数多の凶器
殺すべき人間は8人。
戸惑いはしない、確実に仕留める。
ターゲットを記したそのノートをリュックに詰めると、僕は家を出た。
青い空は続いていた。雲は不規則な形をしてして何の想像力も掻き立てられなかったが、のんびりと漂っていることには少なからず怒りの感情を抱いた。
お前らのように、暇じゃないんだ。
数か月後と言われたがあくまでも予測、早くなる可能性だってある。突如、目が見えなくなればそこで僕の全ては終焉を迎えると言っていい。時間はほんの僅かしか残されていないのだ。
自転車のこぐ足も速くなる。
自転車はぐんぐんと坂を駆け上り、市街地を目指した。
殺すための道具を、揃えなければならない。
少しでも沢山の凶器が必要だ。金は、十分とは言えないが、昔のバイトの貯金で数万はある。銃は入手ルートがわからないから買えないにしても、他は大体揃えられるだろう。
並び立つビルの路地裏に自転車を隠し、僕は買い出しを始めた。
まずは、総合雑貨店に向かう。ここならば刃物が売っているだろうとの予想通り、十分に人を殺せそうな小刀や包丁が並んでいた。どれも欲しかったが、同じ店でたくさんの刃物を買うのはさすがに怪しまれる。いかにも工作か何かで使うような組み合わせにして買い、3本にとどめておいた。次に入った金物店でも同じく3本。その調子で買い続け、刃物の数は大小20本を超えた。
そして、あとは思いつく限りの補助用具を仕入れる。
黒いレインコート数着、帽子、マスク、ゴム手袋、その他にもちょっと改造して使うための道具も買った。
最期に、ミリタリーショップ屋に並んでいたスタンガンも買っておいた。
これは高価だったし、怪しまれそうだったが、悪人には見えにくい顔だから何とかなった。
帰る頃にはリュックはポンポンになっていた。
途中警察には会いたくなかったので、なるべく人通りの無い道を辿って行く。この時間は、とても長いものに感じた。背中にゾクゾクしたものが走り、怯えているような、楽しんでいるような、よくわからないスリルのようなものをこの時僕は味わっていた。