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新しいクラスメイトです

現在週間6位です!

評価、感想、ブックマークありがとうございます!


 昇級試験結果発表のあと。

 上級クラスは東塔三階の端っこにあると聞き、俺はそちらへ向かっていた。


 今回の昇級試験で下級から一気に上級へと成り上がったのは俺だけらしい。

 せっかく仲良くなれたクラスメイトと別れることになり、俺は寂しい気持ちになっていた。


「おおっ、アッシュくん!」


 二年A組の扉を開けた瞬間、めっちゃでかい声に出迎えられた。

 フェルミナさんだ。


「上級クラスを維持できたんだな、フェルミナさん」


 下級クラスの俺に負けたから、てっきり中級クラスに落ちたと思った。


「ほら、こないだ言ったでしょ? あたしには二つの自慢があるんだよっ」


 二つの自慢って、食堂で言ってたあれか。


「一つは『いままで負けたことがない』だったよな」

「うんっ。まあ、アッシュくんに負けちゃったんだけどね」


 もちろん恨みっこなしって約束だから気にしなくていいけどね、とフェルミナさんは笑って言った。


「それで、あと一つってのは?」

「あたし、賢いのですよ!」


 なるほどね。

 要するに実技試験の結果を、筆記試験で補ったってわけか。


「ちなみに92点だよっ! アッシュくんはどうだった?」

「100点だよ」

「100点!? やるじゃんアッシュくん! これはもうライバル決定だね! 次は負けないんだから!」


 ライバル!

 なんていい響きなんだ……!

 お互いに切磋琢磨して、ともに高みを目指す存在――。

 フェルミナさんとなら、俺はさらなる高みに行けそうだ。


 ……まあ、さらなる高みって言っても、ほかのひとにとってはスタートラインなんだけどね。


「もちろん実技でも負けないよっ。もっともっと特訓して、アッシュくんに勝てるようになるんだから!」


 フェルミナさんはぐっと拳を握り、やる気を滾らせる。


 特訓か……。

 上級クラスの魔法使いと特訓すれば、魔力を手に入れるコツとかを学べるかもしれないな。


「俺もその特訓につきあってもいいかな?」

「うん、いいよっ! アッシュくんと勝負できて、あたしの魔力は一気に上がったからね! アッシュくんと特訓できれば、もっともっと強くなれるよ!」


 魔力と精神力は密接に関係している。

 フェルミナさんは圧倒的な強者だった俺に立ち向かったことで精神力を鍛えることに成功し、魔力が上がったんだろう。


 てことは、同じように圧倒的に強い相手と戦うことができれば、俺にも魔力は宿るかもしれないってことか。


 ……けどなぁ。

 一応《闇の帝王ダーク・ロード》が世界最強ってことになってたんだよな?

 あいつより強い奴って、この世に存在するのかな?


 ……なんか、めちゃくちゃいそうな気がするな。

 だって、あいつワンパンで死んじまったしさ。

 あれが世界最強の魔物だったなんて、いまでも信じられない。


 暇なときにでも世界を巡って、俺より強い奴を探しにいくのもいいかもしれないな。


「あ、そうだ! 連絡先を交換しよっか?」


 そう言って、フェルミナさんはポケットから携帯電話を取りだした。


「はい、触って! あと、アッシュくんの携帯にも触らせて?」


 携帯に触れて魔力を流しこむことで連絡先を登録し、いつでも会話ができるようになるのだ。


「ごめん。俺、携帯持ってないんだ」

「あらら、残念っ。アッシュくんと電話したかったんだけどなぁ。それにしても持ってないって、いまどき珍しいね」

「俺もほしいとは思ってるんだけどな」


 お金ならある。

 世界を救った報酬という名の生活費を、フィリップ学院長に毎月もらっているのだ。

 だが、俺には魔力がない。

 そして携帯電話は、魔力がないと起動させることすらできないのである。


「携帯は大魔法使いになったら買うよ」

「携帯ってそんなに特別なものだっけ!? うわぁ、中学校の入学祝いに買ってもらったのがなんか恥ずかしいよ……」


 恥ずかしそうに顔を赤らめるフェルミナさん。


「おっ、なんだなんだ? 連絡先交換してるのか?」

「ほんとにっ? 私も交換したーい!」


 クラスメイトが集まってくる。

 そして、新たなクラスメイトとの親睦を深めるため、連絡先の交換会が開かれた。

 携帯電話を持っていない俺は疎外感を抱き、その輪のなかからそっと離れる。


 ……あれは。

 教室の隅っこに見知った人物を見つけ、俺はそっちへ向かった。


「ノワールさんも上級を維持できたんだな」


 窓際最後尾の席に座っていたノワールさんに話しかける。


「……誰?」

「アッシュだよ。実技試験のとき、ニーナさんのとなりに座ってただろ?」

「……あの娘を焚きつけたひと」


 焚きつけたというか、奮い立たせたんだけどね。


「そう、そのひとだよ」

「そのひとが、私になんの用?」

「ちょっと話をしたいと思って。ノワールさんは氷系統の魔法が得意なんだよな?」

「得意というわけではないわ」

「ほかの系統のほうが得意だったりするのか?」


「ほかの系統は苦手よ」

「じゃあ、やっぱり氷系統が得意なんじゃないのか?」

「得意というわけではないわ」


 うーん……。よくわからないひとだな。

 まあ、得意不得意は置いといて、だ。

 ノワールさんが優秀な魔法使いってことに変わりはない。


「ノワールさんに質問なんだけど、魔法を使うコツってある?」

「ないわ」

「そう言わず、なんでもいいから教えてくれよ。たとえば……そう、日課とかでもいいからさ」


 自画自賛になるが、『日課』ってのはいい質問だと思った。

 上級クラスのみんなが常日頃からやっていることをまねすれば、俺にも魔力が宿るかもしれないのだ。


「しいて言えば、『外カリッ、中もふっ♪ もっちりもちもちほっぺがとろける夢のめろめろメロンパン』を食べることよ」

「なるほど、勉強になるよ。さっそく今日から食べる――」


「嘘よ」


「いや、でも食べるって言って――」


「嘘よ」


 ノワールさんは頑なに『嘘よ』と連呼する。

 そういえば、ノワールさんはメロンパンのために上級クラスを維持してるんだったな。


「わかった。食べるのはやめておくよ」


 今日のところは、だけど。

 べつに一日一個しか取り扱ってないわけでもないだろうし、そのうち食べてみるつもりだ。


「話のわかるひとは嫌いではないわ」


 どことなく上機嫌になるノワールさんだった。



次話もなるべく早くお届けできるよう頑張ります!

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