~73 学校に行きますよ!!~
ディースに連れられヴァッケン王国を出た
サクラとアレクサンドルは、
王城ヴァスト内の迎賓館の隠し部屋の一室から
転移魔方陣で聖光国内まで跳んでいた。
聖光国アビスクリムゾン
学術都市フィロン 某所 転移魔方陣設置棟
魔方陣の滲んだような光が収まり、
3人はどこかの部屋内に到着したようだ。
「着いた」
(聖光国なのは話から分かってましたが、
一体聖光国のどこでしょう?)
早速移動を開始するディース。
「説明は後でするから二人共付いて来い」
ディースの話を他所に考えを巡らすサクラ。
(そういえばタケルはどこから念話を?
転移後でこの人も近いしで
念のため慌てて切りましたけど。
ヴァッケンからだと思ったんですが
思念に何か混じってたような……
いずれにしても結構な距離になっているはずですが。
まぁ私とタケルの念話ですしだいたい届くんですけど。
二人だけのホットラインですね……
二人だけの……イヤン♡ そんな二人だけって――
桜色のサクラの思考をぶった切るディース。
――おいお前、何を赤面モジモジしている。
変態か?」
変態に反応するサクラ。
「それは全力でチガイマス!!」
ベレヌスやセイラと一緒にされては困るのだろう。
――そりゃそうだ(タケル談)――
そんな遣り取りを傍らのアレクサンドルは
「どうでも良いから早く案内しろよ!!」
イライラと冷たい反応である。
(カルシウム不足かしら?)
どこまでも態度の悪いアレクサンドルであるが、
その通りなので案内を再開し始めたディース。
魔方陣の有った部屋は離れのようで
10歩ほど外を歩きまた建物に入って廊下を歩く。
(さっきの離れ、凄い厳重な警備でしたね。
ヴァッケンから直通ですし当然ですか。
裏庭らしき所から来たこの建物、
窓からの景色と部屋の並び……学校ですか?)
情報収集に余念がないサクラ。
そうこうしている内に着いたところは
扉の横に「応接室」とプレートがある。
(確か「聖光神様に直にお会い」とか何とか
言ってたのは何だったのかしら?
ここに居るとか? そんな訳ないわよねぇ)
ガチャリ
応接室に入るディース。
入るよう促されサクラもアレクサンドル続く。
かなり広い部屋にはソファとテーブル、
奥には食器棚等がある。
少々絵や花が飾ってあるものの全体的には質素な印象。
そのソファへ
真っ先に腰を下ろすのはアレクサンドル。
「で、こっからどうすんだ?
俺は力をくれるって言うから来てやったんだぜ」
ディースに促されソファに座るサクラ。
「それは間違いない」
「じゃあ早くしろよ」
「順序がある」
「話が違うじゃねぇかよ!!」
黙って会話に耳を傾けるサクラ。
「違わない。
すぐに力を持とうにもお前は弱すぎる。
まずは簡単に説明するからよく聞けーー
ディースの説明によると、
ここは聖光国学術都市フィロンの
「聖光教徒魔法研究学園」であり、
聖光国全土から集められた素質の有る者や
入学試験を突破した者を鍛え、
加えて聖光教の教義を学ぶための機関であるそうだ。
また3年間の学習期間を経て各々適正のある
部署へ配属されるらしい。
更に高い能力を発揮した有望な者は
聖光神から特別に力を与えられるそうで
一人一人がヴルカヌスかそれ以上の力を持っている
今の聖光神直属の5つの部隊の団長が
それであるとのこと。
ーーということだ。
今のお前は聖光神様から力を頂くに値しない。
頂いても大きすぎる力に振り回されて
碌なことにならないのは目に見えている。
素質はあるから勧誘したが、嫌なら帰れ」
珍しく長文を喋ったディースを見ながら
サクラは分析する。
(あらやっぱり学校ですね。
兵士育成と洗脳、
力を与えられるというのが分かりませんね)
「チッ」
舌打ちをして黙ってしまったアレクサンドル。
それを見て一旦アレクサンドルは置いておくことにした
ディースは続けてサクラに説明を始める。
「全員ではないが、
これまでもヴァッケンの大会優勝者は
この学園から聖光国の兵士として
いずれかの部署に配属されてきた。
俗な話だが給与も名誉も充分に得られる
魅力的な条件だからな、希望者は多い。
それに優勝者とそこのアレクサンドルのように
スカウトされてきた者は学費も免除される」
サクラが頷いているのを見て
一拍置いて続けるディース。
「大会を見ていたがお前の力は正直よく分からん。
ただ決勝を見る限り魔法適正は高そうだ、
あんな魔法は見たことも無いしな。
招待したいと言ったのも嘘ではない。
是非聖光国に欲しい人材であることは確か、
故に聖光神様にお前を計ってもらいたいのだ」
それを聞いていたアレクサンドルは
またも盛大に舌打ちをしているが、
放って置いてサクラがディースに尋ねる。
「それは大変魅力的なお話で心惹かれますわ。
偉大なる聖光神様にも早い内にお会い出来そうですし。
ちなみにお断りされた方もいらっしゃるのですか?」
不自然にならない程度に興味を示し
聖光神といつ頃会えるのかを確認するサクラ。
「お前とは機会を設けて
会ってもらうよう上申するつもりだ。
それに聖光神様はここの学園長でもある。
滅多に顔を出さんが
成績優秀者は直接お話が出来る機会もある。
どっちの機会が早いかだが
いずれにしろ直ぐには無理だ、御忙しいからな。
それとサクラ、
お前はヴァッケンがあんなことになったので
急遽連れて来ただけだ。
他と一緒で断るなら国に帰すだけだ」
(ヘェ、もっと強引に取り込んだりするのかと思えば
そうでもないんですねぇ。
ただセイラさんが
潜り込んでもほぼ全滅って言ってましたね……
気を付けないといけませんが、
聖光神にも会えるなら学園に通いながら
調査も出来る、と。
受けるのが良いですか。
連絡はタケルと私だけの念話がありますし、
二人だけの、二人だけ……)
サクラの表情が先程と同じく怪しくなってきたのを
見逃さず、話し掛けることで現実に戻すディース。
「考えるのは構わんが変態に変体するのはヤメテおけ。
どうする帰るか?」
変態への反応は誰よりも早いサクラは
間髪入れずに答える。
「変態ではありません!!
