~78 タケル、ありがと!!~
聖光国の暗部3人が去った後の秘密の部屋で
サクラは蹲ったまま情報を整理し
状況を把握しようとする。
当然スキルは継続中である。
(待ってよ、待ちなさいよ~整理するから。
何よりまずはセレちゃんよ。
"姫を拐う"は十中八九セレちゃんよね?
他に王族の女の子は居ないでしょ?
それに誰からの依頼? 拐ってどうするの?
あんなことやセイラさんが考えるような変態なこと
でしょうか?
イヤ、それは、イヤァン!!)
両手で顔を隠し赤面するサクラ。
(って、やってる場合か!!)
独り突っ込みで思考の方向を修正する。
(ホント誰に似たのやら。
あっそういえば私っていつからセイラさんって
呼んでるんでしょう? 初めはセイラ様って
呼んでたのに、ってこれもチガウ!!)
思考の逸れ方が尋常でないことがサクラの焦りを
証明しているのだが、
そうも言ってられないため再度強引に思考を元に戻す。
(フゥ、落ち着け私。
セレちゃんの件は少し時間があります。
彼女に分からないように護衛。
依頼主を突き止める。
そもそも聖光国そのものからの
依頼では無いようですし……
協力者って言ってましたよね?
もう、あの暗部3人ヤっちゃおうかしら♡
イヤイヤ色々マズ過ぎます。
せめて遠征試験の班分けで一緒になれば
良いんだけど……)
セレネースの件は最悪身バレしても
護ることが出来れば良いか、
と考えるのを後回しにして他の情報を整理するサクラ。
(まずヴルカヌスと親衛隊の件は
アンデッドマンと他3人と目星は付いているものの、
ハッキリとは分かっていない、捜査継続中。
暗部3人。
気になっていたディースはスキル「神隠し」
これが聞けたのは大きいですね。
ただこれは自分を隠すのか人を隠すのか両方か?
今は分からないですが気配察知や魔力探知にも
引っ掛からないところを見ると
存在自体を薄めるようなスキル?
かもしれませんね。
あと会話から、
ステータスの伸び代やスキルの取得などを予測できる
眼かスキルを持っている。
これは鑑定の派生スキルかもしくは神様のご加護?
眼の方はまた調べるとして、
まずは「神隠し」の方を警戒ですね。
近付かれても分からないじゃ話にもなりませんから。
でもタケルなら……)
!?
と、サクラが考えていると
ディースがやって来る。
……
「異常なし」
(やっぱり普段は魔力を0にしている感じですね。
なので薄いのは分かりますが、
あのヴルカヌスに呼ばれた時の気配の無さは
それでは説明が付きませんからね。
だからって鑑定や私の開発したスキルで確認して
気付かれたら面倒ですしねぇ)
壁を抜けて廊下の方へ戻っていくディース。
情報整理を再開するサクラ。
(フゥ、行きましたね。
そろそろベッドに潜り込みたいところですが、
もう少し整理しましょう。
そう言えば、あと私のことも話してましたね。
私は神都に連れて行くから拐えない、
セレちゃんは伸び代があっても少々だから構わず拐う。
ということは普通は伸び代が無くなった時点で
神都に連れて行かれるってことですか?
私はまだ伸び代があるから学園に通えと、
最終的には必ず連れて行くと。
何か少しニュアンスが違うような……
う~ん、ディースが聖光神と会うように言ってたのと
別件でしょうか?
計るとか何とか言ってましたし。
……もしかしてディースの眼では計りかねているのかも
しれませんね。
聖光神しか私を計れない、と。
イヤン、わたしスゴイ!!
ハッ!! また逸れるところだわ。
アブナイ危ない、フゥ。
単純に戦力増加のために神都に連れて行くというのも
理解出来ますけど、
何か見落としているような……
これもまだ情報収集が必要ですね。
それでディースはヴァッケンと聖光国の連絡役も
兼ねている、と。
ヌフは少なくともここ学園を担当。
サンクは依頼なんかを受ける窓口でしょうか?
恐らく聖光国内の情報を纏める役で
更に実働部隊でもある。
う~んプレイングマネージャー的な感じですか。
中間管理職ということであれば、
まだまだ暗部も上が控えていそうですね。
だいたいアルピノで三つ子とかどんな確率ですか?
