第36話 エニグマ・リサーチ、佐藤氏の音声データ
録音者:佐藤慎一(都市伝説検証サイト『エニグマ・リサーチ』管理人)
インタビュー対象者:村の長老(名前不明、八十代男性)
場所:██村の公民館
記録日時:2018年8月16日13:00~14:30
(ノイズ混じりの録音)
佐藤
「こんにちは。突然の訪問、申し訳ありません。僕は佐藤と申します。都市伝説検証サイト『エニグマ・リサーチ』というサイトを運営しておりまして……」
長老
「……都市伝説、ねぇ」
佐藤
「はい。実は、こちらの村に伝わる『カミカクシ』の伝説について調べておりまして、長老様にお話を伺えればと思い、参りました」
長老
「……カミカクシ、ねぇ。そんなもん、ただの昔話ばい」
佐藤
「しかしこの村では、実際に人が消える事件が起きている、と。……過去の記録や、ネット上の情報などから、そう推測しています。今回の取材、どうかご協力いただけないでしょうか」
長老
「……」
佐藤
「もちろん、個人情報やプライバシーには配慮いたします。ご迷惑はおかけしません」
(沈黙が続く)
長老
「……あんた、何ば知りたかと?」
佐藤
「ありがとうございます。……まず、この村に伝わる『神鳴り様』について、詳しく教えていただけますでしょうか?」
長老
「……神鳴り様、か。あれは、昔からこの村におる存在ばい。山の神様とも、精霊とも、妖怪とも言われとる……まあ、本当のところは、誰にも分からんたい」
佐藤
「本来は神では……ない、ということですか?」
長老
「……そーったい。わしらの先祖は、あれを『カミ』として祀り、恐れ、敬ってきた。じゃが……あれは、もっと別の」
(長老は、言葉を濁す)
佐藤
「別の……何なのでしょうか?」
長老
「……それ以上は、言えんばい。知ってしまうと、後戻りできんくなるぞ」
佐藤
「……」
長老
「ただ、これだけは言える。あれは、人間の感情に反応する。喜びや悲しみ、希望や絶望……特に、強い負の感情を好む」
佐藤
「負の感情……?」
長老
「ああ。憎しみ、怒り、恐怖……そういうものを糧にして、あれは力を増していく」
佐藤
「……まるで怪談話のようですね」
長老
「……怪談、か。そうかもしれん。じゃが、これは現実の話ばい」
佐藤
「……その『神鳴り様』を鎮めるために、村では昔から儀式が行われてきた、と。それが、『カミカクシ』の儀式……で、よろしいでしょうか?」
長老
「……」
佐藤
「過去には、人間が生贄にされたこともあったとか……」
長老
「……昔は、そういうこともあったかもしれん。じゃが、今は違う。鶏や牛を捧げておる」
佐藤
「儀式の具体的な手順を教えていただくことは可能でしょうか?」
長老
「それはできん。儀式は村の秘密じゃ。よそ者に教えるわけにいかん」
佐藤
「しかし、このままでは、また犠牲者が出るかもしれません。私は、それを阻止したいんです」
(沈黙が続く)
長老
「……分かった。話せる範囲で話そう。ただし、録音は禁止じゃ」
佐藤
「……分かりました」
(録音を停止する音)
……
……
……
(録音を再開する音)
佐藤
「……ありがとうございます。長老様のお話、大変参考になりました。しかし、一つだけ、どうしてもお聞きしたいことがあります」
長老
「……何じゃ?」
佐藤
「『プロジェクト・コトダマ』について、ご存じのことはありますか?」
長老
「……!」
(長老が息を呑む)
長老
「なぜ知ってる……?」
佐藤
「……ある情報筋から、入手しました。政府、または、それに準ずる組織が、極秘に進めている計画だと。その目的は、『神鳴り様』の力を利用して、国民の意識を操作し、国家を統制すること……」
長老
「……」
佐藤
「██村は、『プロジェクト・コトダマ』の実験場として利用されている。AI『コトリバコ』は、『プロジェクト・コトダマ』の一環として開発された。そして、カルト教団『言霊の会』は、『プロジェクト・コトダマ』に協力している……違いますか?」
長老
「……お前は、知りすぎだ」
佐藤
「真実を知ることは、そんなにいけないことですか?」
長老
「時には知らぬ方が良いこともある。……特にこの件に関してはな」
佐藤
「しかし、このままでは、多くの人々が犠牲になります。僕は、それを黙って見過ごすことはできません」
長老
「……もう、手遅れじゃ。お前も、『神鳴り様』に目をつけられた。もう逃げられない」
佐藤
「……」
長老
「最後に、一つだけ忠告しておく。……気をつけろ。奴らは、どこにでもいる……」
佐藤
「奴ら……?」
長老
「……それ以上は言えん。……さっさとここから立ち去れ」
佐藤
「……分かりました。今日は本当にありがとうございました」
(立ち去る足音)
(録音終了)
このインタビューの後、佐藤は長老と連絡が取れなくなった。そして、佐藤自身も、消息を絶つことになる。
録音日時:2018年8月16日 13:00~14:30
場所:██村の公民館
録音者:佐藤慎一(都市伝説検証サイト『エニグマ・リサーチ』管理人)
インタビュー対象者:村の長老(名前不明、八十代男性)
備考:この音声記録は、佐藤慎一氏が所有していたICレコーダーに残されていたものである。佐藤氏は、2024年6月以降、行方不明となっている。
本件と警察官連続失踪事件との関連性は不明。現在、解析を進めている。
日付:2024年6月23日
媒体:福岡県警捜査資料 音声記録書き起こし




