~85 取引成立ですね~
3人揃っての行動は久しぶりだ。
今日の夜はユウコの神域にお邪魔している。
サクラから繋がるようになったと聞いて、
また「迅雷鳥の孤塔」で
暗部2人が眠り姫になってるらしいので
起こして色々聞くのだ。
ユウコの案内で神域に入り
神殿の入口から少し行ったところで、
奥の暗がりから声が聞こえる。
「ひとぉつ、人の世の生き血をーー
「ジイ、帰った。変わりは?」
ーー特にございません」
……
孤塔に向かう3人と一柱。
「ふたつ不埒なーー
ーーちょっと!! 馴染むの早すぎです!!
今はヒデキさまは置いときなさい!!
タケルでしょ、ヴァジュラ様に時代劇見せたの?」
気持ち良く残り2つも言うつもりだったタケルだが、
遮られ挙げ句サクラに問い詰められる。
「えーオレじゃないよ、師匠だって。
何かと盛り上がってたじゃん」
「……まぁ別に何の問題も無いんですけど。
どうも納得がいかないというか何と言うか」
「師匠だからねぇ」
「ハァ、そうですねぇ」
珍しくセイラが乗ってこないのは、
神殿も含めキョロキョロと周囲を観察しているからだ。
孤塔に着くまでにはもう少し時間があるので
疑問をぶつけるサクラ。
「そうそう、それとこの間
念話が繋がらなかったんですけど
どこに居たんですか?」
「ん? 勤務の前の日かな?
神都グローリアスってとこにちょっと偵察に行ってた」
少し驚くサクラ。
「大丈夫だったんですか?」
「ああ、念のため連絡関係は全部切ってたんだけど
結局あそこの障壁、魔力拡散やら防御魔法やら
一杯詰め合わせになってたし念話にしろ魔道具にしろ
外部との連絡は厳しいと思うな」
驚いたのは危険だからではなく
珍しくタケルから動いたからであったのだが、
「他は街の防備と城の警備なんかも見て来たけど、
特に障壁は穴を見付けんの大変そうだわ。
力業の方がまだマシかも。
まぁ着いた日でヒマだったし、
セイラさんから言われてたしね」
といったタケルの答えに納得するサクラ。
「自分からは動かないと思ってましたけど……
それにしてもそんなに複雑でしたか?
フーン、ちょっと私も見てみたいですね」
神都の障壁の複雑怪奇な魔方陣の組み合わせと
中身に興味を示すサクラ。
「サクラそういうの好きだもんなぁ。
後で話しても良いけど、
まぁまた機会があるんじゃないの?」
そんな話をしている内に、
「迅雷鳥の孤塔」が見えてくる。
ギュアギュアギュアアーー
グルルルーー
キュアアーー
相変わらずユウコに懐いているため
近寄って来ては離れて行くを繰り返す迅雷鳥。
「おお、なんじゃなんじゃ、こ奴等は?
ユウコ殿にえらく懐いておるのう」
セイラの問いに
コクンと頷き歩を進めるユウコ。
塔の中に入り暗部2人を拘束している部屋に入る。
椅子に座りテーブルに突っ伏して眠っているヌフ。
変わらずソファーに寝かされ眠ったままのディース。
!!??
部屋に入るなり、
これまでタケル達が見たことの無いくらい驚き
動揺しているセイラ。
目を見張ってヌフとディースを交互に見ている。
「あ、あれ? どうしたのセイラさん」
サクラとユウコも怪訝な表情でセイラを見ている。
暗部二人から目を離さずセイラが答える。
「……そ、そっくりじゃ」
タケルもセイラもサクラからの情報は受けており
3人居なかったっけ?
くらいに思っていたタケルだが
今更驚いているセイラを不思議に思いながら尋ねる。
「サクラが3人ともソックリだって言ってたじゃん。
ハッ? もしかして老化がーー
バッと身構えるタケルだが、
一向に蹴りやらパンチやらDDTなんかが来ないため、
不審に思いセイラの方へ目を遣ると
固まったまま呟くセイラが目に入る。
「アンと、聖光神とソックリなんじゃこ奴等……」
予想外の言葉にセイラ以外の全員が固まり、
そろりとヌフとディースに目を遣る。
ユウコはその様子を
プカプカと天井付近から眺めていたのであった。
少し間を置き、
セイラが落ち着いたのを見計らいサクラが声を掛ける。
「大丈夫ですか? セイラさん」
「あ、ああ、ちょっとビックリしただけじゃ。
心配いらんワイ、スマン」
うお、謝ったぞ!!