この情報からも何か分かりそうですけど……
何か見えそうなんですけど
「高速演算」と「並列思考」を使って考えると
魔力をゴッソリ持っていかれますからねぇ。
またしっかり回復して
今度隙間時間を見付けてやってみますか。
それに海洋国オーセルですか。
とりあえず明日にでもタケルに連絡しましょう。
ここはある意味安全なんですが、
どこか全く分かりませんからね。
しかしいつも思いますけど、
なんでベッドってあんな気持ち良いんでしょうねぇ?
とりあえず寝っ転がって考えましょう。
あれ、誰か寝っ転がってましたね?
あっセイラさんですか、クスクス。
思い出すと楽しいことがたくさんありますね。
倍以上に大変でしたけど……
さ、戻りましょ)
長々と熟考したサクラ。
セイラのことで少し気分転換になったが
何かと大変な記憶が蘇りそうになったので
そそくさと部屋に戻るのであった。
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「どうしたのサクラちゃん?
難しい顔して?」
座学の講義が終わり休み時間ごとに揉みくちゃにされる
のを見兼ねた担任のマレーネがSランクの威厳で
睨みを効かせることで少しの時間平和を得たサクラ。
一人考え込んでいたところを
セレネースに尋ねられたところだ。
「ん? ゴメンゴメン、なんでもないよ」
首を傾けるセレネースは見た目云々ではなく
滲み出る可愛らしさがあり、
タケルが居たら鼻の下を伸ばしそうだ、
と勝手に思い込みマキシマム・レッドの暴発が
準備段階に入るが、
「そう? なんでも相談してね!!」
という一言で我に返り、
そう言えば、と思い出したことを聞くことにした。
「セレちゃんて王族だし、
学園内で護衛とかって付けないの?」
セレネースはそれに対して、
学園内は外部からの侵入者に対してのセキュリティも
万全らしく、
加えて先生方が大変強く有事の際は迎撃にも避難にも
対応出来るので
これまでの王族や、あのポッチャリ君についても
護衛を付けていないそうだ。
「そうなんだ。へぇ~」
(まぁ、マレーネ先生も強いですし
暗部の3人は聖光国側ですし心配ないのかも。
ただ逆に言えば味方だと思っている人達には
やりたい放題ですね。
それはこの国自体がそうなのかも……)
不安に思いながらも講義を受けて昼休みを迎える。
昨日と同じくセレネースとクラスのサクラファン達とで
食事を摂っている。
サクラは今日の定食、
聖光国にしかいないらしいクリムゾントラウトの煮付け
を食べてニコニコしている。
そこへやって来たのは、
「やあ、お姫様と愚民の方々。
遠征試験の班分けも決まった訳だが、
不安でしようがないんじゃないかい?」
そう、お昼前の講義の後、
来週に迫った遠征試験の班分けが発表され、
サクラとセレネースは別班となったのであった。
公爵家であるため、また取り巻きも高位貴族であるため
誰も言い返すどころか何も答えられない。
「ん? 不安な顔をしてどうしたんだい?
僕の班はここにいる
侯爵家と伯爵家のトラン君とバニラ君だからね。
討伐数も新記録を狙っているよ。
良かったら付いて来てもいいよ?
おこぼれぐらいは分けてあげるよ」
(どこにでもいますねぇ、こういうデブって。
家柄と討伐数に何か相関関係が?
というか名前忘れちゃった♡)
ちなみに名前はギュスタフであるが、
そのギュスタフが話しているのをボンヤリと
聞いていると
セレネースが堪りかねて言い返す。
「あなたねぇ!!
みんな気分良く食事を摂ってるのよ?
デブの戯言を聞きに来てる訳じゃないのよ!!
さっさと自分の食事摂りなさいよ!!
