~77 学園生活初日2~
実戦訓練中に念話とムチャをしているのだが、
無茶では無いらしいサクラ。
「では、始めますよ」
「はい、お願いします」
スッ
5m程の距離を一歩で潰してくるマレーネ。
手には細身の片手剣、もちろん刃挽きはしているがーー
シュシシシシッッ――
(突きの5連撃、速いですね。
刃挽きしてるとはいえ当たると
タダで済みそうにありませんね。
ですけど様子見なのがバレバレですよ)
持っているハルバートで全ての突きに刃を沿わせ
軌道をずらしながらカウンターを狙うサクラ。
「ック!!」
寸前で避けながらサクラの左側へ回り込むマレーネ。
そこから左足を狙う、
と見せかけ右手首に狙いを切り替える。
左足を引いたサクラは正面にマレーネを捕らえ、
迫って来るマレーネの片手剣の刃に
そっと柄の部分を合わせる。
スルリ
右、左足と軸を移し回転しながらマレーネの右側より
長柄物のハルバートの遠心力を利用し
柄から刃へとスピードを乗せマレーネの右手首を狙う。
ブッンンッ!!
ガリガリガリッ!!
訓練用闘技場の石畳が削れ音を放つ。
前方へ身体を投げ出し回転、
直ぐに立ち上がり片手剣を構える。
チラリと石畳に目を遣り冷や汗が頬を伝うマレーネ。
「とんでもないですね、速さも技術も力も。
そのお年でどんな修行をすればそうなるんです?」
(お師匠様と、って言えませんからねぇ)
「光栄ですが、
先生が様子見だから何とか付いていけるんですよ」
社交辞令と分かったのかマレーネは少し笑ってから、
「フフ、今年の優勝者に失礼でしたか。
少し本気を出しますよ」
言うなり消える。
周りで見ている学生たちの目には
少なくとも何も映っていない。
が、当然サクラには見えている。
(教科書通り左からと見せかけて武器の有る右手に。
それと一気にスピードが上がりましたね。
タケルとの念話も順調ですし模擬戦も楽しいですし。
技や体捌き、色々データも取れますし。
とりあえず少し打ち合ってみますか)
ギィンギッギッギギィンギギギギギーー
ギギギギギィンギィンギギギィン ギッ!!
打ち合うこと20合、現在鍔迫り合いの状態。
先程までは一部の学生を除いて音だけが
聞こえている状況であったが、
流石Sクラスである。
一部の学生は全て見えている訳ではないが
徐々に慣れて付いてきている者がいる。
しかしこれで攻撃魔法が絡んだら一体どうなるのか?
と思って呆れる者が出始めているのも確かだ。
(近接での打ち合いでは分があると思ったのですが、
これで攻撃魔法が絡むとどうなるのやら……
それによくもまぁ、
あの長柄物を器用に振り回すものですね。
でもこれはどうかしら?)
一部の学生と同じ様に思うマレーネだが
思考を切り替え
スッと力を抜き片手剣を手放しサクラの腹部へと
手を沿える。
か、沿えないかの刹那の合間に
サクラはマレーネの右手首を左手で捕らえクルリと回転
背負い投げである。
スッ
空を見上げているマレーネ。
サクラは背中から叩き付けるのではなく
羽毛が石畳の上に触れるように寝かせる。
「フフ、浸透勁ですか?
珍しい技を使うのですね?」
もしかして異世界人というか地球人かも?
と思うサクラであったがここでは言わない。
一瞬何が起こったのか分からないマレーネであったが、
話し掛けられハッと我に返り答える。
「フゥ、近接が苦手かと思ったのですが。
近接もとんでもないですね。
初見で外されたのは初めてですよ」
マレーネに手を差し伸べ立たせながら答えるサクラ。
「流石ですね、当たりです。
わたし近接苦手なんです。
素手の近接は得意なんですけどぉ……
まだまだ武器に慣れなくってイヤになっちゃう♡」
カワイ子ぶっても内容が合っていないため
その言葉に一瞬呆然となるマレーネだが、
とにもかくにも終了である。
二人が握手を交わしたところで、
途端に周囲から沸き起こる歓声に顔を合わせ
照れ笑いする二人であった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
午後の実戦訓練の後、
興奮冷めやらぬセレネース含めた学生達に
揉みくちゃにされたサクラであった。
当然、公爵家のポッチャリ君と
取り巻きはその輪に入ることはなかったのだが。
後は寮の部屋に帰るなり技のことや
ステータスの事などをセレネースから
たくさん聞かれたが「ゴメン、マナー違反よね」と
言われたものの技については答えられるので
技のコツなどを教えたサクラ。
また講義後の連絡事項でマレーネが言っていた
「遠征試験」なるものについてセレネースから色々と
教えてもらったサクラであった。
そして深夜。
(なるほどね、だから私との実戦訓練を見せたのですね。
フフ、計算通りということですかね)
サクラの心の中の独り言は、
マレーネからそう言われた訳ではないが、
セレネースから聞いた話の「遠征試験」での
学生統括リーダーをサクラにするために
実力を分かってもらう手っ取り早い方法として
実戦訓練を見せたと推測しているのである。
(まぁタケルみたいに突拍子もないことをする人が
いる訳ないですし
安全かつ迅速に目的を達成させましょう!!)
