結果発表です
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昇級試験から一週間が過ぎた。
その日の朝、クラスメイトたちはそわそわしながら担任が来るのを待っていた。
「あたし、また下級クラスかなぁ」
ニーナさんがため息まじりに話しかけてくる。
このあと、昇級試験の結果が発表されることになっているのだ。
「結果はともかく、ニーナさんは頑張ってただろ? 次はいけるって!」
ニーナさんはうっすらと笑う。
「ありがと。けっきょくノワールさんには瞬殺されちゃったけど、あたしが頑張れたのはアッシュくんのおかげだよっ。……ところで、アッシュくんは筆記試験どうだった?」
「ちゃんと解けたよ」
「だったら上級クラスになれると思うよ! 最低でも中級クラス入りは間違いないよ! だってあのフェルミナさんに勝ったんだもん!」
ニーナさんが興奮した様子で語る。
「フェルミナさんに勝てたのも嬉しいけど、なにより火焔式魔神を見ることができて楽しかったかな」
火焔弾もかっこよかったが、それ以上に火焔式魔神のかっこよさは抜群だった。
あれぞまさに魔法って感じだ。
俺もいつか、ああいう魔法を連発できるようになりたいものだ。
「火焔式魔神を使えるフェルミナさんもめちゃくちゃすごいけど、それに勝っちゃうアッシュくんはもっとすごいよ!」
「そうか? 俺は、フェルミナさんのほうがすごいと思うけど……」
俺はフェルミナさんとの試合に勝ったけど、魔法はまったく使ってない。
俺が勝ったのは身体能力のおかげだ。
みんなは俺の技を魔法だと思っているけど、実際はやることなすことすべて身体能力によるものなのだ。
この学院は優秀な魔法使いの養成施設なわけだし、本当に評価されるべきなのはフェルミナさんのほうだと思う。
「アッシュくんの魔法だってすごいよ! ほら、こないだ体育の授業でやってたあれ!」
「あれって?」
「瞬間移動だよっ!」
ニーナさんは『いまでも信じられない』といった口調で言う。
「二年生で瞬間移動が使えるひとなんてどの学校にもいないよ! 先生も『まさかシャトルランで瞬間移動を使うとは思わなかった』っていろんな意味でびっくりしてたでしょ!」
「ああ、あれね……」
魔力は精神力を鍛えることで増幅するため、『自分を追いこんで精神力を鍛える』という理由から、授業でシャトルランをすることになったのだ。
もちろん俺はまじめにシャトルランに取り組んだ。
だけど俺は飛空艇でも一日以上かかる目的地まで、数時間でたどりつける脚力を持っている。
俺がまじめに走ると、傍目には瞬間移動を使ったように見えるのだ。
「あのあと、先生に注意されたんだよ。『瞬間移動はすごいけど、それだと授業の意味がない』って」
ニーナさんは苦笑する。
「たしかに意味はないけど、アッシュくんはすでに充分すぎる魔力を持ってるでしょ? これ以上精神力を鍛えても、たぶん魔力は上がらないと思うよ」
「……えっ」
マジで?
俺、これ以上魔力上がらないの?
それって、俺に魔力は宿らないってことになるんだけど……。
……ま、まあでも、考えてみればちょっとやそっとの運動じゃ精神力は鍛えられないよな。
なにせ俺は小さい頃から鍛錬を積み続けてきたんだからさ。
そうなると、精神力を鍛える以外の方法を探したほうがいいかもしれないな。
うん。それに気づけただけでもこの学院に入学した意味はあったな。
「あ、あれ? あたし、なんかひどいこと言っちゃった?」
黙りこんでいた俺を見て、ニーナさんがおろおろする。
「そんなことないよっ! ニーナさんのおかげで、俺は夢に一歩近づけたからな!」
ニーナさんの言葉がなければ、俺は死ぬまでシャトルランをしていたかもしれない。
「そ、そう? よくわかんないけど、どういたしまして」
と、ニーナさんが言ったところで担任がやってきた。
机の上に書類を置き、
「みんな、おはよう。さっそくだが、昇級試験の結果を発表するぞ。出席番号順に取りにきてくれ。まずはアッシュ」
ついにきたか……。
俺は緊張しつつ、書類をもらって席につく。
そして二つ下りにされた書類を開き、結果をたしかめる。
ええと……。
筆記試験は100点。
実技試験はA判定。
結果は二年A組――
「――上級クラスだっ」
嬉しさのあまり、思わず声に出してしまった。
だけど上級クラスになれたこと以上に、クラスのみんなが『おめでとうアッシュ!』と祝福してくれたことのほうが嬉しかった。
「おめでとうアッシュくんっ! アッシュくんが将来有名になったら、『あのひとはあたしの友達なんだよ!』って自慢していい?」
ニーナさんが自分のことのように喜んでくれている。
みんなは俺のことを魔法使いだと思いこんでいるけど、実際は武闘家だ。
武闘家になったおかげで世界の危機を救えたっぽいし、魔法学院に入学できたし、上級クラスになることもできた。
だけど、いつまでも武闘家のままでいるつもりはない。
俺の現世での夢は『魔法使いになる』。それだけだ。
自他共に認める魔法使いになるためにも、上級クラスで魔力獲得の方法を見つけないといけないな。
今回の話で第1章の前半部分は終了となります。
後半は書きたいことが決まっているので、途中でぶれることなく書き切りたいと思います。