と思ったタケルだが雰囲気が雰囲気なので
突っ込まないことにしておく。
空気の読める男なのだ!!
ーーとか思っておる顔じゃのう、タケルよ?」
ハッと気付くと目の前にセイラの顔があり
目を細めて眉を八の字にしてタケルを睨んでいる。
このままでは久しぶりに何かとんでもない技を
喰らいそうな予感がしたタケルは強引に話を元に戻す。
たどたどしく言い訳をしながらだが。
「そ、そんなことナイアルヨ。
それよりソックリなのも気になるけど、
とりあえず起こしてみて色々調べれば
わ、分かるんじゃないの?」
それに反応したのはセイラでなくサクラ。
「そうですね、その件も含めてまずは二人を、
いえ、一人づつの方が取引もし易いですし
ヌフから起こしましょう」
(貸しですよタケル。
語尾が変ですしバレバレですからね)
(……りょ)
念話での変な遣り取りもあったが
そういうことになった。
……
「ん? ハッ、ここは??」
サクラがヌフを目覚めさせる際に
少し夢の記憶を浚ったようで、
その後目を覚ましたヌフ。
まだ夢と現実の区別が付いておらず認識するまで
少し間があって、
ハッと我に返り途端にディースを確認するヌフ。
それを見たサクラが、
「大丈夫ですよ、ちゃんと生きています」
声のする方を見て2人増えていることに気付くヌフ。
「フン、問答無用でヤられたかと思ったが。
さっきまでのは夢か? 貴様の幻術スキルか?」
それには答えずサクラが逆に問い返す。
「あなたはディースのことを大切に思っている。
だから夢の中でディースと逃げましたね?」
先程浚った記憶についてである。
「……貴様の能力ならば既に分かっていることを聞くな」
認めるヌフ。
それを聞いたサクラは悲し気な表情で
更に言葉を重ねる。
「でしたら、ひとつ提案があります」
タケルもセイラも黙って耳を傾けているのを確認し、
説明し始めるサクラは、
暫くここから出ることは出来ないが情報提供することで
二人の身の安全を保証すること。
また国を抜ける覚悟があるなら
こちら側に付くのはどうか、といった提案をする。
そして聖光国から必ず追手も来るだろうし
ここなら安全であることを付け加える。
これを聞いたヌフは難しい顔をして迷っているようだ。
しかし裏切ることについて悩んでいるのでは無いようで
「ディースの、ディースの安全は間違いないんだな?」
「当然です」
間を置いて更に尋ねるヌフ。
「……では断ったらどうなる」
目を伏せたサクラが言葉を返そうとしたところを
横からタケルがサクラが言おうとする言葉を攫う。
「ククク、勿論そこのディースくんをだね、
こうやってああやって
色んなところをこねくり回してだな、
最後はとうとうこのサクラの奴隷になってしまうーー
バッチィィーー
ゴッキィィーー
無言でサクラとセイラの両サイドから
頬に掌底と拳を喰らうタケル。
挟み込まれた形だ。
「オオオ、ひ、ヒタイ」
両頬を抑えて蹲るタケル。
放って置いて話を進めるサクラ。
目を見開いて唖然としているヌフ。
「コホン、わたしの言いたい事とは全く違いますので、
誤解の無いように。
それに分かっているでしょう?
そんなことしたくはありませんが……」
言葉を掛けられ我に返ったヌフは
溜息を一つ吐いて答える。
「そこのバカ男の言ったようなことは御免だぞーー
続けるヌフ、
ーーとりあえず暫くここで厄介になるとしよう。
それに、そこの高位精霊に加えてお前、セイラまで
居るのに逃げるのは厳しい。
ディースを目覚めさせてくれるなら
言う通り情報提供に応じよう。
ああ、あと搾り取ってポイするときは
苦しまずに逝けるよう頼む」
そう言ってディースの方を見るヌフ。
タケルは蹲ったまま
「やっぱセイラさんて有名なんだねぇ」
などと考えていたが、
そんなタケルは放っておいて、
サクラとセイラはお互いに頷き合って
尋問を開始するのであった。
サクラが推測は立てていたが、
その根拠とも言うべき情報が手に入ることになり、
これまで謎であった聖光神の目的に
一歩近付くのであった。




