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ばらばら思考交換/薔薇薔薇嗜好交感

目覚めたら保健室でした。左門くんがこちらを心配そうに覗き込んでました。

「……ぅう? !? あふぅ……」

「おっと、大丈夫ですか?」

 一瞬にして再びトリップしそうになった僕を助け起こす左門くん。

「あ、あれ? 左門くん? なんでここにいるの?」

 ほっとしたように彼は一つため息を吐く。

「元気そうで本当に良かった……急に悲鳴を上げて倒れるものですから、驚きましたよ。否裏目さんは随分と体が弱いのですね、私も気を使うべきでした」

「そ、そそそそそそそそんな! 左門くんが気にする必要なんて…!」

 よく見ると彼の顔には大小の傷や痣がある。

「それ、どうしたの?」

「ああ、これですか」

 彼はそっと顔を撫でる。少し目にかかる髪が揺れるそのさまはまるで女神(?)のようで、もうそれだけで僕の意識はどこかへ飛んで行っちゃいそうだ。

「貴女の看病をするといったらなぜだか妨害を受けましてね……」

「……ごめんなさい」

 ハモ狩りのみんなにはあとでお叱りだ。

「それより、本当に大丈夫ですか? 多少顔色が悪いですが……

「ああいや! いやいやいやいや! 全然平気、元気元気! 元気すぎて魔人ブーなんて一撃だよ!」

「そんなに元気でしたらむしろ心配ですね……」

 苦笑いの左門くん。

 むう。

 馬鹿な奴だと思われちゃったかも。

 それにしても夕日が左門くんの顔を照らしていてとても綺麗……って

「夕日!? 今何時?」

「さて? 五時くらいだとは思いますが」

「え!? 僕四時間以上も気を失ってたの!?」

「ええ、可愛いお顔ですやすやと」

「そ、その間、左門くんはずっと僕の看病を?」

 まさかそんなことがあるわけないのに、僕は多少期待してしまう。いやでもそれだと左門くんが五六時限目の授業をすっぽかしてしまうことになってしまう。そんなになってまで僕を看病してくれるわけないよね……

「ええ。勿論です。一時として傍を離れませんでしたよ」

「!?」

 なんていい人なんだ…!

 僕がぼーっと左門くんに見とれていると、彼はにっこりと僕に笑いかけて言った。

「いえでもまさか、この学校にも同業者がいるとは思いませんでした。貴女も依頼を受けてここへ入学をなされたのですか? それともプライベート? 今日はどうやら朝から『半死半生』のでしたのでお仕事中のようですが、お時間は大丈夫なのですが?」

「?」

 同業者?

 依頼?

 左門くんの言うことが全く理解できない。

「私もしがない『調停人』ですが、先日ここへ依頼を受けて編入させていただいています。いやはや、貴女がいるとなかなか心強いですね。これからもよろしくお願いします」

「え?」

「え?」

 二人同時に首をかしげる。左門くんは別にふざけている様子はないし、だとすれば僕が彼の会話について行けないのは僕が馬鹿なせいなのだろうか。

「貴女、『人霊間特別境界調停人』では無いのですか?」

「じんれーかん? ちょーてーにん?」

「!」

 さっと顔を青くする左門くん。大きく目を見開くと、僕の目をじいっと見つめてきた。

 え、

 なになに。

「そ、そんなに見つめられると、僕、は、恥ずかしいよ……」

 がっと左門くんが両肩を掴んでくる。

「ひゃんっ!」

「ではなぜ、貴女は『半死半生』を?」

「へ?」

 しばらくそのまま僕の目を見つめていた左門くん(心臓ばっくばく)。しかしすぐに顔色を戻した。

「……いえ」

 顔色の戻った左門くんが恥ずかしそうに笑う。

「先ほど、恥ずかしながら居眠りをしてしまいまして、どうやらまだ寝ぼけているようです。見苦しいところをお見せいたしました」

「あ、ああ! そういうことかあ、びっくりしたよ! そうだよね、よくあるよねそういうこと。大丈夫だよ、僕は気にしてないから」

 なあんだ。左門くんにも可愛いところがあるじゃないか。ますます僕は彼のことがす…………きなわけじゃないけど! 違うけど!

「どうやら否裏目さんの体調も回復なされたようですし、私も同伴して帰宅したいところですが、私にはこのあと学校に用事があるので……

「ああいやいや、いいよいいよ僕一人で帰れるから!」

 ……ぅう。

「出来るだけ、追いつけるようにしますから、貴女はお先に帰路についてください。たしか方向は据膳三町目あたりでしたね」

「う、うん。でもいいよ、ゆっくりして、僕なら大丈夫だから」

「いえ、そういうわけにもいきません。貴女が体調を崩したのはそもそも私の所為なのですから。それに、家の方向も一緒ですし」

「あ、ありがとう」

 や、やったあ! なんていい日なんだろう。日ごろの行いがいいから神様がご褒美をくれたんだ! な、なら、今日はゆっくり歩いて帰ろう。

「わかったよ。じゃあ左門くんは頑張ってね」

「ええ、お大事になさってくださいね」

 さようなら、といって、僕は保健室を出た。去り際に左門くんが眉間に皺を寄せて何かを考え込むような顔をしていたのを見た。

 大丈夫かな?


 ゴスロリのままだった。


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