あっ、ダイエット中か。これは失礼」
その答えに周囲は声を上げて笑わないものの
ギュスタフの方を見てクスクスと笑いを堪えている。
対してギュスタフは蟀谷をピクピクとさせ
お怒りのようだ。
「……そうやってハシャいでいられるのも遠征試験までだ。
僕に楯突いたことを後悔しても許さんからな」
そう言って踵を返し去ろうとしたところで、
「そうそう、愚民ではあるがそこのサクラは強いねぇ。
良かったら班を組み直して僕と一緒になるよう
マレーネに言ってあげるがどうだい?」
(変なところでこっちにきましたね。
聖光神と会うまでは
大人しくしないといけませんから、
マキシマム・レッドで塵も残さず
消滅させることも出来ませんしねぇ、ハァ)
心の中で物騒なことを思いつつ溜息を吐きながら
面倒臭いなぁ、と適当な返答をするサクラ。
「お声掛け有難うございます。
ただわたくし魔獣相手ですと
パニックになってしまいますの。
対人でしたら足の先から頭まで1㎜刻みにするくらいの
自信はあるのですが……
それでもよろしいですか?」
ニコニコした表情と答えの内容にギャップが有り過ぎて
何か得体のしれないモノを見たような心持ちになった
ギュスタフはゴクリと生唾を飲み
額から冷たい汗を滴らせながら、
「そ、そうか。
パニックになるのであれば、ちょ、ちょっと難しいか。
ではご機嫌よう」
と言ってそそくさとその場を後にする。
見ていた周囲の者から小さく歓声が上がり、
楽しい雰囲気に戻ったことに安堵する皆であったが、
サクラは先程ギュスタフがセレネースに言った言葉を
スルーするほど鈍チンではなかった。
午後は聖光教教義概論の講義から始まる。
この講義はマレーネではなく
聖光教の司祭が担当している。
宗教学の歴史のようなものでサクラにとっては
本を一度見れば頭に入る講義であるため
この講義中にと思いタケルに連絡を取るのであった。
(タケル? いま大丈夫ですか?)
変わらず直ぐに返事が来る。
(ん? サクラか? 大丈夫だぞ)
念話も大丈夫とは分かっていても
繋がってホッとするサクラ。
ついこの間肉体を得たばかりで
それまではずっとタケルと一緒に居たのだ。
一人が慣れているようで慣れていない。
無意識下に不安は蓄積されている。
そんなサクラはタケルの声を聞いて安心しつつ
昨夜の出来事と食堂での出来事から推測を話し始める。
聞いたタケルは、
(フ~ン、なんか盛沢山だな。
しかしそのセレちゃんだっけ?
誘拐の依頼はギュス太郎としてだな。
動機が分からんぞ?)
また可笑しなあだ名を、と思いつつ返答するサクラ。
(ええ、それは分かってますけど。
「ハシャいでいられるのも遠征試験までだ」
の意味が討伐数で圧倒するという意味では無いように
思えて……)
(それはサクラが暗部の話を先に聞いてるから
そう思うだけかもしれないじゃん)
珍しく的を射た意見で少々腹の立つサクラである。
(フン、なんでもかんでも勘で処理するタケルに
言われなくても分かってますよ。
ベェ~だ)
見えんけどな、とタケル。
更に珍しく冴えているタケルは言葉を継ぐ。
(ベェ~だ、で思い出したけど
その暗部が言ってたステータスやらスキルが頭打ち?
伸び代か、のことも会話に出てきてるなら誘拐の件とも
全く無関係じゃないんじゃね?)
……
(お~い、聞いてるか?
何にしても聖光神と会うまで
大人しくしないとならんのに、
お姫様護衛しながら暗部何名かを秘密裏に処理って
手が足りんぞ。
やっぱ真面目に大会準優勝くらいしとけば
良かったかなぁ?
そうするとベックスさんたちのことがなぁ、
う~むムズイな)
いつも通り冴えないタケルに戻ったところで
返事をしなかったサクラから返事が返って来る。
(“ベェ~だ”で思い出したという割に
なぁんにも関係の無い内容じゃないですか。
相変わらず意味の分からないところから思
考を持ってくるんですからーー
しかしタケルの意味不明な繋がりの言葉から
ヒントを得たサクラは明るい声で
ーーでもお蔭で見えてきましたわ!!
タケル、ありがと!!
それじゃまた!!)
そう言って念話を切るサクラ。
今日はこれからガトーの店で食事をしながらセイラと
打ち合わせ予定のタケル。
ちょうどサクラと情報共有できたため
良いタイミングだな、と思いつつ通りを歩いて行く。
歩きながら頭をガシガシと掻き、
何か考え事をしながら、
それもセイラに相談しようと思い
再度頭をガシガシと掻きつつ
ガトーの店へ向かうのであった。
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