「遠征試験」が楽しみなサクラであった。
スゥ
スゥ
スゥ
壁を抜けて入って来る3人。
今晩は一人増えているようだ。
(!? 3人共同じ……)
部屋に入ってきた3人は全員が
真っ白な髪に透き通るような肌を持っていた。
顔もそっくりである。
(アルピノで三つ子?
……ちょっと後回しにしましょう)
気持ちを切り替えるサクラ。
(まずはビンゴでしたね。
ヴァッケンがあんなことになってるんですもの。
王と親衛隊を倒した者の情報とその後の進捗については
日を置かずに情報共有すると思っていましたよ)
ここは例の学園本棟の廊下、突き当りの壁の中。
まぁ壁の中と言ってもどこに跳んで来ているのかは
今のところ分からない。
会話を始める3人。
「ディース、今回は良くやった。
お前の機転のお蔭で貴重な人材を失わずに済んだ」
「ハッ、サンクお姉さま」
「ヌフもご苦労」
「いえ」
前置きが終わり肝心の情報についての会話が始まる。
「まずはヴァッケンだ。
とりあえず国内は落ち着きそうだ。
流石は猊下と殿下だ、愚民共も安心したようだ。
それから例のヴルカヌスと親衛隊を
倒した奴等のことだがなーー
ナイス!! と心の中で歓喜するサクラ。
ーー城に居た文官や兵士共に聞き取りを行った。
その中にヴルカヌスに賊の風体を報告した奴が居たのと
国境からの報告とを合わせて考えると、
どうも大会に出ていた「アンデッドマン」とやらが
怪しいのだが……」
そこで口を挟むディース。
「お姉さま。
私はアンデッドマンの試合を一度見ています。
とてもヴルカヌスを倒せるとは思えません」
頷くサンク。
「それは私も聞いて分かっているのだが
ヴルカヌスと戦っていたのを途中からだが
見ていた奴からの情報があってな」
またも頭の中で
ブラジルの一番大きな祭りが始まるサクラ。
一拍置いて考えながら言葉を口にするサンク。
「オーセルからの情報でな。
海岸近くで大きな力が動いたからと
監視の魚どもを動かしたそうだ」
海洋国オーセルが噛んでいたか、と納得。
続けて続けてと心の中で急かすサクラ。
「それで、どんな奴なんです?」
答えるサンク。
「黒髪の男らしいのだが
武器も特徴的な防具も何も付けてない上に
背中に誰かを背負って、
おまけにヴルカヌスの獄炎に右手を焼かれているように
見えたそうだ。
それとヴルカヌスを倒した後は
3人か3体か分からんが、
そいつ等と転移したということだ」
……
沈黙の中、口火を切ったのはディース。
「……黒髪、素手については
アンデッドマンと一致します。
その3人……3体は精霊と推測します。
あの時の感覚ではそういった感じがしました」
しかしなぁ、と考え込む3人。
「しかしそいつ等が精霊として、3体。
しかも親衛隊を捕縛するぐらいだ。
恐らくその3体が精霊とすれば
かなりの高位精霊になるぞ」
チガウ、精霊神だし。
と心の中で突っ込むサクラ。
サンクが2人に問い掛ける。
「高位精霊を3体使役して武器も防具もなく
背中に誰かを背負ったまま獄炎に焼かれて、
その上でヴルカヌスを倒せる奴なのか?
アンデッドマンは?」
答えの出ない3人。
答えの出ているサクラ。
自慢したくて仕方ないが
何もかもブチ壊しなので当然やらない。
しばし沈黙の3人だが、
いつまでも黙ってはいられないので
次の話題に移るようだ。
「まぁ更に調査もするし、この話は一旦保留だ。
次の話だ」
次の話はここ学園の話で
次の「遠征試験」でのことであった。
「依頼が入ってな。
次の遠征試験で姫を拐って欲しいそうだ」
!?
疑問を呈するヌフ。
「わたしの管轄であまりやって欲しくないのですが。
それに奴にはまだ伸び代がありますが?」
答えるサンク。
「ああ、分かっているが
今は協力者を失う訳にもいかんしな。
少々の伸び代であれば、
まぁ構わんし他にも代わりは居る。
魔獣討伐に加え一泊二日の旅。
どうとでもなるが面倒ではあるなーー
何か思い出したサンクは話を続ける。
ーーただサクラも一緒にと言われたが、
流石にそれは断ったぞ。
あれは神都に連れて行かねばならんのでな。
ディースの目はいつも確かだからな。
それに貴様の持つ「神隠し」のスキルも非常に有能だ。
これからも聖光神様のために役に立つのだぞ」
話は終わったとばかりに席を立つサンク。
続いて席を立つ二人。
見送ったサクラは情報と状況の整理のため、
その場で暫く熟考するのであった。
本日もブックマークを付けて下さった方、
有難うございますm(_ _)m
またいつも読んで頂き本当に有難うございますm(_ _)m




