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飛空艇です

評価、感想、ブックマークありがとうございます。

 三連休初日の朝。


「さっすが師匠! 早いっすね!」


 集合場所の校門前に立っていると、エファが駆け寄ってきた。


「ちょっと早く起きすぎてな」


 待ち合わせ時間まで一時間あるし、エファも来るの早すぎるけどな。

 きっと俺を待たせちゃいけないと思って、早起きしてくれたんだろう。

 本当にエファは良い子だな。

 まあそれはさておき、


「荷物多くない?」


 エファは大きなリュックを背負っていた。

 二泊三日の旅行にしては大荷物だ。

 うしろにひっくり返らないか、心配になるサイズである。


「これはお土産っす」

「土産?」

「うちは田舎っすからね。こっちで流行ってるおもちゃとか服を買って帰ったら、妹たちが喜ぶんすよ」


 エファは幸せそうな顔で家族の話をする。

 本当に家族のことが大好きなんだな。


「ところでフェルミナさんはまだ来てないんすか?」

「ああ。まだだな」

「もしかしたら朝っぱらから焼き肉大盛り食べてるかもしれないっすね」

「いくらフェルミナさんでも、旅行直前に焼き肉大盛りは食べないだろ」


 冗談めいた口調のエファに、俺は笑って返した。



「ごめんごめん! 焼き肉大盛り食べてたらギリギリになっちゃった!」


 フェルミナさんがそんな台詞とともに現れたのは、一時間後のことだった。


     ◆


「おおーっ。かっこいいな!」


 飛空艇乗り場にて、俺のテンションは高まっていた。


 空を飛んでいるところは見たことがあるけど、こんなに間近で飛空艇を見るのははじめてだ。


 船っぽい見た目の飛空艇は、3000人は余裕で乗れそうなくらい巨大だ。

 上空に浮いているけど、それでも迫力満点だった。


「魔力回路って見せてもらえるかな?」


 俺はエファにたずねる。


「動力源のある心臓部は関係者以外立入禁止じゃないっすかね」

「だよなぁ……」


 魔力回路は飛空艇の動力源だ。

 そこに魔力を流すことで、大空を飛ぶことができるのだ。


 魔王が生きていた頃は、人体に魔力回路を埋めこんで人工的に強力な魔法使いを造る研究がされていたと本に書いてあった。


 平和になったいまでは人体実験は禁じられているけど、俺の身体に魔力回路を埋めこみ、そこに魔力を注いでもらえれば、俺は魔法を使えるようになるのだ!


 ……まあ俺は自分の力で魔法使いになりたいので、『改造人間計画』はすぐに忘れることにしたんだけどな。


「そろそろ搭乗時間だよっ!」


 フェルミナさんが言った。

 飛空艇からスポットライトが降りそそぎ、俺たちを包みこむ。

 俺は転移魔法テレポートの組みこまれた搭乗券を握りしめる。



 次の瞬間、景色が一変した。



 一瞬にして、搭乗券を持っていた人間が飛空艇の客室へと転送されたのだ。


「転移魔法ってはじめて体験したけどすごいなっ!」


 まるで魔法使いになった気分だ!


「アッシュくん、なんだか子どもみたいでかわいいねっ」

「そんなに転移魔法が好きなら、いつでも使ってあげるっすよ! まあ短距離移動にしか使えないっすけどね」


 エファとフェルミナさんも同じ客室に飛ばされていた。

 急な予約だったため人数分の部屋が取れず、三人一部屋になったのだ。

 元々一人部屋なので、ベッドもひとつしかない。


 飛空艇がペニロパという町に着くのは明日の朝だ。

 そこからは列車を乗り継いでネムネシアまで移動する予定だ。

 とにかく今夜は三人でこの部屋に泊まるのだ。


「ほんとに俺と同じ部屋でいいの?」


 俺たちは仲が良いけど、それとこれとは話がべつだ。

 俺は女の子と泊まることに抵抗はないけど、ふたりは違うかもしれない。


「問題ないっすよ!」

「あたしも平気かな。あっ、でも同じベッドで寝るのはちょっと恥ずかしいかも」


「じゃあわたしと師匠がベッドで寝るとして、フェルミナさんは床っすね」


「それはおかしくないかな!?」

「ならわたしと師匠は床で寝るっす」

「それだと罪悪感で眠れないよっ!」

「もぅ。フェルミナさんはどうしたいんすか?」


 エファはわがままな妹を前にした姉みたいな態度でたずねる。


「俺が床で寝て、ふたりがベッドで寝ればいいんじゃないの?」

「師匠を床で眠らせる弟子がどこの世界にいるんすか」


 エファは真顔で語る。

 俺のことを師匠だと慕ってくれるのは嬉しいけど、べつにそこまで師弟関係を意識しなくてもいいのにな。


「じゃ、じゃあ、あたしとエファちゃんが床で寝て、アッシュくんはベッドで寝る……ってことでいいかな?」

「それでいいっすよ」

「いや、だめだろ」


 それだと俺の罪悪感が半端ない。


「なら、やっぱり三人で一緒のベッドに寝るしかないっすね」

「……もう、それでいいかな」


 ちょっと話しただけなのに、フェルミナさんはへとへとになってしまっていた。


次話もなるべく早くお届けできるよう頑張ります。

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