読み送り/黄泉送り
とりあえずはプロローグですね。あたりさわりのないものでつまらないかもしれませんが、そんな時は画面に唾でも吐きかけて鼻で嗤ってやってください。
唐突に、少し前に読んだ本の受け負いを披露したくなった。
曰く、
『信号機が青色を示すとき、それは危険であり、信号機が赤色を示すとき、それは安全である。』
一見逆であるように思えようが、実はかなり的を射ている。
信号が青だったら人は横断歩道を渡るけれど、そのときに車に轢かれてしまえばお終い。全部パー。しかし赤だったらまず車には轢かれないし、こちらは安全であると、
そういうことらしい。
かといってそんなことしていたらいつまでたっても道を渡れないし、そんな生きにくい世の中は嫌だ。
せっかく交通事故の少ない国に住んでいるのだし、そこは大手を振るって横断歩道を渡りたいものだ。
要は僕が言いたいのは、というかなぜ冒頭でこんなくだらない話をしているのかというと、別に信号がどうとかでなく、その信号待ちが退屈で仕方がないからなのであった。ただでさえ片田舎の、しかも夕暮れのこの時間帯は車も人もかなり少ないのに、僕は律儀に信号待ちをしていた。音楽プレイヤーを耳に装着しながら。
カチリ、と
信号が青に変わる。
十行近い長い思考だったのに、僕はころっと状況が『安全』から『危険』へ変わったことを失念し、しかし大手を振るうことだけは忘れずに、横断歩道に足を踏み出したのだった。
ちなみに僕はもう一つ失念していたことがある。というよりもこちらはもとから念頭にないようなものだけれど、つまりは、日本は確かに『交通事故の少ない』国ではあるけれど、決して『交通事故のない』国ではないということだ。
仕方がないといえば仕方がないかも知れない。だってそれはどこの国においても不変の摂理なのであり、人間が車を運転している限り事故は必ず付随して回るものなのだ。
なんのことはない、
僕は大手を振るって横断歩道に踏み出し、
お終いになった。