それにお受け致しますわ、宜しくお願い致します!!」
またも横から盛大な舌打ちが聞こえるが、
構わずディースは今後のことについて
話し始めるのであった。
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「もうそろそろ良いかな?」
「もうちょっと待つのじゃ。せっかちな奴じゃな」
「さっきからずっとそればっかりじゃん。
もうそろそろ良いだろ」
「フン、しようがあるまい。若者は我慢が効かんで困る。
さ、いつでもヨイゾ」
ここはギルド3階のセイラの自室。
寝室ではなくベックス達と相談に使った場所だ。
タケルとセイラはバロン達を見送った後、
まだ目が覚めないエレーナを
ギルドのセイラの寝室で休ませている。
セイラの一声で集まった回復魔法師に
体力や傷なども診て回復してもらい
そのまま眠っている状況だ。
マニスのことは
目が覚めてからゆっくりと説明する予定である。
またベックスやセンター、マニスは
フィーネを立ってから連絡はないが、
魔国に到着したら連絡を寄越すように
手配しているらしい。
追手を気にするところだが、
追手も何もヴァッケンは現在誰かのお蔭で大混乱のため
心配は要らないだろう。
他にも色々と手を尽くしているセイラ。
やれば出来る女である、やる気のある時だけだが……
そして現在、床に寝っ転がるセイラ。
……
「さっきから気になってたけど、
変な言い回しから
そこで寝転がるとホントに変なことしてるみたいに
なるからヤメテくれる?
ちょっと遠距離になるし
多分大丈夫だと思うけど集中したいし」
人生で真面目にしている時間が
圧倒的に少ないセイラもその言葉には理解を示す。
「ムッ、流石に冗談言ってる場合ではないの。
ちなみにそれだけの遠距離でも念話を行えるのは
あれじゃの、ワシとマザーみたいなもんじゃろうの」
セイラによると、
以前フィーネのギルド受付で
マザーと念話を交わしたそうだが
魔国とフィーネでは結構な距離があり、
また障壁もあるため普通は連絡用魔道具含め
通信関係は殆ど不可能だそうだ。
但し、お互いに魂同士での契約を行っている者は
結びつきが強くなり長距離念話も可能になるとのこと。
タケルとサクラの場合は
そういった契約はしていないものの
元々が一つの魂として活動していたため
既に結び付きは強いのだろうと推測していた。
それを聞いたタケルは複雑微妙な顔で答える。
「結び付きなぁ……
まぁ良いんだけど
思考が駄々洩れになりそうでコワイね」
セイラは「変態なことばかり考えるからじゃ」と言って
大笑いしているが、
変態なことを考えて実行した挙げ句に
タケルに擦り付けにまでくるセイラに言われて、
(この人ホントに反省とか猛省とかって
辞書に載ってないんだろうなぁ……)
可哀そうなモノを見る目で
大笑いするセイラを眺めていたが、
一旦放って置きサクラに連絡を取る。
(お~い、サクラ。 今どうだ、話せるか?)
繋がったようで直ぐに返事がある。
(はい、タケルですね。
大丈夫ですよ。
そちらはヴァッケンですか? フィーネ?)
元気なようでホッと胸を撫で下ろすタケル。
(フィーネでセイラさんと一緒だよ。
後ろで床に寝っ転がってるけど)
(クスクス、相変わらずですね。
あまり長くなっても怪しまれるので
簡単に現状を説明しますねーー
そう言って聖光国に連れてこられた経緯を
説明するサクラ。
ーーそっか、ゴメンゴメン。
ちょっとマニスちゃんのことで頭に来てたからな。
ああ、マニスちゃんのことはまた話すよ。
まぁ無事で良かったよ。
で、聖光国のどこに潜ってんだ?)
そうそう肝心なことを、
ポンと掌を叩いて話し始めるサクラ。
見えてないが見えているように「古いな」と推測で
突っ込んでおくタケル、心の中でだが。
(そうそう、わたし学校に通うことになりましたよ!!
制服姿見たいでしょ?
制服大好きでしょ、タケル??)
誤解を招く発言のサクラではあるが、
その前の学校に意識が行き慌てて問い掛けるタケル。
(なんだそれ!? 学校!?)
(詳しくはまた連絡しますわ。
ちょっと長くなってきましたので)
(あ、ああ、そうだな)
(便秘かと思われてもなんですから。ではまた)
……
最後の一言で暫く固まっていたタケルであったが、
とりあえずサクラが学校に行くことについて、
何か知らないかセイラに聞いてみるのだった。




