~96 出場者発表ですよ~
今頃、公爵邸は大わらわだろうな。
あの施設の障壁は中からはザルだったし、
そもそもあんな脆い障壁で
オレっちを止められるかって~の、べらぼーめ!!
あっなんか江戸っ子みたくなったぞ。
とにかくザマァみやがれ、ダッハッハッ!!
ってやってたらサクラに怒られた……
ちなみに朝の調理にはなんとか間に合ったぞ。
厨房でおばちゃん達と朝食の準備をしてたら
サクラが早速念話を飛ばしてきたから
事情を説明したら、
(少し自重なさい!!
ただでさえ敵国ド真ん中
少々インコース寄りなんですから)
インコース寄りは良くワカランかったけど、
といった感じで怒られた訳だ。
それと暗部が調査に来るはずだから、
聖光神に会うまで、
要は学園内総合実戦大会が終わるまでは大人しく
してろってさ。
ただバルバスさんのことは喜んでくれた。
そうそうジイさんがバルバスさんを診て
回復させてくれたぞ。
「変わった身体で少し戸惑いましたが、
とにかく丈夫なのは間違いないですな。
かなり危ないところでしたがここで暫く静養すれば
良くなりますよ、ホッホッ」
だってさ。
あとはオロチのことをベリウスさんに
詳しく聞かれた。
オロチはオレが師匠と修行してるときに
「こんの魔力お化け、オラァ!!!!」
ってやったら出たのがオロチ。
オレはあの時弾き飛ばすつもりだったんだけど……
師匠に聞いたら
「お前の持ってる能力だ」
ってワカランこと言ってたけど
後でここと違うとこ行ったときに分かった。
あそこじゃスキルとか見られんしな。
回復とかも「骨全部くっ付け」とかだし。
なんかこう「アルティメットキュア!!」とか。
無いらしいけど。
久しぶりに思い出したな。
全然懐かしくないけどな!!
話が逸れた。
ベリウスさんには上手く説明出来たかワカランけど
オロチは魔法生命体だ。
当然オレの魔力から生まれたから仲良しである。
成長してるしな。
あっ、四本足の烏ラージャは師匠んとこで
エサあげてたら懐いてくれたヤツだ。
どこでも付いて来たがるから連れてきてる。
うん、まぁ普通の烏じゃなかったけどな……
カワイイからいいけど。
なんか今朝は色々思い出すな。
まさか走馬灯!!
う~ん、師匠との修行じゃあるまいし。
そうそう視てたまるかっての!!
とか思い出してる間に朝メシ出来上がってきたぞ。
ヨシッ、学生共いつでも来やがれ!!
アンクレットは後でサクラに返すとして、
昼に一回ユッコんとこ行っとこ。
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「ヒソ……なんか機嫌悪いねサクラちゃん?」
「ん? 便秘じゃろ」
エレーナとセレネースの会話である。
今はお昼休みで食堂に居る二人。
当然サラ、デーブも同じテーブルであり
サクラが不機嫌なのは朝から分かっている。
(ホント後先考えず動くんだから。
相手の動きにイレギュラーが出るでしょうが!!
相変わらず人のことだけは必死になって。
……でもそこが良いんですけど、フフ)
「ヒソ……今度は笑ってますけど」
デーブ談。
「ん? 開通したんじゃろ」
エレーナ談。
ヤキモキする周りを他所に食事をしながらも
黙考するサクラ。
(さて公爵邸は潰れましたし、
あのポークビッツも暫くは動けないでしょう。
これでセレちゃんも大丈夫。
ん? となると不測の事態のため以前話のあった
シス、セット、ウィット、それに追手だと思われる
カトル、トワが全員集まるかもしれませんね。
そうするとタケルの取った行動は
暗部の動きを誘導したことにもなりますね……
結果的に良かったのかしら?
