~92 傾向と対策1~
点検ミスで一部修正しましたm(_ _)m
ユウコの神域 神殿内 応接室(大)
「お二方は流石に筋がよろしいですなぁ」
稽古をつけていたヌフとディースに対しての
ヴァジュラの評価である。
夕食が終わり学園も眠りに就いたであろう頃を
見計らいユウコの神域へ集まったタケル達。
ちなみにセイラから渡された
収納機能付きアンクレットは
そのままサクラが持っている。
神域では「白の隠者」を
切っているセイラは着くなりユウコとの訓練へと
行ってしまった。
「いや、まだまだだ」
ヌフの隣で頷くディース。
「いやいやお二人で力を合わせれば
結構厄介ですぞ、ホッホッ」
稽古の感想戦をやっているところで、
ヴァジュラは二人のスキルも聞いたようで、
スキルを中心に攻撃の構成を
アドバイスするようだ。
そんな中、サクラが二人に質問があるようで、
「お二方のスキルを教えてもらっても?」
「今更だが、構わんぞ」
そう言って話し始めるヌフとディースから、
ヌフ 「薄影」「一点突破」
ディース 「神隠し」「予測演算」
と言った答えが返ってくる。
「当然他にも
「気配察知」「魔力察知」「身体強化」「貫通眼」
などは持っているが特殊なのはその辺りだな」
謎が解けたサクラは二人にお礼とお詫びを伝える。
「なるほど、有難うございます。
お二方のスキルも把握しておきたかったもので。
後どうやってステータス等の上限値を
計っていたのか気になっていましたので。
スミマセン、言い難いことをお聞きして」
それを聞いたディースは、
「スキルのことは構わんが、
その話は我らの中でしか話していないはずだが……
となるとお前、あの部屋に居たのか?」
ペロリと舌を出して答えるサクラ。
「フフ、重ねて申し訳ありません。
結構聞かせて頂きました」
それを聞いた二人は肩を落として、
「全て掌の上だったか……捕まるわけだ」
とヌフが言うとディースも同様に頷く。
ちなみに、とサクラは更にもうひとつ尋ねる。
「ちなみに「予測演算」で
対象者の上限ステータス等は
どの程度の精度で分かるのですか?
それにそのスキルはユニークスキルでしょう?
攻撃や防御にも使えるのでは?
それこそまだ伸びしろがあるのでは?」
この手のスキル関連には大変興味があるサクラ。
矢継ぎ早に質問され気圧されながらも
答えるディース。
「お、おお、多いな質問が。
まぁ答えるが。
まず精度については
数値が正確に分かる訳ではない。
ステータスの伸びがある程度まで達すると
黒に近くなるから分かる。
それに言う通りユニークスキルだ。
攻撃防御に使う際は
相手の防御の薄い個所が見えたり
攻撃してくる箇所が分かる。
伸び代で言うと使えば使うほど精度が上がって
何かしら成長するらしいが何かは分からん」
聞いたサクラは自分の持つ「高速演算」と
似ている部分があり、
かなり興味をそそられるのでまた研究してみようと
思っていた。
そこでお茶を飲みながら聞いていたヴァジュラが、
「どうです? サクラ殿。
なかなか良いスキルでしょう。
ヌフさんの「潜影」から「一転突破」での
暗殺も魅力的ですし、
ディース殿の「神隠し」と「予測演算」と
組み合わせれば幅はかなり広がりますからな。
ホッホッ」
そう言うと、
手元のカップを口元に運び一息吐くヴァジュラ。
聞いたサクラもその通りだ、と頷いている。
ひと段落したところで
セイラは居ないが情報共有してしまいたいタケルが
その場の皆に声を掛ける。
その前にと、
先程の話に応援のつもりでヌフとディースに
一声掛ける。
「そろそろ昨日の情報話して良いかな?
とりあえずヌフりん、ディーすんが
強くなるのは歓迎だし。
どんどん、強くなって聖光神倒してね♡」
その物言いに冷たい視線を向ける二人。
代表してヌフがタケルに言葉を投げつける。
「……聖光神の前に
お前を倒さねばならん気がするな」
何かマズったか?
と思いながらも話し始めるタケル。
「え、えーと、なんで塩対応なのかワカランけど、
とりあえず話すぞ」
まず話したのはセレネースの件。
以前話しにあった通り、シス、セット、ウィットが
セレネースの誘拐を引き継ぎ、
捜索にはカトル、トワと呼ばれていた者が
当たること。
また坊ちゃんと呼ばれていた男が
セレネースのスキル「聖剣召喚」を
狙っていること。
坊ちゃん引いては公爵家が民衆の魂を集めて、
地下施設にあった保管容器に
魂を集めそのエネルギーで結界の維持を行っており
何やら良からぬ実験も行っていること。
シ体の山の話も当然出てくる。
そしてそこには頭に2本の角が生えた人相の悪そうな
人型の生物が捕らえられ
魂のエネルギーの供給源となっていたこと。
ヌフやディースとそっくりの3人は
恐らく身体も同じだと思われ、
身体を調べられるとマズいと言っていたが、
これは既に半分は調べが付いているため
念のため伝えた程度。
あと気になるのは五聖守護なる単語であるが、
他の情報と同様、
推測はサクラやセイラに任せようと思っており
事実のみを伝えるタケル。
……
話を聞いた面々は重々しい雰囲気ではあるが、
黙ってばかりもいられない訳で、
そんな中、口火を切ったのはサクラ。
頭の中は全ての可能性を探るべく情報を整理し直し
現在最も高い確率の結論を話す。
「私の考えでは狙いは恐らくスキル。
坊ちゃん、恐らくギュスタフのことでしょうが、
それだけではなくて聖光神の狙いも
恐らくスキルではないかと考えます。
魂の記憶とエネルギーを分けて
スキルを取り出す技術があるなら、
成長し切った魂の持ち主は神都に。
若くて成長の期待できる者は学園に置いておき
成長を促す。
新たに覚えるスキルもあるでしょうしね。
魂のエネルギーだけで良いなら、
成長云々関係なく
一般市民から集めれば良いだけですからーー
顎に手を当て尋ねるサクラ。
ーーそれと今更ですが
ヌフさん、ディースさんも少なからず
この件はご存じでしたね?」
沈痛な面持ちで頷く二人。
「今更言い訳しても始まらんが、
我らには他に生き残る術が無かった……」
そう答えるヌフに首を横に振り
その発言を否定する。
「いえ、責めている訳ではないのです。
それこそ今更です。
そうではなくて、
施設のことは知っていたのですか?」
少し考えてからディースが、
「そういった施設があることは知っていたが
中に入ったことは無かったな」
少し残念そうにするサクラ。
「そうですか。
その角の生えた生物のことを何かご存じないかと
思ったのですが。
その生物が魂のエネルギーを送り出す媒体に
なっているのは間違いないのですが、
相当量のエネルギーを受ける訳ですから
かなり強い身体を持っていないと無理なんですよ。
となると……」
そこで実際見たタケルの方を向くサクラ。
「タケルはどうですか?
