凍える夢の街で
医師に告げられた、いずれ失明すると言う事実。
世の無常さを、嘆かずにはいられなかった。
しかし、眠りと言うものはやがてやってくる。
俺の記憶を無理やりにすり潰して、夢の世界に誘う。
また、今日もあの心地の悪い街にやって来た。
山間に広がる、深々とした街並みを僕は漠然とした意識の中で歩く。
同じであるようで、全く異質の世界。怒りの感情も抑えられるような、不思議な街。
その姿は、見るたびに少しづつ違っているが、何か得体もしれないもので繋がっている。
ここは、かつで僕が生きていた世界なのだろうか? それとも、僕が死んだ時に待つ次の世界なのだろうか。
最近はその事を、考えれば考えるほど気持ちが悪くなる。
死ぬ夢や、そのほかの不快な夢たちと同じくらいの嫌悪感を抱く。
この世界では、生きたくないと思う。
しかし、夢から覚めた現実の世界でも、僕の生きる場所はない。
僕は、もうすぐ殺人鬼になるのだ。
目を覚ませば、そこに待っているものは修羅の道でしかない。
今日の、眠りは浅いのだろう。
意識は鮮明だ。おぞましい夢の街の中で、明日からの地獄への道を僕は見上げた。