何か納得いきませんけど……)
「ヒソ……今度は難しい顔で考え込んでますけど」
「ん? 今度は腹でも下したんじゃろ」
サラと言わずもがなエレーナ。
さっきからお腹の調子の話ばかりしている
サクラ以外の4人。
といってもその方向に話を持って行ってるのは
約1名なのだが。
考え事をしながらでも
しっかりと聞こえているサクラは
とうとう堪忍袋の緒が切れたようだ。
ニッコリと微笑むサクラ。
「……エレーナさん。
後でお話がありますので
一緒にお花摘みに参りましょう」
その微笑は5人が座っているテーブル以外にも
影響を及ぼし癒しの空間となっているが、
約1名癒されていない人物が……
「お、落ち着けサクラ。
それにお花摘みになぞ行かんぞ」
勘違いをしているエレーナに
神微笑に憤怒オーラを纏いながら説明するサクラ。
「フフフ、お花摘みはトイレの隠語ですよ
エレーナさん」
周囲の3人を取り巻く空間は
癒し空間から暗黒空間に入ったようで
その遣り取りを生唾を飲み込みながら
黙って見詰めている。
それを聞いたエレーナが
なぜか少し緊張を解いた様子で答える。
「な、なんじゃ、怖がらせるでない。
結局トイレではないか、早う行ってこい」
ダメだこりゃ、
とテーブルに突っ伏すサクラであった。
……
サクラのお腹の調子の話も一段落し、
午後の講義が始まる時間となり
講義室に担当のマレーネが入って来る。
「皆さん揃っていますね。
それでは講義の前に連絡事項があります。
学園内総合実戦大会出場者の発表です」
俄かに騒がしくなる室内。
この大会に出場できるというだけで成績に加点され
更に大会の成績によっては
卒業後の進路が有利なものになるため
学生たちが騒がしくなるのも当然であった。
ただ、サクラとエレーナだけは
裏の事情を知っているだけに
複雑な表情ではあったのだが。
「はいはい静かに、発表しますよ。
さて、当クラスからは遠征試験の成績を参考に
ギュスタフ班からトラン君とバニラ君、
セレネース班からセレネースさん
サクラ班からサクラさんとサラさん
以上5名が出場となります。
言ってませんでしたが、
ギュスタフ君が諸事情により長期休暇を
申請されましたので、
これまでの成績も含め以上の5名に決定しました。
言うまでもないですが、
あなた方は1学年トップが揃うこのクラスの
代表です。
プレッシャーを掛ける訳ではないですが、
恥ずかしくない試合を。
そして日頃の成果を発揮できるよう
頑張ってください。
皆さん出場者の方達に拍手を」
ワァアアアーー
やっぱりサクラくんかーー
パチパチパチパチーー
サラもーー
ワイワイーー
ガヤガヤーー
それぞれに感想を言い合いながら
出場者にエールを送っている。
騒ぎも一段落しマレーネが話しの続きを
始めるようだ。
「はい、落ち着きましたね。
皆さん1年生ですし
他国の方もいらっしゃいますので
大会の説明を簡単にしますからねーー
・学園地下闘技場で開催
・3日間で行われる
・トーナメント方式
・各学年ごとに選抜された16名で競う
・武器、魔法使用可
・制限時間30分
・対戦相手の戦闘不能もしくは
戦意喪失で勝敗が決定
・判定の場合は審判3名による合議制
ーーといった感じになります。
また試合が決まってからの故意の攻撃などは
反則となります。
対戦相手をコロすようなことがあっては
なりませんからね。
当然、回復魔法師は準備してもらっています。
概ねヴァッケンの世界大会と同じですね」
後は1学年の出場数が
Aクラスから5名、Bクラスから4名、
Cクラスから2名
出場することが伝えられる。
そしてサクラとエレーナが説明の中で
最も敏感に反応したのが、
ーーまた例年同様に
大会最終日は各学年の優勝者が第三聖守護である
聖騎士団団長様と剣を交えることが許されますね。
今年も聖光神様の護衛でいらっしゃいますからーー
(ホウ、サクラよ聖光神の側近がどんなものか図る
絶好の機会ではないか)
エレーナの問い掛けに
周囲に分からないよう頷くサクラ。
ーーそんなところですか。
何か質問があれば職員室に来てください。
それでは講義を始めます」
……
午後の講義も終わり、大会出場者に選ばれたことを
セレネースやサラと一頻り喜び合ったサクラ。
デーブも出場出来なかったものの
大層喜んでくれ暖かい気持ちを味わう。
そんな普通の日常を過ごす者達に
悪夢を齎そうとしている聖光神の情報を
少しでも多く取りたいと決意を新たにする。
まずは暗部の動きを把握すること。
そして出来るならば一網打尽にする。
しかし大会と重なると
守護に聖光神までやって来るため
気付かれ兼ねないことも懸念材料となる。
そこまで考えて、
「とりあえず夜にでも
タケルとセイラさんに相談しましょう」
そう言って最近考え事をする際に
籠ることが多くなった
トイレから出て行くのであった。