角が生えて人型でしょうし嫌な予感しかしませんが
何か気付いたところは?」
ヴァジュラも気になるらしく黙って聞いているが、
珍しくこちらの様子を窺っている。
聞かれたタケルは、
「まぁジイさんもサクラも予想ついてるんだろ?
推測は交えずと思ってたから言わなかったけどさ」
そう言って二人の顔を交互に見る。
溜息を吐くサクラに代わって
ヴァジュラが答えるようだ。
「ホッホッ、と笑っている場合ではございませんな。
それは“悪魔”ではありませんか?」
生唾を飲むヌフとディース。
ゴクリと言う音が鳴ったのが
自分でも分かったようで、
額からはジワリと冷や汗が滲んでいる。
タケル達も悪魔と戦ったことはあるが、
とにかくとんでもない魔力量と
特殊スキルのオンパレードで
大層面倒臭いことは分かっている。
ただ、この世界も同様なのか
その点については分からないのである。
そんな中、サクラが話を纏める。
「ハァ、なんとも面倒なことばかり
やってくれていますね。
とりあえず謎の生物については
セイラさんにも聞いてみましょう。
それとセレちゃんの身辺を
守らなければなりません。
まぁあの部屋に来たところに“グレー”をブッ放せば
それで終了ですから
クックックッーー
何か悪役のようなセリフになってきたサクラは
続けて、
ーーあとは公爵家の愚行を止める!!
本国は後回しにするしかないが、
ここの別邸だけは先に潰してやる。
あのブタを“レッド”で丸焼きにして、
いや汚らわしいから見たくないし、ブツブツ……」
セレネースが絡んでいるため
内容は合っているが言っていることが
物騒になっていくサクラを見兼ねたタケルが、
「分かったから落ち着けサクラ。
それよりディーすんのスキル気になってんだろ?」
色々と試して調べてみたいと思っていた
サクラの気持ちを見透かし話題を変える。
暗黒面から戻って来たサクラが、
そういえばと興味津々でディースに尋ねる。
「そうそうそうなんです!!
色々聞きたかったんですけど、
まずはディースさんの「予測演算」は
私やタケルにも使ったりしましたか?」
暗黒面からの変わりっぷりに
何とか付いていくディース。
「あ、ああ、サクラには使ったな。
真っ白に見えたのは初めてだったから
聖光神に計ってもらおうと考えたんだ」
「白は分からない、という意味ですか。
他にも上限までステータスが伸びたら何色かとか
聞きたいことはたくさんあるんですが……
なるほど。
とりあえず手始めにタケル、
ちょっとやってもらいなさい」
「えーメンドくさいなぁ」
「メンドくさいって
そこに座ってるだけでしょうが!!
早くなさい!!
ささ、ディース先生、お願いします」
「先生……ハァ、なんなんだお前等は。
こんな化け物に使っても何も見えないぞ。
まぁまぁそう言わずに先生、
ここはひとつ先生の寛大な御心でーー
ーーあーもう、分かった分かったから急かすな。
ホントお前等は、ブツブツ」
タケルがどんな色になるのか興味のあるサクラ。
ブツブツ言いながらも渋々スキルを使うディース。
「予測演算」
……
「ヒッ!!」
小さく悲鳴を上げてスキルを切るディース。
タケル含め周囲も怪訝な顔をしている。
「ど、どうしました?」
問うサクラ。
答えるディース。
「な、何か大きな蛇の瞳?
が、こっちを睨んでいた……
蛇もだが色以外を見たのは初めてだ」
タケルは何となくだが分かっている様子。
サクラも見当が付いており、
周囲のヴァジュラ、ヌフ、ディースは
考え込んでいる。
しかし答えが出る訳でもなくディースが、
「……気持ち悪いが分からんしな。
コイツが変態だということだ」
ヴァジュラだけは頷くでもなく笑っているだけだが
周囲の者は頷いている。
当のタケルは、
「予測演算の結果、変態でした。
学園か神都か如何いたしましょう、
ヌフお姉さま?」
お道化て言うタケルにヌフは、
「そうだな、お前はーー
充分に溜めてから、
ーー地獄行きだ」
答えを聞いて引っ繰り返るタケルであった。




