかの四人もうんうんうなずく。
「わがまま言う娘にはおしおきが必要っすねぇ」
エファはにやぁと笑い、両手をわきわき動かす。
「いやー! おねーちゃんのおしおき、いやー!」
「くすぐったいの、だめなのー!」
「エファおねーちゃんってば、ないても、さけんでも、くすぐるのやめてくれないのー!」
「わたしはあんまりいやじゃないけど、ひとりだけおしおきはいやー!」
「わたしも、いやー!」
五つ子ちゃんは家のなかに駆けこんでいく。
「リルも一緒に入るっすよ。あとがつかえてるっすからね」
「う、うん。わかった。あの……妹たちと遊んでくれて、ありがとうございました」
リルちゃんはぺこりと俺に頭を下げ、家のなかに入っていった。
……さて。
「いよいよだな」
俺はスッと懐から魔法杖を取りだした。
すげえ! なんかもう、これだけで魔法使いっぽい!
「魔法を使うんすか?」
妹たちを見送ったエファがたずねてくる。
俺はうなずき、
「このあたりに広場とかない?」
俺はあらゆる系統のルーンをすべて記憶しているが、実際に魔法杖でルーンを描いたことはない。
ルーンをミスって危ない魔法を使ってしまったら大変だ。
「だったら打ってつけの場所があるっすよ。わたしも昔はそこで魔法の練習をしてたっす」
「なら、そこに行ってみようぜ」
俺はエファに連れられて、町の外へと向かうのだった。
次話もなるべく早くお届けできるよう頑張ります。




